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2011年学校訪問レポート

2011年大賞受賞/アン・チュリアン氏

アン・チュリアン氏による学校訪問
開催日時
2011年9月16日(金)/13:30~16:00
会場
福岡県立城南高等学校
参加
800人(1・2年生)

世界的に名を知られた、カンボジアを代表する民族学者であるアン・チュリアン氏が、福岡県立城南高等学校を訪問。「カンボジア人によるカンボジア研究」の立場から1、2年生に向けた講演を行いました。

約800人の生徒たちを前にして、「こんなに多くの方の前で話すのは初めてです」と少しはにかみながら講演を始めたアン氏。自分の体験をもとに、ゆっくりと生徒に語りかけました。

“自分自身をつくりあげること。そのひとつ、ひとつが国の力に”

フランス統治下の影響が残るなか、母国語ではなくフランス語で教育を受けた自身の経験を紹介し、母国語で自国文化を学ぶことの意義を語り、自国の言語や文化にもっと敬意を払うべきだと訴えました。

自国の文化を母国語で学ぶことができるという一見当たり前のことが、どれだけ幸運なことか、フランスの植民地だったカンボジアにおいては、自国の文化を勉強するときでさえもフランス語を使わなければならなかったという話に、多くの生徒たちは信じられないという表情で聴き入っていました。

また、生徒との質疑応答では「私たちが未来のためにできることは何でしょう」という問いに対し、「まずは自分自身をつくり固めること。そのひとつずつが国の力となるのです」と力強く答えられました。

講演後は多くの生徒たちが、世界の現状や自分たちの恵まれた環境を知り、改めて自国の文化に誇りをもって大切にしていきたいと語ってくれました。生徒代表から花束を受け取ったアン氏は、これからの社会のために自分たちができることは何かを生徒たちに託され城南高校を後にされました。

生徒からの質問に答えるアン氏
生徒からの質問に答えるアン氏
生徒に自身の経験を語るアン氏
生徒に自身の経験を語るアン氏
生徒からの花束贈呈
生徒からの花束贈呈

生徒による講演会後の感想

  • 私はカンボジアがフランスの支配下にあったことを初めて知りました。自分の国への思いを大切にし続けることは容易ではなかったと思うのに、ずっと研究していたのはすごいと思いました。フランスに支配されていた時にカンボジアの文化が失われなかったことが民族が死ななかった理由になると思います。文化の死は民族の死に直結すると思うから、たとえフランス語で学ぶことになっても続けることは大切で、今私たちは母国語を自由に話せる幸福さに気付くべきだと感じました。そして、自分の国の文化に誇りをもって大切にし発信していかなければいけないと思いました。
  • 今日は、めったにない貴重な先生の話が聞けたのでよかったです。先生の話を聞いて、今の私たちは幸せな状況であるということに初めて気が付きました。他の国と比べて何不自由なく暮らしていけているということは、日常のなかでは気付くことはできません。しかし、先生がいわれたように距離をとって客観的に自分たちの生活を見てみると分かるのだろうと主追いました。そして、今自分たちにできることをしっかりとやっていきたいと思いました。
  • 先生の話を聞いて、自分たちが小さい頃から日本語の本を読んだり、今現在日本語で勉強できていることを幸せだと感じました。世界のいろいろなことに興味関心を持ち、自国を大切にすることは大事なことだと分かりました。先生はフランスへ行ったことでカンボジアの状況や、自国語の大切さが分かったとおっしゃっていました。私も一度日本を離れて、世界のことをもって学ぶことで、日本についてもっと理解し、よりよい日本にできるかなと思いました。

2011年学術研究賞受賞/趙 東 一(チョ・ドンイル)氏

趙 東 一(チョ・ドンイル)氏による学校訪問
開催日時
2011年9月16日(金)/15:40~17:10
会場
福岡県立修猷館高等学校
参加
1、2年生を中心とした100人

韓国を代表する国文学者である趙東一氏が、修猷館高校を訪問、生徒100人の前で講演会を行いました。自らの人生について、学生時代の思い出や影響を与えた人物、今の分野に進んだきっかけなどをお話いただきました。

“学問は、旅することと同じ。たくさん歩き、たくさん経験を”

文学史研究と同様、チョ氏が長年続けてこられた小説、詩、絵画創作活動のなかで、自身が描いた絵をスライドを使って紹介。文学と美術の関係について、また東アジアの現代美術と伝統芸術との関係についてお話しをされました。

