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2004年授賞式レポート

2004年(第15回)福岡アジア文化賞授賞式

開催日時
2004年9月17日(金)/14:00~16:00
会場
アクロス福岡シンフォニーホール
参加者
約850名

秋篠宮同妃両殿下の御臨席を賜り、大使館関係者、留学生、国際交流団体、経済団体、大学、地域団体の代表者及び市民など約850名の参加を得て行われた。

式典では、まず秋篠宮殿下からお言葉をいただき、映像での受賞者紹介や主催者による賞の贈呈のほか、来賓の河合正男外務省特命全権大使、河合隼雄文化庁長官(代理出席:西阪昇文化庁文化部芸術文化課長)、及び麻生渡福岡県知事の祝辞が述べられ受賞者の業績を讃えた。

受賞者によるスピーチでは、4名の受賞者が受賞の喜びを表し、市民に対するメッセージなどを語った。

また、特別演奏として、大賞受賞者のアムジャッド・アリ・カーン氏らによるサロードの演奏が行われ、式典に花を添えた。

秋篠宮殿下のお言葉

本日、古くからアジアとの交流によって栄えてきた。ここ福岡において、「第15回福岡アジア文化賞」の授賞式に皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。また本賞が15回の節目を迎えられたことをお喜び申し上げますとともに、創設以来今日まで尽力された多くの関係者に敬意を表したく思います。

近年、アジアでは多くの国々が、グローバリゼーションの影響を受けて経済の発展に取り組んでおります。しかし、少しよく観察してみると、一方では伝統的文化の継承に多大な努力がはらわれ、また、それらに立脚した独自の新しい文化も生み出されつつあります。私自身、アジアの諸地域を幾度となくく訪れておりますが、それぞれの土地の独自の文化に触れるたびに、その深さと多様さに感銘をうけております。このような生き生きと発展しているアジアの文化に対して貢献をされた方々を顕彰する福岡アジア文化賞は、大変に意義深く、本日、大賞、学術研究賞そして芸術・文化賞を受けられる4名の方々に、心からお祝いを申し上げたく思います。皆様の業績は、ご自身の国に対する貢献であることにとどまらず、人類社会全体の文化を豊かにするものであると考えます。

終わりになりますが、受賞される皆様が今後益々ご活躍になることを祈念するとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジアに対する理解がさらに深まることを期待し、私のあいさつといたします。

大賞受賞者によるスピーチ

ナマステ! ご来場の皆さま、こんにちは。

福岡アジア文化賞委員会に対する感謝の気持ちをどう表現すれば良いかわかりません。大賞受賞は、私だけでではなく、我が祖国とインド古典音楽にとっても大いなる名誉です。私は、この大地に生まれ、古くからの伝統を世界に伝えることができたことを幸運と感じています。

私と日本の関係は何年にもなります。世界中の多くの都市を訪れていますが、1989年に東京のサントリーホールで最初に演奏したインド人演奏家となれたことは大変な幸運であると思っています。日本は、技術と電子の素晴らしさで私を魅惑してきました。この度の福岡アジア文化賞大賞受賞によって、今また私を感動させています。日本には独自の音楽があり、私はその音楽のすばらしさに敬意を払っています。 

音楽は、わからなくても聴くことができます。音楽は感じ、経験されるべきものです。音楽は魂の糧であり、命への喜びです。私は、いつから自分が音楽の世界へ足を踏み入れたか、はっきり覚えてはいませが、記憶にある限り、音楽は私の生活の一部でした。実際、たとえ一瞬であれ、私の人生から音楽が切り離されるということは考えることができません。我が父にして師である、伝説のハーフィズ・アリ・カーンも人生を音楽に捧げました。

今日、賢明な人は息子を古典音楽家にしようとはしません。生活が安定せず安心でないからです。過去の時代において、行者や僧だけが音楽と全能の神へ人生を捧げることができました。しかし、我が父にとっては、音楽の世界のほかに生きるすべはありませんでした。音楽は、生きること-人生そのものなのです。彼の息子として生まれ、私は5世代にわたる音楽の遺産を受け継ぎました。それは私にとって鳥が飛ぶことと同様に自然なことでした。私たちは北インドと南インドの両方での音楽体系の基盤を確立しました。ヒンディー語の古いことわざに「Swar Hi Ishwar Hai」(音楽は神である)というものがあります。音楽を通じて、すべての魂と、すべての宗教と、世界のすべての曲とつながっていると感じるのです。 

音楽は私が祖先から受け継いだ偉大な資産であり、常に弟子たちに分け与えようとしているものです。我が二人の息子が我が家系の7代目を代表してサロードを弾き始めたときは、我が妻スバラクシュミと私にとって真に偉大なる瞬間でした。気を散らすことが多く、音楽的な汚染も多い現代、アマーンとアヤーンが演奏するということは、おそらくこの伝統をさらに持続させよという神の望みであるのでしょう。 

