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2012年学校訪問レポート

2012年大賞受賞/ヴァンダナ・シヴァ氏

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テーマ
「Seed Freedom-What is at stake?」
開催日時
2012年9月14日(金)/14:35~16:30
会場
福岡県立城南高等学校
参加
約100人(1~3年生のうち希望者)

世界的な環境哲学家であるヴァンダナ・シヴァ氏の講演を通して、新しい世界を知ることで、生徒が国際的な視野を広げ、世界に目を向ける機会とすることを目的に、「Seed Freedom-What is at stake?」という題目で講演を行いました。

“私たちも、地球上に生きている生物のひとつ”

school1-middle1.jpg日本はテクノロジーで世界をリードしていますが、私が今日お伝えしたいことは、“地球上に生きているもの”についてです。私たちは、テクノロジーを操るなかで、自分たちも地球上に生きている生物のひとつであることを忘れがちです。私は量子理論で博士号を取得しました。量子学では小さな物質がぶつかり合いながら繋がっていると考えますが、これはエコロジーでも同じです。私がこれを学んだのは、私の故郷であるヒマラヤの森林を見たときです。

20世紀末まで、森は家具や家、紙を作るためのモノであると思われていました。しかし、森林の近くの村に住む、学校に行ったこともない女性たちが、森の大切さに気付き、それを訴え始めました。森林は水資源をもたらし、土が崩れるのを防ぎ、CO2を吸収してクリーンな空気を私たちにもたらしてくれるものだと訴え始めたのです。女性たちは森が自分たちの命である、という認識を持っていたからです。木に抱きついて伐採を止めるという「チプコ運動」が、実際に伐採を阻止するのに役立ったのです。

森林は生物多様性のためのコミュニティの役割も果たしています。たとえば、医療に役立つものがあったり、鳥の成長に役立つものがあったりと、多様な価値が見えてきます。つまり、森の中から種の多様性を見出すことができるのです。みなさんが単一文化というモノカルチャーだけに心をとらわれていると、多様性を理解することはできません。

“自然の再生サイクルを尊重する”

自然の原理は、外から投入されたものを中に取り込み、一定のサイクルで常に再生を行っています。特に驚くようなサイクルは、種子のサイクルの中にも見られます。種子を土の中に埋めると植物が芽生え、やがて何倍もの種子が繰り返し、繰り返し作られていくわけです。水の流れや炭素、窒素にもサイクルがあります。このサイクルを邪魔すると、ゴミのようなものが発生し、最終的にはサイクルが断たれてしまうことになります。

種子が再生を続けることによって、私たちは食料を作ることができます。しかし、貪欲で利益だけを追い求める企業は、遺伝子組み換えで再生できない種子を作り、知的財産権や特許などを利用することで、農家の人々は種子を買わなければならなくなります。企業が利益のために作った再生できない種子は、土や畑、地球、みなさんの食生活にも影響を与えることになります。

そこで私たちは「シードバンク」という団体を立ち上げ、種子を保存する活動を始めました。私たちの祖先が、何世代にもわたる進化の中で残してくれた質の高い種子を無駄にしないことを心がけ、多くの種類を集め保存する活動です。すでに全体で100を超えるシードバンクが創設されています。

“種子を守る活動は、みんなの命を守ること”

school1-middle2.jpgそれぞれの地域で多様性が保たれたのは、気候に適したものを作り、自分たちの食生活に合っているかどうかで、品種改良が進められていったからです。たとえば、インドではパラパラ感のある米が、日本ではやや粘りのある米が好まれています。このように品種は様々に広がっていき、生活の中に根付いていくのです。

品種改良では栄養価も大変に重要です。私たちは生産高を栄養価の面から計ることをはじめています。古くからある品種の栄養価をきちんと計って調べると、現在の品種は重さはあるが栄養価が低下していることが分かったのです。このことは人間の生きることに関する無駄に繋がります。

脂肪分を摂り過ぎるなど、良くない食べものを食べ続けた場合、肥満に苦しむことになります。子どもたちにも大きな影響を与えていますが、7歳で糖尿病になるというような状況さえ生まれています。これもまた、人間の人生を無駄にすることにつながっています。いま20億の人々が肥満と言われています。先進国ではトウモロコシなどの食料がバイオ燃料や家畜の餌になっている一方で、10億の人々が飢餓に苦しんでいるというのが現実なのです。

良くない食品は、食品とは呼べません。私たちが農場で手をかけて育てたもの、私たちに栄養を与えてくれるものこそが、食品と呼べるものです。これこそ「リビング・フード」であり、種子とともに生きる、ということでもあります。私たちはいま「シード・フリーダム」という大きなキャンペーンを行っています。種子を守る活動が、みんなの命を守り、自由を守り、市民の権利を守ることにつながっていくということを知ってください。

“自分たちの未来は自分たちの手でつくる”