そのなかで、もともと志していた絵画の道をあきらめ、大学から韓国文学の研究に取り組んだという自身の経験を披露。講演後、生徒から「美術が選べなかったことを後悔していないか」との問いかけに対し、「これからたくさん描けばいい。後悔の念はありません」と力強く回答された。

最後に「たくさん歩き、たくさん見てほしい。その機会を高校生の時から積極的に作ってください」とエールを送られチョ氏。若い世代へのメッセージを語っていただくことで、時代を担う青少年が直接世界の知性に触れ、異なる文化や歴史、生き方を学び、世界に目を向けるきっかけとなったことでしょう。

講演を行うチョ氏と聴き入る生徒
講演を行うチョ氏と聴き入る生徒
生徒を前に自身の経験を語るチョ氏
生徒を前に自身の経験を語るチョ氏
修猷館高校・中嶋館長と
修猷館高校・中嶋館長と

生徒による講演会後の感想

  • 絵画にも流行とか傾向があって何でも西洋化していることを初めて知った。確かに最近見る絵はどれも同じような似かよったものばかりだった。先生がおっしゃったように自然を見て何か感じとることがすごく大事だと思う。私も絵は描かないかもしれないけれど山を登ってみたり川を訪れてみたりして「精神のゴミ」を捨てたいと思います。先生はたくさんの著書を書かれてお仕事を退任なさった後自分のしたいことをしていらっしゃって充実した人生で羨ましく感じた。私も充実した人生をおくれるよう目の前のことに集中したい。
  • 「芸術」というとなんだかとても難しそうなものというイメージがありました。私には、絵心や表現力がないからです。しかし、話の中で、人に認められなくても、自分の事をのびのびと表現することについて教えていただきました。「絵心がない」ということを真っ先に考えていたのは人に見てもらって誉めてもらいたいからという気持ちがあったからかも知れません。人に認められることだけを考えるのではなく、のびのびと何か私もやっていけたらいいなと思いました。
  • 東アジア圏の人々の精神のよりどころが共通しているというのが印象的だった。また、ヨーロッパと対照的なのも文化の違いなんだろうなと思った。何より今回、生の韓国語が聞けたのがよかった。今回は文学・美術が中心的な講演だったので、機会があれば次回は音楽について聞いてみたい。
  • 趙先生が賞を受賞するまでの経歴にとても驚きました。先生は全く異なっているものに興味をもっていながら、それらを同時に極めようとしていたからです。それは本当にすごいことだと思います。自分で簡単にあきらめず、極める努力をしていきたいと思います。今回の講演で思いがけず自分の将来についても深く考えることができて本当に良かったと思いました。また、先生の絵にもとても感動しました。東アジア文化の特徴がはっきりと表れていて改めて素晴らしい文化だと思えました。今まで西洋画ばかりを鑑賞していたので、これからは東アジアの絵もたくさん鑑賞したいと思います。

2011年芸術・文化賞受賞/ニールズ・グッチョウ氏

グッチョウ氏学校訪問
開催日時
2011年9月16日(金)/14:00~15:30
会場
福岡雙葉中学・高校
参加
全校生徒1,300人

歴史的建造物の保存・修復と再生に対して建築史家・修復建築家として大きな貢献を果たしてきたニールズ・グッチョウ氏が、福岡雙葉中学校・高等学校を訪問。1,300名の全校生徒を前に講演会を行いました。

“若い今こそ、広い世界を知り、自分自身で体験を”

ドイツ語・英語による生徒の司会進行で始まった講演会は、グッチョウ氏の人柄をそのままに笑いに溢れるあたたかな雰囲気で進みました。

高校を卒業してからミャンマーへ行き僧の修行をしたり、日本で宮大工として働くなど、これまでの様々な人生経験について語り、広い世界を知ることや、自分自身で経験することの重要性を熱く話されました。また、新しい世界に入ったら徹底的にその世界を楽しむこと、人間同士の触れ合いの面白さを生徒たちに伝えました。

「若いときに、いろいろな国を見てほしい。そこの土地に行ったら抵抗するのではなく、その土地のやり方をまずはやってみること。」と自身の経験をもとに語られたグッチョウ氏。質疑応答では、時間内に収まらないほど生徒たちの質問が集中。そのひとつひとつに丁寧に真摯に応えられている姿がとても印象的でした。

世界各国を渡り歩き様々な国の方々と仕事をともにされてきたグッチョウ氏の言葉は、これからのグローバル社会をすすんでいく生徒たちにとって大きな糧と なっていくことでしょう。講演会が終わってからも、グッチョウ氏の控室には話を聞きたい生徒たちが押し寄せ、いつまでもにぎやかな交流が続いていました。

