ページの先頭へ

福岡アジア文化賞受賞者をもっと知るための特集サイト「FOCUS on」

受賞者をもっと知るための特集サイト「FOCUS on」

cam_murtiyah_22.jpg

反発の王女~反発と葛藤、それでも変わらぬ王宮への愛情

そんな古都スロカルトで、スロカルト王家の娘として生まれたムルティアさん。王女として、蝶よ花よと優雅に育てられたかと思いきや、意外にもそうではないようです。

特に、父であるパク・ブウォノ王12世は子どもの教育に関してとても厳しい人だったといいます。

伝統織物バティックの織り方や、ジャワ古典詩、古典舞踊などの宮廷に関連した様々なスキルの修得が課された幼少時代。300年以上続く伝統とともに行われる厳しい王宮の教育に、ムルティアさんも少なからず窮屈を覚えたようです。

特に、幼稚園のころから学び始めたジャワ舞踊は、強靱かつ柔軟な身体を備えていることに加え、日々の練習に耐えられる強い忍耐力も求められます。10歳から、宮廷舞踊を週2回のペースで学び始めたムルティアさんは、こうした幼い頃からの熱心な練習により、のちに宮廷舞踊家の一人として大きな信頼を得ることになります。

cam_murtiyah_23.jpg

そんな彼女も、子どもの頃は、踊りや歌よりも、男性が学ぶ武道のレッスンが好きだったといいます。また、王家の者が行く学校ではなく、公立学校に行くことを選んだりと、かなり枠からはみ出した王女だったようです。反抗的な態度から「反発の王女(Rebel Princess)」とあだ名をつけられたこともありました。

王宮外で、様々なバックボーンを持った人々と、広い交友関係を築くムルティアさんは、社会的活動にも興味を示し、中学や高校時代には生徒会などにも入っていたといいます。スロカルトにある、スブラス・マレット大学在学中には、学生評議員として積極的に活動しました。

そんな背景をみると、これまで王宮では女性が政治に関わることがタブーであったにも関わらず、現在インドネシア国民協議会議員として活動している彼女の姿は、そんなに驚くことではないのかもしれません。

宮廷舞踊の普及と保存

伝統に“反発”しがちなムルティアさんでしたが、王宮に対しての深い愛情は幼い頃から変わりません。今も王宮とその伝統を守るべく、断固とした決意を持って奮闘しています。

そのひとつが宮廷舞踊の普及と保存に関する活動です。

中部ジャワ宮廷文化の存続のため、ジャワ宮廷にかつて秘曲として伝承されていたガムラン音楽を録音してCD化したり、新しい試みとして、インドネシアを代表する前衛振付家であり舞踊家でもある、サルドノ・クスモ氏との共演にも挑戦しました。

cam_murtiyah_25.jpg中部ジャワ/ソロ、ススフナン王宮のガムランをAmazonにて購入

また、同時にインドネシア国民協議会議員として、伝統文化の保存をはじめとする文化行政にも力を注ぐムルティアさんは、スロカルト王家教育文化財団の代表も務め、宮廷舞踊の保存と発展に関する総括管理責任者として、後進への育成にも力を入れています。

workshop.jpg王宮で行われている宮廷舞踊やガムラン音楽の講座開設も、そんな後進育成のひとつ。プロを目指す人が受講する本格的なものから、趣味程度のものまで、幅広いニーズに対応するための講座が数多く開催されており、ムルティアさん自ら直接、指導・監督にあたることもあるといいます。

そのなかで、特に嬉しいのは、若い世代の受講者の増加だとか。

学生の中には、王宮文化の基本を学びたがっている人もいるようで、例えば、スロカルト王宮の儀式を取り仕切ることのできる“pambiworo”になるために勉強する若者が、毎年増えているそうです。

王宮への愛情と文化保存への使命感

また、建物としての王宮殿の保存活動にも同じく力を入れています。

entrence_kori_kamandungan.jpg

スロカルト王宮は、現在、多くの建物で老朽化がすすんでいますが、これらを修復・維持するために必要な、莫大な資金を用意する金銭的余裕が王家にはありません。

建物だけでなく、そこに眠る多くの先祖伝来の財産(銅像や石像、儀式用の装飾品、王室衣装、ガムラン楽器、刀などの武器など)少なくとも500点以上もの貴重な王室ゆかりの品も守り伝えていかなければならない責務も抱えています。

忙しいスケジュールの合間をぬって行われる中央政府への働きかけは、老朽化するスロカルト王宮の修復および先祖伝来の秘宝を保存するという目的だけでなく、それら貴重な文化財を後世に伝え、文化の中心としての役割を、もう一度復活させようという想いからなのかもしれません。

王家の一員として、この宮殿の存続に対して大きな責任があると言うムルティアさん。

文化の中心としての役割を果たしている宮殿がなくなったら、若い世代の人々はこのような貴重な財産にふれる機会がなくなってしまいます。それは同時に、ジャワ文化の中核を失うということに他なりません、と彼女は訴えます。

ジャワ文化の伝統の源として、この遺産をどのように守るのか・・・スロカルト王宮を、再び価値ある文化遺産として復興するべくムルティアさんの努力は続きます。

ジャカルタ・ポスト/2011年ムルティアさんへのインタビュー記事より
http://www.thejakartapost.com/news/2011/12/08/gusti-moeng-the-worries-a-rebel-princess.html
Karaton Surakarta
スラカルタ王宮(http://www.kratonsurakarta.com/about/)
Joglosemar
王宮で行われている講座案内(http://www.joglosemar.co.id/slo_info2.html)