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2012年その他イベントレポート

2012年大賞受賞/ヴァンダナ・シヴァ氏

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開催日時
2012年9月10日(月)/16:00~18:00
会場
九州大学箱崎キャンパス教育学部
参加
インド研究者やアジア女性交流研究者など約15名

シヴァ氏の文化サロンは、九州大学箱崎キャンパスにて、インドの教育人類学や教育史、インド哲学やアジア女性交流研究者など約15名が集まりました。

シヴァ氏による講演および質疑応答

現在インドで起こっている問題に関連した平和的反対運動について
タミルナードゥ州クダンクラム原子力発電コンビナート建設への平和的反対運動
ナルマダーダム建設反対運動
この数十年におけるインドの劇的な変化の背景
富の蓄積を目的とした自然の支配と家父長制度が組み合わさって生まれた「資本主義家父長制度(Capitalism Patriarchy)」
グローバル化・資源の私有化
「緑の革命」の繁栄の理念と裏腹に、農民にもたらされた現実
物理学者であったシヴァ氏が、弱者の人権を守る活動家としてシフトしていった経緯、影響を与えた出来事
チプコ運動
ナヴダニアの設立
1984年のパンジャブの動乱
ボパール化学工場での事故
今後の取り組み
多様性を生み出すために、既存の組織や枠組みだけに頼るところから抜け出すこと、分散化すること
人々・資源を使い捨てにする社会から、地球を中心とした女性や子供など弱者のための社会へのシフトすること
生活のあらゆる側面が商品化されているこの時代、政策の二枚舌に惑わされず、常に現実を見ること
大きな思想(Big concept)と小さな実践(Very Small Step)を実行すること
現在の代表制民主主義とは異なるアースデモクラシーのもとで、個人の失われた多様性のあるアイデンティティを取り戻すこと

 

講演後も、インドのエネルギー政策に関連したインド女性の考えや、個人のアイデンティティや教育についてなど、様々な質疑応答が繰り広げられ、熱い議論が交わされました。

熱く持論を語るシヴァさん
熱く持論を語るシヴァさん
シヴァさん文化サロンの様子
シヴァさん文化サロンの様子
シヴァさんの話を熱心に聴き入る参加者
シヴァさんの話を熱心に聴き入る参加者

2012年学術研究賞受賞/チャーンウィット・カセートシリ氏

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開催日時
2012年9月15日(土)/10:30~18:00
会場
福岡市立博物館講座室
参加
東南アジア研究者など約15名

チャーンウィット氏の文化サロンは、福岡市博物館で開催の「能のかたち」展覧会のテープカットから始まりました。その後同講座室にて東南アジア研究者など約10人が集まり、自身の研究発表を交えながら行われました。

東南アジア研究者3名による研究発表

  1. 「ゴ・ディン・ジェム政権にみる国家建設:宗教政策を通して」
    北澤直宏氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)
  2. 「バンコクの城壁を壊す人々:19世紀末の公的な破壊と20世紀初頭の私的な破壊」
    岩城考信氏(法政大学デザイン工学部・教育技術員)
  3. 「<シャム-美術>の模索:ラーマ6世王治世期における展覧会・史跡調査・美術史叙述」
    日向伸介氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程/日本学術振興会特別研究員)

チャーンウィット氏による講演および全体での意見交換

北澤氏、岩城氏、日向氏による研究発表後、チャーンウィット氏によるアユタヤ研究について拝聴し、最後は質疑応答を含めた意見交換が行われました。

そこでは、国王を神と見なしていたかについて、近年のカンボジア史研究の成果と、旧来の研究に基づくタイの通説との食い違いや、アユタヤが歴史的に交易で果たしてきた役割と、現代におけるバンコクの、国際流通ハブ都市としての役割との比較など、興味深い内容で熱い議論が繰り広げられました。

また、近年の日本史研究の成果として、日本の鎖国を、物流や情報の流入が続いていたことを重視し“鎖国”ではなく“海禁”と捉えるべきだ、などという新しい見解も披露されました。

文化サロンの様子
文化サロンの様子
笑顔で応えるチャーンウィット氏
笑顔で応えるチャーンウィット氏
サロン終了後も続く議論
サロン終了後も続く議論

2012年芸術・文化賞受賞/キドラット・タヒミック氏

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テーマ
「ヴァナキュラーな文化とグローバリズム」
開催日時
2012年9月15日(土)/17:00~18:30
会場
福岡アジア美術館7F彫刻ラウンジ
参加
映像、インスタレーションに興味をもつ福岡市民など約30名