我が妻スバラクシュミを与えたもうたことを神に感謝します。彼女は、アヤーンとアマーンの最初の師であったのです。彼女自身が評価の高いアーティストでもあり、彼女は私の人生における柱であり力であります。美しき魂である彼女は、芸術的インスピレーションに満ちた雰囲気を創り出し、私を駆り立ててくれています。我が息子たち、アマーン・アリ・バンガシュとアヤーン・アリ・バンガシュはともに勤勉で才能があるとともに親切な人間であり、今日の若者の模範としての彼らを見るとき私は誇らしい気持ちになります。そして私の家族があるのも、私の音楽探究の旅に非常に大きな役割を果たしてくれている献身的な弟子たちと、そしてもちろん世界中の音楽愛好家があればこそのことなのです。

福岡アジア文化賞委員会から認めていただいたことは、本当に大きな満足であります。文化賞委員会がレベルを高く保っておられることを知ることは、もったいなくも心励まされることであります。大賞受賞者は世界中の4000人もの人々により選出されたのですから。謹んで賞を受けますことは、私の栄誉であります。ありがとうございました。

学術研究賞受賞者によるスピーチ

本年度の福岡アジア文化賞学術研究賞を授与していただき、まことに光栄に存じます。

私は経済学を専攻する北京大学の教授です。長年にわたって、中国の経済体制改革の研究に携わってきました。私の年来の主張は、中国経済改革の最終目標を、計画経済体制から市場経済体制に移行することです。

改革の方法は、国有企業の所有権の徹底的改革です。具体的には、国有企業を投資主体を多元化する株式会社に転換させるのです。そのためには一方で、政府機能を徹底的に転換することが必要です。つまり政府を「全能政府」から、「管理者として企業にサービスを提供する政府」に転換させることです。

他方では、資本市場を一層発展させることです。国有企業の改革によって生まれてくる失業者の再就職問題を解決し、また農村から都市部に流入してくる過剰労働力を解消するために、私営企業の発展を支持し、奨励しなければなりません。ここ二十数年来、私はこの問題をめぐって研究を進めてきました。私の政策提案は、次第に中国の指導者に受け入れられ、いまでは政府の様々な政策に反映されています。

私は、福岡アジア文化賞委員会の専門家の方々による中国の経済改革に対する理解と支持に対し感謝するとともに、私の研究成果に対する評価に深い謝意を表明したいと存じます。

中国経済は急速に発展しつつあります。これは、中国政府が市場経済への誘導を目指す経済改革を推進してきた成果であります。中国経済の発展における様々な問題は、改革を通じてのみ解決することができます。それゆえに、中国の経済改革は、引き続き進展していきます。私は皆様のご厚情とご期待に背くことなく、中国の「和平崛起(わへいくつき)(平和台頭)」を実現するために、微力ながらも、引き続き貢献したいと思っております。 

皆様、経済が益々繁栄しつつある中国は、必ず世界の平和と発展に大きく寄与することができると同時に、中国とアジア諸国との友好往来を促進させていくことを信じて頂きたいと思っております。 

皆様、心より感謝いたします。なお福岡市の皆様の御多幸をお祈り申し上げ、そして福岡市が益々世界の文化交流の面において、さらに大きな役割を果たすことを心よりご期待申し上げます。

学術研究賞受賞者によるスピーチ

先ず、このような栄えある賞を与えていただいた福岡アジア文化賞委員会に心から感謝いたします。

ネパール人初の受賞者として、2004年(第15回)福岡アジア文化賞学術研究賞を受賞することを大変嬉しく光栄に思います。この受賞を大きな励みとし、ミティラー民俗文化のさらなる調査研究に励む新たな一歩にしたいと考えます。この賞は、私の人生に新しい春を運んできてくれました。これからよりいっそう精力的に研究活動を再開しようと意気込みもいただきました。ですから、2004年(第15回)福岡アジア文化賞学術研究賞に私を選んでいただいた委員会の皆様、誠にありがとうございます。

ここで、ミティラーとミティラー文化について少し説明させてください。ミティラーは非常に古い歴史をもつ古代王国です。首都はジャナクプルでした。王様の名前はシラドゥワージュ・ジャナク。シータという従順な娘がいて、シータはアヨーディヤーの王ダシャラタの息子、ラーマと結婚しました。こうしてミティラーはネパールとインドの文化の架け橋となったのです。世界的に有名な叙事詩『ラーマーヤナ』は彼らの人生の様々な出来事やエピソードを描いたものです。

マイティリー語はネパールの第二の言語です。ミティラーは文化の要塞として、ネパール、インド、その他外国の広大な地域に暮らす人々の栄えある過去の原動力であり、その過去を偲ぶ地でもあります。また、古くから、Kirat(キラータ)やKarnat(カルナータ)、Malla(マッラ)時代のようなネパールの様々な王国間の文化をつなぐカギでもありました。これらの時代はミティラー文化が大きく花開いた時です。特にマッラ時代は、このすばらしい伝統があらゆる点で発展した黄金期と考えられています。ミティラーは、口頭伝承や民俗文学など多くの分野に見られるように、色彩豊かな民俗文化に彩られた古代文明なのです。

