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2013年授賞式レポート

2013年(第24回)福岡アジア文化賞授賞式

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開催日時
2013年9月12日(木)/18:15~20:00(途中休憩あり)
会場
アクロス福岡1F 福岡シンフォニーホール(福岡市中央区天神)
司会
ジュディ・オング

第24回福岡アジア文化賞の授賞式は、秋篠宮同妃両殿下の御臨席を賜り、市民をはじめ各国の来賓、各界関係者などが一堂に会して開催され、受賞者の栄誉を讃えました。

今年の授賞式は、韓国のオペラ歌手、チョン・セフン氏の独唱という荘厳な演出で幕を開け、4人の受賞者は客席中央を通り、盛大な拍手を浴びながら登壇。高島宗一郎福岡市長のあいさつに続き秋篠宮殿下より祝福のお言葉を賜りました。その後、福岡アジア文化賞審査委員長の有川節夫九州大学総長が、30の国と地域から寄せられた279件の候補者の中から受賞者が選ばれた選考過程について報告しました。

そして、いよいよ贈賞。高島市長と鎌田迪貞よかトピア記念国際財団理事長が、受賞者それぞれに賞状とメダルを贈呈。受賞者による感謝と喜びのスピーチに続いて、市民代表からお祝いの言葉が贈られ、福岡インターナショナルスクールの子どもたちが花束を手渡すと、会場は盛大な拍手に包まれました。

第2部では、4人の受賞者が会場の市民からの質問に答える形で対談。それぞれの思いが語られました。最後にチョン・セフン氏が再び登場。男声と女声の両パートを、一人でダイナミックに歌う歌唱で、授賞式の最後を華やかに締めくくりました。

客席中央を通って壇上へと向かう受賞者
客席中央を通って壇上へと向かう受賞者
子どもたちから花束をプレゼントされる受賞者たち
子どもたちから花束をプレゼントされる受賞者たち
賞状と記念メダルを授与される受賞者
賞状と記念メダルを授与される受賞者

秋篠宮殿下のお言葉

address.jpg本日、第24回福岡アジア文化賞の授賞式が開催されるにあたり、受賞される4名の方々に、心からお祝いを申し上げます。

近年、国際社会におけるグローバル化の進展に伴い、アジア諸地域においても画一化された思考方法や生活様式が広まりつつあります。その一方、豊かな自然と風土に恵まれ、独自の文化を育んできた各地域では、それぞれに固有の文化を保存し継承していくとともに、新しい文化を創造していくことにも多くの努力を重ねております。私自身、アジアの諸地域を訪れるたびに、土地固有の文化の多様性とその深さに感銘を受けるとともに、それらの保存と継承の重要性を強く感じております。

福岡アジア文化賞は、アジアの固有で多様な文化の保存と継承、そして創造に貢献することを目的とするものであり、大変意義深いものと考えます。本日、受賞される皆様の優れた業績は、アジアのみならず世界にその意義を広く示すとともに、社会全体で共有し、次の世代へと引き継がれる人類の貴重な財産になるものと思われます。

終わりに、受賞者の皆様に改めて敬意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好がより一層促進されることを祈念し、私のあいさつといたします。

大賞/中村 哲氏による受賞者スピーチ

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福岡アジア文化賞を授与される栄誉に、感謝と喜びを申し上げます。アフガニスタンは過去35年間、戦乱と外国の干渉に悩まされ、大規模な干ばつと洪水のため、人々は生存する空間を失いつつあります。温暖化による気候変化の影響は甚大であり、かつての農業立国の食料自給率は半減し、ひん死の状態だと言えます。私たちは医療団体ですが、国際支援では水の欠乏は重視されなかったため、自ら飲料水源の確保、水利・取水設備の充実に力を入れてきました。現在、私たちは16,500haの面積に65万人の農民が生きていく空間を確保する、一つの復興モデルを完成しようとしています。

