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2004年市民フォーラムレポート

2004年大賞受賞/アムジャッド・アリ・カーン

タイトル
天と人をつなぐサロード
開催日時
9月18日(土)14:00~17:00
会場
イムズホール
サロード奏者
アムジャッド・アリ・カーン、アマーン・アリ・ガシュ、アヤーン・アリ・バンガシュ
タブラ奏者
シャフート・アフマド・カーン
インド音楽解説
藤井 知昭(中部高等学術研究所教授)

インド古典音楽の弦楽器で極めて高度な演奏技術を必要とする「サロード」演奏の巨匠であり、インド国内のみならず、国際的にも広く活躍し、高い評価を受けている音楽家であるアムジャッド・アリ・カーン氏による市民フォーラムが、9月18日、イムズホールで開催されました。

コンサートに先立ち、藤井氏がアムジャッド・アリ・カーン氏の功績を紹介するとともに、インドの古典音楽の特徴や魅力を西洋音楽との違いを例に挙げながら説明した。

パフォーマンス

前半のステージでは、カーン氏がサロードという楽器の構造などを紹介し、独特の演奏法について「指の腹ではなく爪の先で弦を押さえることで、人間の声を生み出すことができる」と説明した。そして当日がガネーシュという象の神様の誕生日に当たることにちなみ、『ラーガ・ガネーシュ・カリヤーン』を演奏した。静かに聞き入る聴衆に対してカーン氏は「インドの音楽は聴衆も一緒に感じることが大事。恥かしがらずに自分を表現してほしい」と語りかけた。

後半のステージでは、まずカーン氏の息子のアマーンとアヤーンが『ラーガ・バゲシュワリ』という曲を演奏した。続いてカーン氏も加わり「先祖から代々受け継いできたサロードの音楽が皆様の心に届き、さらなる祝福を受けて今後も継承されていくことを祈っている」とスピーチしたあと、全員でベンガル地方とアッサム地方の民謡『ラーガ・キルワーン』を披露。演奏が終わると、会場からは盛大な拍手が沸き起こった。

演奏終了後にはロビーでサイン会が行われ、興奮覚めやらぬファンが長い行列をつくった。

2004年学術研究賞受賞/厲 以 寧(リー・イーニン)

タイトル
日中協力は東アジアの経済統合を促すか?
開催日時
9月18日(土)18:00~20:00
会場
アクロス福岡イベントホール
パネリスト
徳島 千穎(株式会社トクスイコーポレーション代表取締役社長)
パネリスト
渡邉 利夫(拓殖大学国際開発学部教授)
コーディネーター
小島 朋之(慶應義塾大学総合政策学部教授・学部長)

中国を代表する経済学者で、1980年代以来の中国の経済発展をもたらした改革を理論的に先導してきた厲以寧氏による市民フォーラムが、9月18日、アクロス福岡にて開催されました。

冒頭で小島氏は厲氏の業績に触れ、①中国の目覚しい経済発展に貢献した②経済改革を推進する人材を多数育成した③日中の友好関係の発展に貢献した、という三点を強調した。

第1部:基調講演

基調講演で厲氏は、中国の経済改革の注目すべき点や今後の展望を語るなかで、「政府機能の転換」「私有財産の保護」「所得分配の調整」を推し進めることの重要性を主張した。さらに農民や都市の失業者に対する政策も紹介し、「中国の経済は今後も発展する。それは東・東南アジアにとっても非常に有益なこと」と前途の明るさを明言した。

また最後に、日本と中国が今後お互いに協力し、優位性を補完しあうことの必要性を訴えた。

第2部:パネル・ディスカッション

パネルディスカッションでは、まず徳島氏が「中国経済は日本経済にとって一つの生命線である」とした上で、エネルギー問題や農業政策など中国経済の抱える問題点を指摘。続いて渡邉氏が中国経済の外資系企業への依存度の高さを取り上げ「国民経済の産業連関構造の密度を深める方向への政策転換が必要ではないか」と示唆した。それに対して厲氏は、外資への依存度は大きな問題ではないとし、中国が今後20年間7%の成長率を維持できるという根拠を示した。熱い議論が繰り広げられるなかに会場からも多くの質問状が寄せられ、中国経済に対する関心の高さをうかがわせた。