福岡アジア文化賞は、私たち独自の文化が交流し互いに学び合い、さらにアジア全体の多種多様な文化が融合しさらに発展するのにふさわしい機会を提供してくれます。

私は日本で賞をいただくことを特にうれしく思います。日本にはこれまで二度来たことがあります。このようなすばらしいイベントを開催してくださり、私と妻を招待してくださった福岡市の皆様に心から感謝いたします。私たち二人とも、たいへん光栄に思っています。福岡はすばらしいまちで、市民の皆様は大変友好的です。

福岡アジア文化賞が、これからも、アジアの学術、芸術、文化に多大な貢献をした人々への敬意を具現化する担い手でありつづけることを期待します。

芸術・文化賞受賞者によるスピーチ

栄えあるアジアの芸術・文化賞を受賞することは、私の人生で本当にうれしい瞬間です。同時にこの賞が「人類と呼ばれる種の進化した状態」における最高の発展に対して与えられることにも喜びを覚えます。私はスリランカ科学発展協会での講演で「人類と呼ばれる種」の発展をたどり、最高の達成が「文化」と呼ばれる要素の成長にあることを説明しました。また、人間は動物とは違うという認識のもとに「開発指数」を変えて、人間の成長を測定できるようにするべきだと世界銀行に要請しました。言い換えれば、人間は「文化」や「宗教」という最高の達成度合いによって評価されるべきであり、ただ単に、動物の世界を評価する測定単位である「食料かご」の中にくくられるべきではないということです。つまり、現在の評価の指標である「生活の質」を「満足の質」のような新しい尺度に変えるように提案したのです。

また、インドネシアのジョグジャカルタで、世界の文化人たちに自分の専門分野である「人類の遺産」について発表した時、「機械というモンスター」の発明により、人間は急速に「多額の給料」と「多すぎる余暇」を抱える不安な状況に向かっていると言いました。このモンスターの恩恵で最も発展した大陸であるヨーロッパは、2010年までに、人間の労働時間が週3日に減るという事態を迎えるでしょう。このような「行き過ぎた余暇」現象の解決策は、より明確な方法で「余暇を吸収する」ことです。一例として、人類の残した「多くの歴史遺産を訪ね」、過ぎ去った時代の物言わぬ文明の魂を楽しみ、その遺産に眠る考えを引き出してみてはどうでしょうか。1881年にフランスの芸術大臣が言った「カルカソンヌやアヴィニョンを保存することで中世の時代の権力のあり方がわかる。これら文化遺産という石の本の中から歴史の魂がうかがえる。」という言葉を思い出してください。かつて私たちは、これらの歴史遺産を「物言わぬ友」と呼び、「人間は歌い泣くことができ、動物は叫びうめくことができるが、遺跡は、物言わぬ動かぬ友として何世代にもわたり寝ずの番をしている」と言っていたのです。

皆様、私はこれまで多くの講演で、「文化は、人間が達成した最高の進化レベルを示す指標である」という考えについて話してきました。そしてそれらを4冊の本にまとめました。アジアでもっとも進化した国である日本の「文化の街」福岡からこのような形で認めていただいたことを誇りに思います。アジアの芸術・文化賞受賞者として謹んでこの栄誉をお受けいたします。そして、私はこの「文化の喜び」を広める努力を続けていくことを、福岡の皆様にお約束します。私は「食べ物、飲み物が人間の日々の食生活の一部であるように、文化も人間の日々の欲求の一部であるべきだ」と信じています。進化のプロセスは、すべての人々が「文化の喜び」を実感できるまで継続されなければいけません。福岡の皆様、この「全人類にとって新たに認識された欲求」に光をあててくださったことに感謝いたします。皆様が造ってくださったこの道が、すべての人々が「日々の食事」として「文化の喜び」を吸収できるようになるまでの永久的な光の標識となることと信じています。

皆様、妻とともにお礼を申し上げます。福岡市長、福岡の皆様、文化に関心をお持ちの皆様、本当にありがとうございました。

2004年(第15回)福岡アジア文化賞祝賀会

開催日時
2004年9月17日(金)/18:30~20:00
会場
ホテル日航福岡「都久志」

受賞者夫妻及び同行者をお迎えして、約180名の参加により行われた。

主催者を代表して、川合辰雄財団法人よかトピア記念国際財団理事長の挨拶が行われ、来賓を代表してカルナテイラカ・アムヌガマ在日スリランカ大使による乾杯の発声が行われた。

会場では交歓の輪が広がり、終始和やかな会となった。

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

福岡アジア文化賞授賞式の様子や各種イベントのレポートを含めた2004年度の事業報告書を、PDF形式でダウンロードいただけます。

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各種イベントレポート

2004年度の授賞式以外のイベントレポートをご覧いただけます。