福岡アジア美術館の彫刻ラウンジに、リラックスした様子で車座になる参加者たち。みなが床に座り膝をつき合わせる形で行われた文化サロンは、山口吉則氏(福岡ユネスコ協会事務局長)を司会進行にお迎えして、石坂健治氏(東京国際映画祭アジア部門ディレクター)にもパネリストとしてご参加いただきました。

文化のグローバリゼーションにのまれるな

salon3-middle2.jpgグローバリゼーションは、私の人生の早い時期に既に始まっていました。以来、私はもつれた糸を解すようなカタチで、文化を批判的に見るやり方をしてきました。経済の面でも文化の面でも、私にとっては、グローバリゼーション=アメリカナイズのイメージです。バギオの土着民の文化が破壊されていく光景を、早い時期に見てきました。男の地元民は大抵はフンドシ姿だったのですが、アメリカ人のようにズボンをはき、それが快適だと言うようになったのです。

ハリウッドに代表されるように、文化のグローバリゼーションは大きな力を持っています。今回持参したバンブーカメラは、比喩的な意味ですが、土着の人が土着の目でいろんなものを映し出すことを表現しています。地元の行事や暮らし、出来事を自分の目で見て、伝えていこうということです。もう1つ、グローバリゼーションを表現したものとして、イフガオの台風の女神と、これに対峙する存在としてのハリウッドの風の女神(マリリン・モンロー)です。この女神のスカートはめくれ上がっています。この女神は世界中のあらゆる村に影響を与えているのです。

その土地固有の文化が、流入してきたグローバル文化の下位に置かれてしまう状況が続いています。これまで、私たちの社会では古老や長老が自分たちの歴史や文化、考え方や行いの基準を、若い世代に伝えていく役割を持っていました。しかし、こうした役割がTVや映画に取って代わられ、若者たちは古老や長老の言うことに耳を貸さ なくなりました。これは、まさしく文化の第三次世界大戦ではないでしょうか。

タヒミック氏との意見交換:新作「サム・モア・ライス」をみて

現在制作中の「サム・モア・ライス」は、新潟に住む老農夫の稲作作業・日常と、イフガオの稲作作業・棚田の風景が交錯する映像のなかに、黒澤明監督の「七人の侍」が随所に挿入される編集が光る作品

salon3-middle1.jpgタヒミック氏:いまの新潟の問題を告発するのではなく、生活の一部として撮影し、生活を見つめ直す契機とすることで、映像にさらなる広がりが生まれ、世界へのメッセージになると考えています。

市民:タヒミック監督の作品を見て、生活に密着したものを撮っていくんだ、それでいいんだ、という勇気をもらいました。監督は何度か福岡にお越しですが、東京と違うと感じられるのは、どのようなところですか?

タヒミック氏:福岡はとてもフレンドリーな印象です。東京はビッグシティですが、福岡にはゆったりとした気分が流れていると感じます。私は棚田を探してあちこち巡っていますが、ここ福岡にも素晴らしい棚田があるということですか、明日にも映像に収めようと思っています。

この作品で表現したかったことは、新潟の農村とイフガオに共通する、よく似た生活や作業風景です。尊敬する黒澤明監督の「七人の侍」に出てくる野武士は、ウォールストリートを闊歩する銀行家や投資家になぞらえられます。あらゆる物品の価格を操作し世界を牛耳る彼らは、盗賊のような存在といえます。

石坂氏:市民フォーラムでもご紹介した「マゼラン」は現在、未完成で進行形ですが、2022年にはマゼラン世界一周500周年を迎え、世界中が祝うことでしょう。このときタヒミックさんが演じる主人公は、ハリウッドの象徴であるモニュメントバレーをはじめとする世界各地に、イフガオの木彫り像をフンドシ姿で置いていくことでしょう。世界の辺境からグローバリゼーションへの対抗軸をアピールしていくプランを練っているようです。

山口氏:大江健三郎氏が黒澤作品とタヒミック作品について、どちらも風が入ってくるよう窓が開かれていると表現していますね。

タヒミック氏:若い映像作家がウケることを考えて、ハリウッドのDNA要素を作品に散りばめても意味のない映画となってしまいます。魂の底から伝えたいメッセージがあれば、どこの国の人にも受け入れられ、共感されるはすです。私は常に闘っていますが、窓を開けておくことは忘れないようにしています。

司会進行の山口吉則氏
司会進行の山口吉則氏
みんなでCHEESE!
みんなでCHEESE!
市民からの質問に答えるタヒミック氏
市民からの質問に答えるタヒミック氏

