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広がる活動領域~研究だけにとどまらない幅広い活動

cam_kasetsiri_lecture.jpgアユタヤ史研究において、著しい成果を挙げてきたチャーンウィットさんですが、 その活動領域は研究だけにとどまらず、様々な分野へと広がっています。

たとえば、自ら歴史書の執筆を行う一方、欧米学者の著作をタイ語に訳して出版 する事業も進めています。

そのおかげで、東南アジア史分野における名著であるD.G.E.Hallの『A History of South-East Asia』などが、タイ語で読めるようになりました。

これまで翻訳した、東南アジア諸国について書かれた海外書籍は30冊以上にのぼり、周辺諸国への理解促進に大きな一助となっています。タイの歴史研究者達は、チャーンウ ィットさんの業績から実に多大な恩恵を今もなお、受けているのです。

また、日本人学者のタイ研究をタイ語に翻訳しての出版、シンポジウムの開催な ど、日本との研究交流にも尽力しています。

歴史研究だけに止まらないチャーンウィットさんは、国内はもちろん国際的なタ イ研究者のネットワーク形成を構築。教授陣の相互訪問や講義システムを確立す るなど、互いの研究レベルを高めるとともに、学問の成果を教育の場で普及させ ることにも多くのエネルギーを注いでいます。

タイ初、東南アジア学講座の設立

そのなかでも特筆すべきは、タマサート大学教養学部に、タイで初めての東南アジア学の講座を設立したことです。

タイの大学の多くは、歴史学科を持ちません。それは、大半の教育関係者が歴史にあまり関心を持っていないためです。特に若者は、歴史を学ぶメリットをあまり感じていないようです。退屈で、仕事に直結していないと考えているのでしょう。(チャーンウィットさん談)

thammasat.jpgタイとカンボジア、タイとラオスなどとの国境紛争が絶えないのも、また過去の歴史の傷を未だに癒せないでいるのも、すべては歴史認識不足からくると考えているチャーンウィットさんは、東南アジア史に関する知識を、大学で普及させる重要性を痛感。

教育者としての立場から、研究成果を大学教育に活かすことに率先して取り組みました。手始めに、大学に歴史学と観光という科目を開設。タイや近隣諸国の名所旧跡を巡って、学生たちに歴史に親しんでもらおうとしました。

そして、2000年に念願叶って、タイにおける最初の学部生向けプログラムである東南アジア学講座をタマサート大学に設立。若者の慢性的な“歴史認識不足”を打破すべく力を注いでいます。

テキストブックス・プロジェクト

タイ語で書かれた自然科学、人文科学の教科書不足を問題視したプワイ・ウンパコーン博士らによって、1966年に、あるプロジェクトが立ち上がります。

ロックフェラー財団らの支援を受けたそのプロジェクトは、哲学、経済学、人類学など幅広い分野における、タイの大学生用教科書を執筆、翻訳、印刷するものでした。

タイの教育界や学界に優れた専門書や資料を生み出すための、その活動は、1976年に人文社会科学教科書振興財団へと発展。1978年より、財団の事務局長を務めているチャーンウィットさんは、精力的に各種セミナーを開催。大学での研究で得た知識をタイ社会、および世界へと広く普及させる事業を推し進めていきます。

その一例が、日本のトヨタ財団との協力関係の構築です。日本と東南アジアに関する書籍の翻訳、出版を促進するのが目的である、この協力関係は、タイ及び近隣諸国に関する情報を『タイの隣邦東南アジア・シリーズ』22冊としてまとめあげ、また『アユタヤ / Discovering Ayutthaya』のタイ語、日本語、英語出版を成し遂げるに至りました。

現在は、タイのトヨタ財団、タイ研究財団のような他の財団、タマサート大学プレス、そして自国の民間出版社などの諸機関との協力関係を構築。大学生向けの教科書だけでなく、高校生用の社会科教科書の執筆を手掛けるなど、より広範囲な活動を展開しています。

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D.G.E.Hall
ダニエル・ジョージ・エドワード・ホール。イギリスの歴史学者。ビルマ史について多くの考察を持ち、その後の東南アジア史研究に多大な影響を及ぼす。代表著書は『A History of South-East Asia』。
http://en.wikipedia.org/wiki/D.G.E._Hall
人文社会科学教科書振興財団
タイ教育界や学界に、専門書や資料を送り出す目的で1976年に発足。1978年よりチャーンウィットさんが財団事務局長を務める。
http://textbooksproject.8m.com/