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2007年市民フォーラムレポート

2007年大賞受賞/アシシュ・ナンディ氏

タイトル
日本または世界、さらには未来へのメッセージ
開催日時
2007年9月15日(土)/13:00~15:00
会場
アクロス福岡地下2Fイベントホール
コーディネーター
応地利明(立命館大学教授)
パネリスト
芳賀芳子(子どもの性と命の教育コミッティ代表)

インドに関わる国際協力NGOを交えてのパネルディスカッションが行われ、300席の会場がほぼ埋まる盛況ぶり。会場からも活発な意見が相次ぎました。

第1部:基調講演

アシシュ・ナンディ氏による市民フォーラムの第一部・基調講演が「日本また世界、さらには未来へのメッセージ」と題されて開催されました。

文化の多様性はいいことづくめではない。しかしそれを守らればならない理由がある

植民地はなくなっても、植民地主義は今も生きている。我々の未来をいわばハイジャックし、途上国の現在は先進国の過去であり、先進国の現在は途上国の未来とみなす考え方だ。途上国自身としての望ましい社会のビジョンを持つことは許されない。

少数言語の消滅に代表されるように、「過去」への関心が欠落したグローバリズムの陰で、急速に伝統と文化多様性が失われている。それだけではなく、それに対する喪失感さえ感じないようになりつつある。エスニック料理や博物館の陳列品はさておき、文化の伝統やノスタルジーなど国際競争力についていけない連中の負け犬趣味という訳だ。一方で、寄る辺なき「文化的ホームレス」の大量発生をいいことに、為政者たちは都合の良い「文化」や「伝統」を作りだして大衆に与え、政治的に利用しようとしている。

文化の多様性を認めるということは、他の文化を受け入れ、それを理解し、自分のものとして使っていくことである。それは、必ずしも楽しいばかりではない。文化的のコミュニケーションは、不安定で、時に不快でもあるかもしれない。しかしその相互作用を経てこそ、文化的意味のなかで自分たちの表現や感覚を共有することもでき、ひとつの社会理念のなかでは解決できない問題にも道が開けるのだ。近代日本の小説、映画を見ればわかるように、優れた文化はそうした葛藤のなかで生み出されてきた。

むろん文化には抑圧的、暴力的な側面もある。新しい隠微な形で潜んだ暴力性やイデオロギーもある。しかしそれに疑念を抱き、発見するのもまた文化の力である。一過的なものに惑わされないためには、長期的にはやはり文化に、文化多様性に拠るに如くはないのである。

第2部:パネルディスカッション

立命館大学教授の応地利明氏をコーディネーターにお迎えして、芳賀芳子氏(子どもの性と命の教育コミッティ代表)を交えたパネルディスカッションを開催しました。

応地氏:まさに今、日本の自治体でも多文化共生、マイノリティの尊重ということが課題になっている。時に不快な・・・とナンディ氏は言われたが、それを乗り越えてきた経験をどこよりも持っているのがインドだ。日本では他者を自分たちの価値体系に同化させることしかしてこなかったが、「相互の交流により新しい価値体系を作りだしていく」という方向をインドから学ばなければならない。

芳賀氏:私たちは子どもの性的搾取の根絶のために活動するNGOで、ムンバイの売春地区の子どもへの教育支援もそのひとつ。一方、インドでの経験を通じて、伝統的な文化や生活習慣を誇りを持って守っている人々に会い、モノの豊かさと心の豊かさは別と思うことも多い。地球規模で商品が流通する時代だからこそ、個人と個人の関係を糸口として文化交流が大事と思う。

質問者:貧困と経済成長の関係、また教育は解決になるか?

ナンディ氏:芳賀氏が眼のあたりにしたように、開発や経済成長で貧困が解消されるのではなく、むしろ新たな貧困が生み出されている。教育というより、貧困撲滅への強力な政治的な意思が必要だと思うが、為政者たちは核武装の方を優先しているかに見える。

応地氏:ちなみにナンディ氏は、インドの核武装に最も強く反対の声をあげたひとり。貧困が話題になったが、貧困を恥、撲滅すべきと単純に決めつけるだけではいけない。文化人類学者のO.ルイスが言ったように、貧困もひとつの文化であって、単に経済状態からだけではなく複雑な文化的要素で構成されるものなので、それを解きほぐしながら見る必要がある。そこでも重要になってくるのは「交流」に違いない。

2007年学術研究賞受賞/シーサック・ワンリポードム氏

タイトル
今、蘇る-タイの古代都市と人々の息吹
開催日時
2007年9月15日(土)/16:00~18:00
会場
アクロス福岡地下2Fイベントホール
パネリスト
石井米雄(京都大学名誉教授、第5回福岡アジア文化賞受賞者)
パネリスト
伊東利勝氏(愛知大学教授)
コーディネーター
新田栄治氏(鹿児島大学教授)

ふたりの碩学に、気鋭の研究者を交えてのシンポジウム。豊富な写真や地図が物語る遺跡のありさまに、約240名の参加者の思いは古代文明の世界に飛びました。

第1部:基調講演

シーサック・ワンリポードム氏による市民フォーラムの第一部・基調講演が「今、蘇る-タイの古代都市と人々の息吹」と題されて開催されました。

タイ古代国家の成立と展開

7~10世紀頃のタイには、ドヴァーラヴァティー(堕羅鉢底)という古代王国があったと、多くの学者が信じている。しかし、私は現地調査を通じて、中央集権な「王国」などはなく、水運・陸運の要地に栄えた都市国家群があったのみだという結論に至った。

インドやクメール文化(カンボジア)からの影響を受けつつ、諸都市はさかんに交易を行っていた。文化的関係を保ちながら王族同士の血縁も相まって緩やかな連合を成しており、15世紀にアユタヤ朝が成立するまで「王国」といえるものはなかったと考えている。