学校訪問にて熱く語るグッチョウ氏
学校訪問にて熱く語るグッチョウ氏
生徒からの質問に笑顔で答えるグッチョウ氏
生徒からの質問に笑顔で答えるグッチョウ氏
生徒から花束を受取るグッチョウ氏
生徒から花束を受取るグッチョウ氏

生徒による講演会後の感想

  • 外国語での講話は初めてで、日本語訳を聴きとるのに精一杯でした。建築はデザインの才能やセンス、バランス、計算の積み重ねで行われるものだと思っていましたが、グッチョウ先生は「信頼や儀式が最も必要だと思います」とおっしゃっていて驚きました。建築するにあたって、やはり偏見が作業、信頼、計画の妨げとなってしまうようです。 この問題は、私達でも同じように考えるべきだけど、グッチョウ先生のおっしゃるように「心を広くもち、自分とは違ういろいろな方向から見た考え方を大切にしていくこと」をこれからもずっと課題にしていくことだと感じました。 デザインは、テーマや形にこだわらず、自分の心の中を自分自身で見つめ、それをどのように生かしてうまく描き出せるかが大切なのだそうです。自分の思いを色や形で表現し、次にそれを実物へとつくり出せることは、すごく楽しそうでとても興味深かったです。グッチョウ先生は、多国のすばらしいデザインの家具を集め使うことが多いとおっしゃっていました。一つの場で、多くの考えが生まれるというグッチョウ先生の言葉がすごく心に残っています。 最後の質問の時におっしゃっていた、ネパールでの震災の話で、復興まで30年以上かかり、今でもそのあとが残っているところもあると知ってとても驚きました。日本でも、東北の震災から復興まで何世代もかかるかもしれないけど、日本中で一つになって協力していけたらいいなと感じました。
  • 今回のお話、とても感動しました。なぜだかはよく分からないのですが、グッチョウ先生の発する言葉の端々から見うけられる彼の人格にとても感動しました。彼の生きざまについてのお話でしたが、2つのことが心に残りました。 1つ目は「新しい世界に入ったら、徹底的にその世界をあじわう」ということです。お話ではグッチョウ先生が日本に来て大工といっぱいお酒を飲んだという場面でした。「自分で自分に限界をつくらない」というのは、部活で石井先生もよくおっしゃるのですが、改めて大切なのだと思いました。そういう意味では、アイルランドに高1で行った時向こうの生活を満喫できたのかな、とも思いました。(3kg太って帰ってはきましたが) 2つ目は、とにかく自分の目で見て自分の手で触れる、というようなリアルな体験が大切だということです。今回の講演で、あえてグッチョウ先生が自分の今までの人生について語られたのは、それを伝えたかったからなのかなと思います。「その人と会話をしなければその人自身を知ることはできない」という質問の時間の先生の言葉を聞いて、そのリアルな体験が時間をいとわない心構えがグッチョウ先生の人生を豊かなものにしたのだと思いました。何か新しいもの、何か新しい場所、何か新しい環境を求めて追求することの大切さを学びました。
  • 今回の講演会では様々な貴重な写真を見ることができました。ネパールの光景は、ニューヨークやロンドンの町並みのようにテレビなどでもあまり見ることがないので面白かったです。 グッチョウ氏が自分のことを、ドイツ人でも日本人でも何人でもないと話されていたのを聞いて考えさせられました。国境など考えずにこの1つの世界の一員だと捉えているところに、自分ならそのように考えることができるだろうかと思いました。 また、グッチョウ氏の家族の写真が出てきた時に、お兄さんが戦争に行っているということでしたが、その時にグッチョウ氏が戦争はいけないなどのコメントをしなかったので、私には逆にその時とても戦争について考えさせられました。誰もが様々なことを経験し、いろいろな壁と向き合う中で日々成長し、生き延びてきていると思いました。ネパールの家族写真の中には、一緒にお仕事をしている方もいらっしゃいました。自分の生涯の中で本当の家族ではなくても家族と呼ぶことのできるような、そんな人に出会えたらうれしいです。 日本よりも他国の方がもっと隣人との距離を狭く生きているように感じました。東日本大震災の復興に向けて人々が助け合い、「つながり」を結んでいっている中で、私達一人一人が自分にどうあるべきかを考えて過ごしていくことが大切だと考えさせられました。

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

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各種イベントレポート

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