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2010年授賞式レポート

2010年(第21回)福岡アジア文化賞授賞式

2010年(第21回)福岡アジア文化賞授賞式
開催日時
2010年9月16日(木)/18:20~20:00(途中休憩あり)
会場
福岡国際会議場(福岡県福岡市博多区石城町2-1/092-262-4111)
司会
檀ふみ

秋篠宮同妃両殿下の御臨席を賜り、市民や各国、各界関係者など約1,000人が参加して授賞式が開かれました。厳粛な雰囲気に包まれた第1部では、あでやか な和服姿の筑紫女学園大学アジア文化学科の学生にエスコートされながら受賞者が登壇。吉田宏福岡市長と鎌田迪貞よかトピア記念国際財団理事長から賞状とメ ダルが贈られました。受賞者は受賞の喜びや福岡市民へのメッセージを込めてそれぞれスピーチ。最後は福岡インターナショナルスクールの子どもたちから花束 が贈呈され、盛大な拍手に包まれました。

第2部では司会の女優・檀ふみさんと受賞者が和やかに対談。幼いころに興味を持っていたことや、今大切にしている時間など素顔に迫る質問に、各受賞 者の意外な一面や共通点が浮かび上がりました。対談後は、市民代表の河原抄子さんが祝福の言葉を贈り、エンディングではカヤグムの演奏(大賞の黄秉冀氏作 曲「夜の声」)で受賞者を祝福しました。

賞状とメダルを授与される受賞者
賞状とメダルを授与される受賞者
受賞者4名でのフリートーク
受賞者4名でのフリートーク
司会の檀ふみさんと
司会の檀ふみさんと

秋篠宮殿下のお言葉

アジアには多様な風土がつくり出し、長い歴史の中で育んできた各地域固有の文化が息づいています。私自身、アジアを旅するおり、その深さや豊かさに感銘を 受けるとともに、それらを保存し、継承していくことが大切であるとよく感じます。このような時代にあって、福岡アジア文化賞はアジアの固有で多様な文化の 保存と継承、そして創造に貢献するものであり、大変意義深いものと考えます。本日受賞される方々の優れた業績は、この時代に生きる人々のみならず、次の時 代の人々とも共有する人類の貴重な財産になるのではないかと思います。

大賞/黄秉冀(ファン・ビョンギ)氏による受賞者スピーチ

黄 秉 冀(ファン・ビョンギ)氏授賞式スピーチ

私は1951年にカヤグムを習い始め、62年からは伝統音楽の継承にとどまらず、新しい作品を作曲し始めました。74年の「沈香舞」(チムヒャン ム)という作品からはアジアに視野を広げた創作を始め、国際的にも受け入れられています。カヤグムを始めた当時は、韓国人ですら自国の伝統音楽に関心を持 たず西洋音楽を愛好した時代でしたが、次第に国内でその価値を再発見しようとする機運が高まり、国際的にも民族固有の伝統文化の重要性が注目され始めまし た。

真の世界的な文化とは、画一化よりも、多様な伝統文化が花咲く時に成し遂げられることが、世界的に認識されています。 「福岡アジア文化賞」は、アジア文化はもちろん、世界文化の向上に大きく寄与しています。この国際的な賞を受賞できて、とても光栄に思います。

学術研究賞/ジェームズ・C・スコット氏による受賞者スピーチ

ジェームズ・C・スコット氏による授賞式でのスピーチ

アジアの芸術や学問への貢献に対し、福岡市ほど具体的な形で評価を示す都市を、私はほかに知りません。私は、そんな市民や行政の皆さまに敬服するととも に、歴代の著名な受賞者と同じ栄誉に浴することができ、誇りに思います。

私はこれまで、エリート層以外の人々の価値観、行動様式、市民生活を理解し、民衆の生存と名誉を守るための闘いを特徴づける、しばしば静かで控えめな抵 抗の形態を特定しようと努めてきました。マレーシアやインドネシア、近年はビルマ(ミャンマー)の政治史を研究しています。

この半世紀、ビルマの人々は圧 制的な軍事政権下で暮らしており、軍事政権は2世代以上にわたって人々の生活機会を打ち砕いてきました。一般のビルマ人は、静かにそして頑強に、自分たち の名誉を奪う軍事政権に抵抗しています。ビルマの人々の苦難が終わりに近づくことを願っています。

学術研究賞/毛里和子氏による受賞者スピーチ

毛里和子氏による授賞式でのスピーチ

この賞はこれまで、日本が世界に誇る知性、アジア地域研究の世界的人材、私が尊敬してやまない諸先輩が受賞されており、今回、敬愛なるジェームズ・C・スコット教授とご一緒する栄誉に浴することができ、その学問的重みに圧倒されます。

現 代中国・アジア研究にかかわって40年以上ですが、対象の中国はまことに強敵・難敵で、いまだ核心を捉えたという域には至っていません。中国を社会科学の 対象としてできるだけ客観化しようと「中国政治社会は二元構造ではなく三元構造だ」「現代アジアとの比較研究が地平を切り拓く」「制度主義による接近が有 効だ」という「三つの挑戦」の最中です。

今回の受賞は、これまでの研究に対する“ご褒美”というよりも、研究がまだ足りないから一層頑張りなさい、日本の 中国・アジア研究をどんどん国際的に発信しなさい、という激励をいただいたと考えています。