最後に、みなさんのように若い人に実践してほしいのは、自分たちが守りたい自由には何があるのか、まずリストアップし、組織を作り、ワークショップを開き、TPP交渉を担当する人々や政府に手紙を書いて、自分たちの活動を知らせることです。みなさんが積極的に自分たちの将来を作り上げる活動を行わない限り、他の誰か、たとえば企業のような存在に決められてしまいます。

自分たちが作りたい将来を目指すとき、何か障害が起こったとしても、決して服従しないでほしいということです。自分たちが作りたい未来に対して、自分自身がきちんと取り組むことによって、自分たちが望まない未来を誰も作ることができなくなるからです。こうすることで、みなさんは愛や自由、責任のある自分の人生を生きることができるのです。人々は団結によって世界を作ってきました。自分たちが決意を持って共同体を作り上げていこうと思っていれば、決意のある共同体を作ることができます。その決意を曲げないでほしいと思います。

笑顔で生徒たちに語りかけるシヴァさん
笑顔で生徒たちに語りかけるシヴァさん
シヴァさんの話に真剣に耳を傾ける生徒たち
シヴァさんの話に真剣に耳を傾ける生徒たち
生徒代表より花束贈呈を受けるシヴァさん
生徒代表より花束贈呈を受けるシヴァさん

2012年学術研究賞受賞/チャーンウィット・カセートシリ氏

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開催日時
2012年9月14日(金)/14:35~16:30
会場
福岡県立福岡中央高等学校
参加
720人(1・2年生)

アジアを代表する歴史学者であるチャーンウィット氏の講演を聞き、異なる文化や歴史、生き方を学ぶことで、生徒が国際的な視野を広げ、世界に目を向ける機会とすることを目的に、「アユタヤから福岡へ愛を込めて」という題目で講演を行いました。

“勉強することは、決して終わりのない物語”

school2-middle1.jpg吹奏楽部によるタイ国歌演奏後、今回のアジア文化賞受賞がきっかけで、福岡が第2の故郷になるかもしれないと嬉しそうに語り始めたチャーンウィット氏。京都のニシンそばが大好きだったが、今回福岡で初めてラーメンを食べて、あまりの美味しさにビックリしたことなど、ユーモアたっぷりに話されました。

そして、タイの田舎から14歳ではじめてバンコクに出たこと、外交官を目指して勉強を続け、ロックフェラー財団の奨学金を得て、アメリカへと留学したこと、またそれにより人生が大きく変わったことなど自身の経験を生徒たちに伝えます。

また、今日のテーマであるアユタヤ王国について、日本との意外なつながりや類似点などを紹介。日本でもよく知られている山田長政についてや、アユタヤの影響を受けたという泡盛の歴史を紹介すると、生徒たちは興味深い様子で聴き入っていました。

そして最後に、生徒たちにこう力強くエールを送られました。

“40年前の1972年、タマサート大学で教鞭を取り、歴史を教えるようになりましたが、もっと勉強しなければと思い、日本にやって来ました。勉強すること、教えることは、決して終わることのない物語のように感じられます。みなさんも学校を卒業しても、ずっと学生であり続けてください。”

様々な経験をし、世界中を飛び回るチャーンウィット氏の生き方は、もうじき人生の大きな転機を迎えるであろう高校生たちにとって、大きなきっかけとなることでしょう。

講演後も、茶室「香蘭亭」にて茶道部による抹茶のおもてなしを受けられたり、筝曲部による琴の演奏を楽しまれたりと、生徒たちとの交流が続いていました。

茶道部からお抹茶のおもてなし
茶道部からお抹茶のおもてなし
福岡中央高校にて講演
福岡中央高校にて講演
生徒と笑顔でハイタッチ
生徒と笑顔でハイタッチ

2012年芸術・文化賞受賞/キドラット・タヒミック氏

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開催日時
2012年9月14日(金)/14:00~15:00
会場
福岡市立笹丘小学校
参加
360人(3~6年生児童)

福岡の学生や生徒、児童のみなさんに、アジアについてもっと知ってもらうため、各受賞者が福岡市内の小中高校を訪れる、この学校訪問。アジアやフィリピンにもっと関心を持ってほしいと願う、芸術・文化賞受賞のタヒミックさんが、ご家族とともに笹丘小学校を訪問しました。

“いろんなことに興味を持てば、もっともっと知りたくなる”

school3-middle1.jpg会場となった笹丘小学校の体育館には、早めに会場入りしたタヒミックさん一家によってセッティングされたインスタレーション展示が並び、入ってきた子どもたちを迎えます。バンブーカメラや竹製の人形、木彫りの風の女神像など、初めてみるアートを前に、目を丸くしながら覗き込みむ子どもたち。

そこへタヒミックさん一家の登場です。イフガオ族のふんどし姿で、様々な楽器を演奏しながら入場してくるタヒミックさんご一行に、子どもたちの目は釘付けに。

“マガダン・ハーポン(こんにちは)”とタガログ語であいさつするタヒミックさんが、お手製のバンブーカメラを構えて子どもたちを撮影する真似をすると、キャーキャーと声をあげながら大喜び!

