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福岡アジア文化賞受賞者をもっと知るための特集サイト「FOCUS on」

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民族への誇り~反西洋的とも称される作品の真意とは・・・

その内容から、しばしば反西洋的、反アメリカ的とも称されるタヒミックさんの映画。第三世界の矛盾を常に問題提起し続けてきたことで、映画評論家からは『第三世界の英雄』と讃えられることもあります。

cam_tahimik_23.jpgしかしながら、本人はどこ吹く風。「私の映画を反西洋的だと捉える人もいるけれど、そうではありません。土着的なものを追求しているのであって、反西洋を謳っているわけではないのです」と。

押しつけられた西洋文化に対する反発は表現しつつも、そこには単純な西洋批判にとどまらず、西洋化し過ぎている自分たち自身への戒めもある、とタヒミックさんは言います。

と同時に、逆説的に垣間見えてくるフィリピンの土着文化への強い愛情・・・。

外国文化を受容することは、いい面もたくさんあります。しかしながら、なぜ元々ある自分たち自身の文化が下位に置かれなければならないのか?なぜいつも土着の文化がさげすまれるのか?なぜ土着の民族が虐げられるのか?という若い頃から抱き続けた疑問に正直に取り組んだ結果が、一見すると反西洋的ともとれる映画となって結実したのではないでしょうか。

西洋化したものから逃れることは、今の世の中もはや不可能ですが、それだけにとらわれない広い視野を持って行動、創作していくことが大切である、というのがタヒミックさんの主張であり、単純な西洋批判というわけではないのです。

土着の固有文化への愛情

土着の固有文化を語る際に、タヒミックさんが好んで使う言葉に「indi-genius」という造語があります。

フィリピン・イフガオ族の長老が、「土着の」という意味を持つ「indigenous」を、いつも間違えて「indi-genius」と発音することから、「Indi(土着民)※」+「Genius(天才)」=「indi-genius」、つまり“その土地固有の土着の知恵”という意味合いを持つ言葉として、好んで使っています。

その土地固有の知恵の強みを発見し、それを育て伝えていくことが必要であり、西洋化してしまった世界のバランスをとることができるのは、土着の知恵がたくさん詰まった第三世界の持つ能力ではないかと、タヒミックさんは主張します。

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その「indi-genius」を後生へ残し伝えていく活動の一環として、現地の少数部族にビデオの撮影方法を教えるワークショップを数年前から継続的に行っているタヒミックさん。

ビデオ撮影技術を現地住民と共有し、これまで記録されてこなかった彼らの文化的慣習を記録してフィルムとして残すのが目的です。

独自の文化をいまだ持ち続ける現住民たちが、自分たちで映像を制作できるようになれば、ハリウッド的な映像が反乱するフィリピン社会の中で、自分たちの土着文化の知恵を再発見し、誇りに思うことができると考えているようです。

海外から学んだことを、自分たち固有の文化に取り入れ、バランスをとっていくことが必要ではないかという問題提起は、価値観が画一化してしまった世界に生きる我々日本人にも突きつけられた課題ではないでしょうか。

※フィリピンが植民地だったことから、一部で「Indio(=Indi)」と呼ばれていた。

イフガオ族
フィリピン、ルソン島北部にあるイフガオ州を中心とする山岳地帯に住む土着の民族。棚田を作り水稲耕作を行う。タヒミックさんは、イフガオ族の首長を映画内で取り上げたことがキッカケとなり、その文化に魅了された。
イフガオ族(http://ja.wikipedia.org/wiki/イフガオ族)