芸術・文化賞/オン・ケンセン氏による受賞者スピーチ

オン・ケンセン氏による授賞式でのスピーチ

私が所属する劇団「シアターワークス」は、1995年以来、アジアの芸術家とともに、多様なアジアの芸術や言語が共存する舞台を創り上げてきました。また、からゆきさんをはじめ様々なアジアの記憶を発掘し、アジアにおける移住の隠された歴史を明らかにするなど、伝統と近代の不確かな関係性を作品に映し出してきました。

私たちは、戦争などの難しい問題や様々な考え方から、目を背けてはきませんでした。いつの時代も、芸術は社会や政治を映し出す鏡だと思っています。生物学的持続可能性が議論にあがっている今、芸術と文化が、どのように社会や人類を支え、この冷笑的な時代の理想主義や希望を支え続けてきたかを、思い出すことが必要だと思います。

福岡アジア文化賞は、芸術と文化の意義を立ち止まって考えさせてくれる理想的な賞であり、都市の垣根を越えて、その影響は福岡から世界に広がっていくでしょう。私はこの賞を受賞したことに感謝し、それを可能にしてくれた皆さまにお礼を申し上げます。

受賞者と司会・檀ふみ氏による対談

---まずは、幼少期について。子供の頃に興味があったことは?
オン氏:本ですね。想像の世界へ連れていってくれる本が大好きでした。
毛里氏:その頃は、すごくお腹が空いている時代でしたから。おいしい物が食べたいと常に思っていたように思います(笑)
スコット氏:幼少の頃は、行いが悪くケンカばかりしていました。学校生活がうまくいかず、毎日先生に叱られる心配ばかりしていました。
ファン氏:3年生頃までは勉強がまったくダメでした。落第しそうになった私に、親戚のおじさんが勉強を教えてくれて・・・おかげで4年生の1学期には優等生になっていましたよ。音楽部に入ったのはその頃ですね。
オン氏:僕も優等生だったよ!(笑)
毛里氏:何になろうか等は、まだ考えていませんでした。高校生の頃は弁護士になりたかったが、父からは英文科か家政科へ行けと言われていました。
スコット氏:ちょうど10歳のとき、父親が亡くなりました。突然大人にならなければなりませんでしたし、環境も大きく変わりました。もしそうでなかったら、スポーツ選手になりたかったですね。
---現在の道にすすんだ“きっかけ”は?
ファン氏:釜山に疎開していたんですが、そこにカヤグムを弾くご老人がいて。その人から教えてもらいました。ただ音楽の道にそのまま入ったのではなく、大学は法学部へ行きました。両親を説得するためですね。
スコット氏:私もハーバードの法科大学院へ進みました。でも、それは何がやりたいのかはっきりわからなかったので、時間稼ぎという意味が大きかったように思います。
毛里氏:若い頃は、毎日やりたいことが変わっていました。映画関係に就こうか、はたまた相撲評論家か・・・とにかくコロコロ変わってました。ただ中国はずっと不思議な国だなぁと興味は持ち続けていました。そして、30歳くらいのときでしょうか、この摩訶不思議な国を明らかにしたいと思ったのは。当時は、中国研究などといったら、すごく変わっている人がやることだったので(笑)
檀:では、周りからは、すごく変わった人と思われていたのでは?(笑)
毛里氏:きっと、そうでしょうね(笑)
オン氏:私も法学部出身です。弁護士事務所で10日間ほど働いたことはあったのですが、性に合わずすぐ辞めてしまった(笑)その後演劇の世界に入りました。
---専門分野を離れて、大切にしている時間は?
オン氏:友人と過ごす時間でしょうか。自分の舞台に出演してくれた、世界中にいる大勢の演劇仲間に会うことが、自分にとってとても大切な時間です。
ファン氏:韓国のことわざで『70歳を過ぎたら、何をやっても問題なし』というのがあります。自分も70歳を過ぎたので、何をしてやろうか、と今悩んでいます(笑)
スコット氏:まずは家族と過ごす時間ですね。それ以外だったら、新しいことをやることが大好きなので学生のプロジェクトを手伝ったり、ビルマ語を習ったりしている時間でしょうか。楽器を弾くのも好きですね。とにかく新しいことにチャレンジするのは楽しいことです。
檀:それでは、韓国へ行って、カヤグムを習うのはどうですか?
スコット:それもいいですね(笑)
毛里氏:私も新しい言語を習いたいと思っています。先週、仕事でロシアに行く機会があったので、ロシア語をもう一度習い始めたんですよ。語学というよりツールとして習うと上達も早く楽しいですね。

受賞者と司会の檀ふみさんとの対談は、終始笑いに包まれた楽しいものになりました。檀さんの巧みな話術により各受賞者の意外な一面が浮かび上がり、とても興味深いものでした。それにしても、みな法学部出身で、今現在新しい言語の習得に意欲がある・・・という共通点はおもしろいですね。

2010年(第21回)福岡アジア文化賞祝賀会

授賞式後に関係者が集まって開かれた祝賀会は、くつろいだ雰囲気の中ですすみました。シンガポール共和国大使館のローレンス・ベイ臨時代理大使が祝辞をのべ、各国の代表者や福岡の参列者とともに受賞者の功績をたたえました。

受賞を祝して乾杯
受賞を祝して乾杯
会場に溢れるお祝いムード
互いに受賞を喜ぶ受賞者4名

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

福岡アジア文化賞授賞式の様子や各種イベントのレポートを含めた2010年度の事業報告書を、PDF形式でダウンロードいただけます。

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各種イベントレポート

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