最後に小島氏が「日中間に常に政治の問題が横たわるなか、経済の相互補完関係を固めていくことが極めて重要になってくるのではないか」と提言し、締めくくりの言葉とした。

2004年学術研究賞受賞/ラーム・ダヤル・ラケーシュ

タイトル
女性が伝承文化を担い、未来に生かす
開催日時
9月19日(日) 13:00~15:30
会場
アクロス福岡イベントホール
パネリスト
蓮沼 ミヨ子(ミティラー美術館学芸員)
パネリスト
森 淳(ネパール歯科医療協力会理事)
コーディネーター
応地 利明(滋賀県立大学人間文化学部教授)

ネパールを代表する民俗文化の研究者であるとともに、比較文学の研究でも多大な業績をあげたラーム・ダヤル・ラケーシュ氏による市民フォーラムが、9月19日に、アクロス福岡で開催されました。

大小のミティラー民画が展示された華やかなステージで行われたフォーラムは、まず応地氏が地図を示しながらミティラー地方の説明をした。

第1部:パネル・ディスカッション「民画が描く世界」

第1部では、蓮沼氏がミティラーで撮影した写真を見せながら、実際の儀礼や女性たちが家の床にアリパン(※)を描いている様子などを紹介し、「紙に描くようになって自己を表現するチャンスを与えられた」と語った。

続 いてラケーシュ氏がミティラー民画の精神的な背景や技法などを具体的に解説し、「その土地に住む人々の過去の経験と現在の生き方を表現したもの」と説明し た。会場からは、紙に描くようになった経緯や、絵の具の種類や色の選び方など、ミティラー民画の詳細に関する質問が相次いだ。

第2部:パネル・ディスカッション「伝承してきた女性の世界」

第2部では、森氏が歯科医療のボランティア活動を通して見たネパールの女性たちを映像をまじえて紹介し、「村ではほとんど発言権のない女性たちが、自分や子どもたちのために健康づくりのボランティア活動を行い、奮闘している」と称えた。

ラケーシュ氏は、ミティラーの女性たちの絵画に対する熱意や、自立に向けた商業的な取り組みを紹介し、「彼女たちの将来は輝いている」と語った。

会場からは、収入を得るようになった女性たちの変化や、差別問題に関する質疑がなされ、女性エンパワーメントグループのオーナーによる搾取や身分・民族間の差別といった根底にひそむ問題が浮き彫りになった。

フォーラム終了後も参加者は、展示されたミティラー民画を熱心に鑑賞していた。

※アリパン:儀礼時に描かれる幾何学模様の絵

2004年芸術・文化賞受賞/センブクティ・アーラチラゲ・ローランド・シルワ

タイトル
守るココロは、創るココロ
開催日時
9月19日(日) 16:00~18:00
会場
アクロス福岡イベントホール
パネリスト
中川 武(早稲田大学理工学部教授)
パネリスト
村松 伸(東京大学生産技術研究所助教授)
コーディネーター
藤原 惠洋(九州大学大学院芸術工学研究院助教授)

アジア人として初のイコモス(国際記念物遺跡会議)委員長を務めて以来、遺跡保存活動の精神的支柱であり続けるセンブクティ・アーラチラゲ・ローランド・シルワ氏による市民フォーラムが9月19日、アクロス福岡で行われた。

冒頭で藤原氏はシルワ氏の業績を説明するとともに、「文化遺産が私たちの生活や未来とどのようにつながっていくのかを考えたい」とフォーラムの目的を語った。

パネル・ディスカッション

パネルディスカッションでは、まずシルワ氏がスリランカ文化三角地帯について映像を使いながら詳しく紹介し、「多くの遺産と過去の人々の業績から知識とひらめきを得ることで、未来へと進むことができる」と語った。また、中川氏がアジアの中でも珍しく歴史的時代区分による文化形態がはっきりしているスリランカと日本の類似性を指摘すると、シルワ氏は「大陸に対峙しているスリランカや日本には、島国文化という共通点があるからだ」と答えた。さらに村松氏が、インドの文化に対するスリランカの独自性についての質問を投げかけるなど、熱心な討議が行われた。

後半では、中川氏が手掛けているカンボジア・アンコールとベトナム・フエの修復活動や、村松氏が取り組んでいるmAANの活動内容が映像を使って紹介された。

また、会場からの「富士山は世界遺産になれるのか」という質問に対して、シルワ氏は「富士山は既に人々が国際的な価値を認めており、世界遺産に登録されるべき重要な遺産である」と答えた。

最後に藤原氏が「文化遺産を守り、それぞれの地域の魅力を高めることは、豊かな未来を創っていく可能性に満ちあふれている」と述べて、締めくくりの言葉とした。

 ※mAAN:modern Asian Architectural Network(アジア近代建築ネットワーク)

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各種イベントレポート

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