そんな子どもたちに向けて、タヒミックさんは「みなさんもフィリピンやアジアに、もっともっと関心を 持ってくださいね。よその国を知るために、こんなふうに音楽から入るのも、また服装から興味を持つのもOKです。きっかけは何でもいいんですよ。いろんなことに興味を持てれば、その国のことをもっと知りたいと思うでしょ。」と、アジアについて子どもたちにもっと知ってもらいたい想いを伝えます。

“地元の行事や暮らし、出来事を自分の目で見て、伝えていこう”

楽器の演奏やダンスなど、終始笑い声が絶えないタヒミックさんの学校訪問でしたが「私は、このバンブーカメラで自分たちの地域に昔からあるものを撮り続けています。そのため、このカメラは私にとって、とても大切な意味を持っているんですよ。東京とかニューヨークもいいですが、何か伝えたい!と思うときは、自分たちの住んでいる、地元の行事や暮らし、小さな出来事に目を向けてくださいね。」という、タヒミックさんらしいメッセージも聞かれました。

花束贈呈の後は、笹丘小学校の子どもたちによる合唱が披露されました。この日のために頑張って練習してきたフィリピン民謡「レロン・レロン・シンタ」を元気いっぱい歌いあげると、会場は大きな拍手に包まれました。

最後に「レロン・レロン・シンタ」の歌の意味を、タヒミックさんの奥様から教えてもらい、再度みんなで大合唱することに。最初とは違うアップテンポの伴奏に、子供たちもノリノリで踊りだします。タヒミックさん一家は、全員で楽器を演奏しながら温かい拍手のなか会場を後にしました。

お手製バンブーカメラで撮影の真似
お手製バンブーカメラで撮影の真似
ノリノリで踊るタヒミックさんと子どもたち
ノリノリで踊るタヒミックさんと子どもたち
子どもたちからの花束贈呈
子どもたちからの花束贈呈

2012年芸術・文化賞受賞/クス・ムルティア・パク・ブウォノ氏

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開催日時
2012年9月14日(金)/11:00~12:00
会場
福岡市立草ヶ江小学校
参加
700人(1~6年生児童)

司会進行に田村史子氏(筑紫女学園大学准教授)をお迎えして、ジャワ・スロカルト王家のガムラン音楽と宮廷舞踊を通じて、普段は触れ合う機会の少ないジャワ伝統文化に親しんでもらおうと、芸術・文化賞受賞のムルティア氏および舞踊家、演奏団のみなさんが草ヶ江小学校を訪問しました。

“みんなで歌って、踊って。楽しみながらの文化交流”

school4-middle1.jpg煌びやかな衣装に身を包んだ踊り手や、舞台に並べられた見慣れない楽器に興味しんしんの子どもたち。ムルティア氏の「踊りが好きな人は?」の問いかけに、元気いっぱい手を挙げて応えます。

それぞれのガムラン楽器の音色をひとつずつ説明しながら、実際に子どもたちも参加しての即興セッションも行われました。初めて触る楽器に恐る恐るだった子どもたちも、みんなの手拍子や歌声に乗せられ、次第にテンポをあげていきます。楽器に果物と花をお供えするなど、ジャワの人たちの楽器に対する想いを聞いているので、みな真剣な表情です。

素晴らしいセッションの後は、ムルティアさんを先生に、みんなで宮廷舞踊を踊りました。脚を開いて膝を曲げ、両手を広げ、それから両手の指の親指と中指、薬指をくっつけます。影絵のキツネのように指を形作って、ゆっくりと手首を回すムルティアさんを食い入るように見つめながら、子どもたち全員で、ゆっくりとした演奏に合わせて踊りました。

最後は、ムルティアさんの甥であるスルヨさんによる男性舞踊・クロノ。真っ黒な髭をたくわえ、軽快なリズムの演奏に合わせて、メリハリの利いた動きで踊るスルヨさん。生徒たちの間を割って会場中央の通路に進み、子どもたちに向かってギョロリと目を見開くと、みんな大歓声をあげ、大喜び!

花束贈呈のあと会場を後にする一行を、子どもたちが回りを取り囲んで歓声を上げます。握手を求められ、揉みくちゃにされながら笑顔で応えるムルティアさん一行に、いつまでも熱い拍手が鳴り響いていました。

子どもたちから質問&握手ぜめ
子どもたちから質問&握手ぜめ
あいさつをするムルティア氏
あいさつをするムルティア氏
男の子たちに大人気の男性舞踊
男の子たちに大人気の男性舞踊

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