2012年芸術・文化賞受賞/クス・ムルティア・パク・ブウォノ氏

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開催日時
2012年9月16日(日)/10:00~11:30
会場
九州国立博物館1階ミュージアムホール
参加
ガムラン演奏グループ、市民のみなさま約60名

通常、市民の皆様には公開されてない文化サロンですが、今回はガムラン演奏や舞踊の実演もあるということで、特別に完全OPENで行われました。田村史子氏(筑紫女学園大学准教授)をナビゲーターにお迎えして、日本とインドネシアの演奏家たちによるガムラン音楽の実演や、市民のみなさまも参加してのワークショップを通じて、両国の文化交流を深める場になりました。

“ガムランは伝統文化であるだけでなく、生活に密着した存在”

salon4-middle1.jpgステージ場では開会前から演奏がはじまり、おどけて踊る男性演奏家や、GパンとTシャツ姿で練習をする舞踊団の少女など、市民フォーラムとは、また違ったゆるやかな雰囲気です。ガムラン音楽の生演奏がBGMとして流れるなか、ガムラン音楽と王宮、また宮廷舞踊との密接なつながりについてお話いただきました。

王宮では常にガムランが流れており、演奏曲は儀礼ごとに決まっているため、演奏の音を聞けば、何の儀礼がどこまで進んでいるのかが分かるそう。演奏は、宮廷儀礼そのものに組み込まれているため、月曜日は週のはじまりの儀礼、火・水曜日は女性の練習日、木曜日は閣議の演奏、そして土曜日には違うセットの楽器で特別なガムランが流れるそうです。

現在ももちろん続いているため、ソロの町へ行けば、王宮の高台で演奏されるガムランの音色を、毎週土曜日の夕方4時から聞くことができるといいます。また、1年に1度のモハマッドの誕生祭には、モスクの中庭で1週間続けて朝10時から夜中の12時まで、特別なガムランが演奏されるとのことです。

また、宮廷舞踊にもガムランは欠かせないものです。宮廷舞踊が踊られる際には、必ずガムランの曲が流れます。ガムランには詩がつけられ、それに踊りの動きを合わせていきますが、ガムランの4拍のリズムに常に踊りが対応しています。王家の舞踊には9人で踊るブドヨと、4人で踊るスリンピがあります。1年に1度だけ踊る神聖な舞踊もあります。そのどれにもガムランは欠かせません。

市民からの質問に直接答える質疑応答

---市民:髪型や、腰に巻く布の色には、何か意味がありますか?
ムルティア氏:王家の儀礼でつける、形の決まった特別なカツラを着けます。飾りの布は未婚者は薄い緑、既婚者は濃い緑かジャスミンの花を着けます。
腰布はサンポルと呼びますが、王宮内では緑、黄、青などを使い分けます。基本的に濃い色は王族のみに許され、他の人は薄い色のものを着けます。
---市民:手首や腕の動きには意味がありますか?何か型があるように見えますが。
ムルティア氏:手足の動き、体の構えなど、一連の動きに意味があります。例えば、外から入って来るものを防ぎ、自分の内から汚れたものを送り出す、というような哲学的な意味があります。
田村氏:ジャワ人にとっての神様は、具体的な1つの神様ではありません。人々は命の源、自分を生み出してくれたものと一体となることを目指して祈りを捧げるのです。
---市民:ジャワ島とバリ島の踊りの違いは、どのような点にありますか?
ムルティア氏:スロカルト王家の舞踊は、基本的に娯楽のためではなく、神への感謝や神と一体となることを目指すものです。そのため、衣装にも動きにも文様にも、すべてイスラムの教えに沿った意味があります。もちろん、バリでは踊りや衣装にヒンドゥー教の意味があるはずです。踊りの動きの面から言えば、バリの方がダイナミックでしょうか。ソロの舞踊では、3m以上、遠くを見てはいけない、お客様の目を見てはいけない、という決まりがあります。2時間ずっと踊り続け、神と一体となることを目指す踊りもあります。

最後は、会場のみなさまも舞台にあがり、演奏者に直接教えてもらいながらの大演奏が始まりました。はじめて会った人同士でも、すぐに一緒に演奏できるというのが、ガムランの大きな魅力でもあります。ガムランの音色が響く、夕闇に染まったソロの街に思いを馳せながら、ゆったりとした気分に浸る1日となりました。

ガムランの指導を受ける市民のみなさま
ガムランの指導を受ける市民のみなさま
司会の田村史子氏とムルティア氏
司会の田村史子氏とムルティア氏
最後はみんな一緒に大演奏会
最後はみんな一緒に大演奏会

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