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NPO団体、ナヴダニヤ~シヴァさんの現在の活動拠点

シヴァさんが、1980年代から「科学・技術・自然資源政策研究財団」にて環境問題や農業問題に取り組んできた活動がもとになり発足したのが、NGO団体ナヴダニヤ。

設立の背景には、農薬や化学肥料を大量に使用する近代農法、最新のバイオ・テクノロジーを駆使した遺伝子組み替え作物、経済効率を優先させた単一化・画一化農法の拡大に対する懸念がありました。

1990年代になると、シヴァさんはグローバルな市場経済の影響で急速に変えられていく農民の暮らしをどう守るか、という課題に取り組み始めます。そうして1991年に設立したナヴダニヤでは、インド固有の種子の保存や有機農業、フェアトレードなどを広めていく活動を押し進めていきました。

最新の科学技術を盲信しすぎることの危うさや、経済のグローバリゼーションのマイナス面について包み隠さず世界に発信すること、そして地元の小規模農家の人権擁護などを目標に掲げ、多くの分野において以下のような大きな成果をあげています。

ナヴダニヤ
1991年にシヴァさんを中心に設立されたNGO団体。以下で紹介する活動のほかにも、地球温暖化などの気候変動についての活動や、若者への教育機会の提供、関連本の出版、企業へのインターンシップ派遣など、様々な活動に取り組んでいます。
ナヴダニヤ(http://www.navdanya.org/home)

種子保全活動

そのひとつが『種子保全活動』といわれる活動。20年以上にわたり、40万人以上にのぼる地元の農家らに、生物の多様性、安全性について啓蒙活動を続けてきました。

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経済効率がいいとされ、西側諸国により促進されてきた単一化・画一化農法は、効率よく作物を育てることができる代わりに、その土地固有の生物多様性を失なわせます。また、特許により大企業(主にグローバル企業)に押さえられた種苗の購入費用は、地元の農家に金銭的な足かせを負わせることとなりました。

その結果、彼らはその土地固有の伝統的な品種の種子も、それを育てる知識も自由も失うことになります。先祖代々受け継いできた、その土地土着の種子や農法を手放してしまったのです。

ナヴダニヤは、そんな状況を打破するため、世界に対してだけではなく、知識のない地元の農家に対しても生物多様性の重要性を説き、固有の種子の保全と普及に努めていきました。

同時に『Community Seed Banks(種子の共同銀行)』として、その地域や気候に合った、その土地固有の種子や関連知識を収集し、農民に還元。種子を登記簿化することで、大企業の特許に対抗していったのです。

その結果、インド固有の種子を含む3000種以上の米、75種類の麦をはじめとする数百種類の穀物・野菜の種子保全を行うことに成功しました。

バイオパイラシー

neem.jpg『種子保全活動』と関連して、バイオパイラシー問題があります。“遺伝資源の窃盗行為”ともいわれ、村人たちが昔から民間療法的に知っている知恵や作物を、知的所有権として登録してしまうことにより、古くから当たり前に使用されてきた作物や薬などが自由に使えなくなってしまうという問題です。

例えば、インドで聖なる木と呼ばれているニーム・ツリー。古くから、抗菌性・坑炎症の作用があるとして用いられてきましたが、1985年にアメリカの大手化学会社らが特許を取得。当たり前に薬として使用してきたインドの医療者たちがニーム製品を使えなくなってしまったのです。(特許は、2005年正式に無効となった)

過去にも同じ様な例として、ターメリック(ウコン)の薬効やバスマティ米、タイの高級芳香米(ジャスミン米)の国外企業による特許取得などがありました。

こういった場合の特許取得を「企業による種子の支配」ととらえるか、知的財産権を守るための「正当な行為」ととらえるか、実際には意見が分かれるところでもあります。

しかしながら、在来種・原種は、何世代にもわたって、その土地の農家が選抜し、守り育ててきたものであるとして、日本を含む192カ国およびEUが締結している「生物多様性条約」(アメリカは未締結)はこれを認め、原産国の農民にその利益を還元しようと枠組みづくりに取り組んでいます。

ちなみに、第12回生物多様性条約締約国会議(COP12)は、2012年インドで開催が予定されています。

生物多様性条約
ワシントン条約、ラムサール条約等を補完する国際条約。生物多様性の保存および持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目指している。2012年2月現在、192か国及びEUが締結するも、米国は未締結。
外務省:生物多様性条約(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html)

有機農法(オーガニック)

シヴァさんの名を一躍世界に広めた代表著書『緑の革命とその暴力』。

農薬や化学肥料を大量に使う“近代農法”、遺伝子組み替え作物による生物の画一化について警鐘を鳴らした名著です。

その土地特有の気候・風土にあった土着作物から、商品価値のより高い種子へとシフトしていった結果、世界規模で種の画一化がおき、大都市の住民へ安定して大量に作物を供給するため、品目を絞り生産した結果、品種の多様性が失われていった、というのが主な主張です。

シヴァさんは、遺伝子組み替えの倫理的、生態学的影響に関して異論を唱え、バイオ・セイフティー(生物学的安全)に関する運動のリーダーとして世論を築き上げていきました。

また一方で、遺伝子組み替え作物の代替として、有機農法を広く提唱してきました。もちろん、有機農法では世界の食料需要を支えることはできないと批判する専門家も大勢います。

しかし、有機農法の研究と普及により、安心な食物を得られるだけでなく、農家は種苗会社から種子や肥料、農薬を仕入れるために借金をする必要がなくなるとして、種子の自由利用、小規模農業コミュニティの人権擁護という側面からも、ナヴダニヤは有機農法を広く押し進めています。

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フェアトレード

最近、よく耳にするフェアトレード。

発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動です。

ナヴダニヤでも、ニューデリーに複数の直営店舗をもち、食品だけでなく地元で造られた伝統工芸品や地元アーティストによる作品などが購入できるようになっています。

そのなかでも特徴的なのが、有機農法で生産された作物を、小規模農家から消費者へと直接つなげよう、という考え方です。シヴァさんは、これを「種から食卓まで」と表現します。

資源の不正使用なく、嘘のない価格で、誠実な農法により生み出された製品を、消費者へと直接届けることに重きを置いて取り組んでいるのが、ナヴダニヤのフェアトレードなのです。

人だけでなく、地球にもやさしいナヴダニヤのフェアトレードは、土着の作物の保護だけでなく、土着の文化をも育む活動へと進化を続けています。

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