戦争は絶対に解決になりません。軍事干渉は事態を一層悪くしてきました。これはアフガニスタンだけの問題ではなく、国際社会の暴力化、多様性を許さない画一化の中でアジア全体が貧困にあえいでいます。食料不足だけではなく、伝統文化や故郷、人間の誇り、そして和を失い、経済発展のためなら手段を選ばぬ「精神と道義の貧困」がまん延しています。自然を思いのまま操作できるという錯覚は、世界に致命的な荒廃をもたらします。

自然から遊離するバベルの塔はやがて倒れるでしょう。人も自然の一部。あらゆる人の営みが、自然と人、人と人とが和する道を探る以外、生き延びる道はありません。

今回、過去の受賞者たちの主張を見て、驚くほど共感できるものが多く、自分は決して孤立してはいないことを知り、大きな励みとなりました。この声がやがて大きな潮流となることを祈ります。

学術研究賞/テッサ・モーリス=スズキ氏による受賞者スピーチ

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この受賞は大変な名誉であり、光栄に存じております。日本と近隣アジア諸国の国際関係を研究する者として、福岡市からいただく賞には特別な感慨を覚えます。福岡は日本とアジアの関係史において中心的な役割を果たしてきました。現在、世界経済のけん引車であり、文化的エネルギー源でもある東アジアの国々が、偏狭なナショナリズムの発露でいがみ合うことなく、互いに力を合わせて平和な未来を築き上げることの重要性は、いくら強調しても足りません。

私は研究者となって30年以上経ちますが、研究に多くの示唆を与えてくださった学界の人々だけでなく、日本とアジアの架け橋となる、静かで力強いコミュニティ活動をされている方々に、特別の賛辞とこの受賞を捧げようと思います。もちろん、そのうちの一人はペシャワール会の中村哲さんです。

アジアの和解と協力のために活動を続ける方たちは、メディアや政治から正当な評価を受けることはがあまりありません。日韓両国の草の根連携のために活動する韓国の組織のモットーは「我、希望する。故に我あり」です。日本とアジア諸国の架け橋となろうとするすべての人たちへ、あなた方は未来に向けての希望です。あなた方の活動は価値ある貴重なものであり、決して無駄になることはありません。希望を携え、未来に向けてともに歩みましょう。

芸術・文化賞/ナリニ・マラニ氏による受賞者スピーチ

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この素晴らしい福岡アジア文化賞をありがとうございます。受賞を知らされたとき、過去にヴァンダナ・シヴァ氏やロミラ・ターパル氏という、インドにとって非常に重要な2人の女性が受賞していることが分かり、私は大変に誇りに思いました。しかし、受賞者の歴史を深くひも解きますと、賞の創設以来、男性のビジュアル・アーティストの受賞はありましたが、アジアの女性ビジュアル・アーティストは誰も受賞していないことに気づきました。ですから、今回の受賞は男性優位の状況を打破したものであり、大変に勇気づけられるものです。

本日、私はアジアの実験的なビジュアル・アートに貢献したことに対する受賞だけでなく、インドをはじめアジアの女性アーティストを代表しての受賞という栄誉に浴しております。21世紀における我々の未来は、女性の視点を認識することが一層求められると強く信じています。この女性の視点は、男性、女性の双方に存在します。世界で巻き起こっている環境や政治的、経済的、そして軍事的参事を乗り越えるには、これまで以上に女性の視点が必要です。地球規模で、より人間味と思いやりのある社会へとパラダイムシフトしていくために、私が少しでも貢献できればと思います。

ナマステ。

芸術・文化賞/アピチャッポン・ウィーラセタクン氏による受賞者スピーチ

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素晴らしい受賞者の皆様とともに、この賞を受賞できますことを栄光に思います。ここで私のささやかな記憶を皆様と共有したいと思います。私はタイの東北の小さな町で育ちました。木造の我が家にはグァバの木があって、はじめて登ったとき、私は素晴らしい光景を見ることができました。それはコンクリート・タイルでできた普通の屋根でしたが、いとも簡単に視点を変えることによって得られる喜びを教えてくれました。例えば、自転車に乗ったり、映画を作ったりするとき、私はグァバの木の上で経験したことを思い出します。つまり、新しい視点に心を開くということ。前世のことを思い出すことができるとしたら、どんな気持ちなのか、とか。それは他人の記憶に身を置くことでもあります。