第2部:パネルディスカッション

京都大学名誉教授で、第5回福岡アジア文化賞受賞者である石井米雄先生をパネリストにお迎えして、伊東利勝氏(愛知大学教授)、新田栄治氏(鹿児島大学教授)を交えたパネルディスカッションを開催しました。

石井氏:東南アジアを「大陸部」と「島嶼部」に分けて考えていた従来の東南アジア史学に対して、シーサック氏の考え方は海がひとつの権力を生み出す母体となる、つまり海上交易を基盤に政治と商業の中心である港(=港市国家)が形成され、それが内陸に成長して国ができていくという、大変新しい考え方だ。

伊東氏:ミャンマーのピュー文化の遺跡で様々な文様の銀貨が出土する。チャンパ(ベトナム南部)からドヴァーラヴァティー、ピューまで、すべての地域に共通する文様もあれば、特定の2地域だけに出土するもの、あるいはほぼ全種類が揃った都市などあって、これは様々な交易ルートが存在し、その取引に銀貨が使われていたことを想像させるに十分だ。

新田氏:ドヴァーラヴァティーはタイの歴史上、非常に重要な時期であるというお話をいただきました。では、今のタイ国民はどう認識しているのか。

シーサック氏:ドヴァーラヴァティーといってもほとんどの人は知らず、タイの教科書でも13世紀のスコータイ朝からいきなり国の歴史が始まるように書かれている。これはタイを一民族、一国家とみなす誤った考えだ。それ以前にも様々な都市国家が存在していたとともに、それらを結んで、海岸の港町から内陸部まで、今のベトナムからビルマまでを含む広い交易のネットワークの存在を強調したい。そのことによって、私は歴史を再構築したいと考えている。

2007年芸術・文化賞受賞/朱 銘(ジュウ・ミン)氏

タイトル
藝術とはすなわち修行である
開催日時
2007年9月16日(日)/13:30~15:30
会場
福岡アジア美術館
解説
安長幸一(福岡アジア美術館顧問)

特別展示「朱銘展」開催中の福岡アジア美術館で、台湾から運んだ自作を前に「藝術とは修行である」と朱銘芸術の精髄を語る朱銘氏。今回持ってこれなかった作品は数十枚のスライドで紹介。年齢を感じさせない氏の創造意欲について、立ち見も含め120名余りが詰めかけた会場からは次々に質問の手が上がった。

第1部:アーティスト・トーク

朱 銘(ジュウ・ミン)氏による市民フォーラムが福岡アジア美術館にて開催されました。台湾から運んだ自作を前に、質問者とのトークセッションが始まりました。

藝術とはすなわち修行である

質問者:創作活動において、ひらめきとか発見、感性が大事ということですが、それも修行によってもたらされるものですか?

朱 銘氏:「ひらめき」は最初学び始めた人には重要かもしれない。しかし、その道を極めた者にとっては「ひらめき」は必要ない。芸術を完成するためにしなければならないことは沢山あって、「ひらめき」だけで片付けるのは無理な話です。私はアイデアが湧きすぎて、創りきれないくらいです。

質問者:作品を創る情熱を助ける日常生活の極意とか、信条があったら教えてくれませんか。

朱 銘氏:毎日忙しくしていて、たまには自分でお茶を入れて飲むぐらいの余裕は欲しいですが、実際のところ早寝早起き、寝る時間と食事以外はほとんど創作に使っていますね。取材や接待も避けて、ひたすら創作に専念する毎日。仕事のために生まれたと、自分では思っています。

質問者:これからの制作のテーマは。

朱 銘氏:「三軍(軍隊)シリーズ」「警察シリーズ」の次は、「科学者シリーズ」を制作中。火薬、羅針盤のような中国の四大発明を生み出した偉大な科学者達について、顔を思い浮かべられますか? はっきりイメージできないでしょう。だからこそ形を与えて、子供が親しみ、人類の偉業を振り返るようにせねばと。作りたいものは尽きません。SARS発生の時、危険を顧みず流行を食い止めるために闘った沢山の英雄たち。この姿も彫刻にして留めていかないといけないから「英雄シリーズ」。人間を描こうとすると、キリがありませんね。アイデアが行列して待ってるんですよ(笑)。

2007年芸術・文化賞受賞/金 徳 洙(キム・ドクス)氏

タイトル
躍動する音とリズムの世界
開催日時
2007年9月16日(日)/16:30~18:00
会場
イムズホール
解説
藤井 知昭(国際文化研究所所長)

韓国を代表する伝統芸能家、金徳洙氏による市民フォーラムが9月16日、イムズホールで行われた。

現代に発展する韓国の伝統音楽

県外からの参加者も多かった金徳洙(キム・ドクス)氏によるフォーラム、約320名の参加者が、サムルノリの魅せる『躍動する音とリズムの世界』を堪能した。

チャンゴ・ソロ

この気魄。超絶技巧が打ち出すリズムに神明が宿る。

パンクッ

舞う、叩く、廻る、跳ぶ!これは最早「演奏」ではない。まさに「遊撃(ノリ)」であり「演戯(ノリ)」だ。

伝統舞踊「散調(サンジョ)」

金利恵夫人は高名な舞踏家として知られる。

なお藤井氏より「サムルノリはいわばルネッサンス、民俗芸能の再創造」と解説も行われた。

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

福岡アジア文化賞授賞式の様子や各種イベントのレポートを含めた2007年度の事業報告書を、PDF形式でダウンロードいただけます。

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各種イベントレポート

2007年度の市民フォーラム以外のイベントレポートをご覧いただけます。