いま、私たちはマウスをクリックするだけで、情報を共有できる時代にいますが、多様性の美学とともに残ぎゃくな行為や偏見にも気付かされます。私たちはひたすら思い出し、記録しなければなりません。グァバの木の先を想像するのは、そんなに難しいことではありません。世界を大きな家だと考えればいいのです。私たちの行為は他人にとっても重要な行為です。今日、私は映画制作を続け、昔を振り返り、謙虚になる勇気を、皆様からもらいました。この記憶を心に深く留めておきたいと思います。

受賞者と司会のジュディ・オング氏による対談

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市民のみなさまが、会場にて直接受賞者たちに質問していきながら進められた対談は、終始なごやかムードで進みました。流暢な日本語を披露したテッサさんには、会場のみなさまから「お~!」というどよめきと拍手がおこるなど、とても楽しいひとときになりました。

---活動を続けていく中で、一番大切にしていることは何ですか?(中央区・西村さまからのご質問)
ceremony4.jpg中村氏:私が一番大切にしていることは、決して「暴力」を使わないということです。暴力は、問題解決の方法には決してなりえませんから。あとは、みんなが行くところには行かないということでしょうか。みんなが行きたがらない所へ行くのが好きなんです。
テッサ氏:私は歴史家として、小さな埋もれた歴史を伝えることを大切にしています。大きなものにばかり目を向けるのではなく、小さな歴史に目を向けてみると、また違ったものが見えてきます。そこから得られる話を元に、再度大きな歴史を捉えなおしてみる。そのようなプロセスを大切にしていきたいと考えています。
ナリニ氏:私は、自分の心や目に見えない感覚的なことに従うことを大切にしています。
アピチャッポン氏:自分の作品が、私の命のようなものですから、それらはとても大切なものですね。できるだけ動物や植物とつながっているという感覚を持ち続けること、大きく言えば「生きること」それ自体が大切なのではないでしょうか。
---今、みなさまが思い描く「夢」を教えてください(西区・東島さまからのご質問)
中村氏:アフガニスタンに緑あふれる大地を取りもどすこと、それが私の今の夢です。それから、これは小声で言いますけど、個人的には昆虫採集や植物採集を思いっきりしたいです(笑)。
テッサ氏:私は第二次大戦後の冷戦時代に生まれました。当時は、自分の好きなときに好きな場所へ行くことができなかった時代でしたが、今はそれが可能になりました。ですから、世界中のいろいろなところへ出かけるのが私の夢です。
ナリニ氏:私は「夢」というより「希望」ということでお答えしたいと思いますが、女性がユニバーサルな活躍をすることです。
アピチャッポン氏:私は、小さなことから大きなことまで何でも、あらゆるすべてのことを、1分1秒しっかり記憶できるようになるのが夢です。この間テレビで、何でも覚えていられるという女性のニュースを見ました。みなは不幸だねと言っていましたが、私は羨ましいです。ただ生きる上では、やはり忘れることも大切です。そのために私は映画を作っているような気がします。
---では、ここから、市民のみなさまから事前に寄せられた質問をもとに、お話をすすめていきましょう。
ceremony3.jpgジュディ氏:まずは、多く寄せられた中村さんへの質問から。中村さんの活動の原動力は何ですか、教えてください。
中村氏:う~ん、何でしょう?本人もよくわかりませんね(笑)。ただ、いつも心にあるのは「人の情け」です。「義を見てせざるは勇なきなり」が私の信念ですから、あえて言うなら「義理と人情」でしょうか。人間としての心意気が、活動の原動力なのかもしれません。
ジュディ氏:なるほど、「義理と人情」。思っていても行動するのは難しいことですよね。それでは、次はテッサさん。伝統を守り伝えていくことが難しくなっている現代社会において、今後どのようにしたらよいとお考えですか?という質問ですが。
テッサ氏:伝統=変わらないもの、ということではないと私は思います。伝統は「川の流れ」のようなもので、本質的な部分は次の世代へと伝わると考えています。変わることを恐れる必要はありません。過去から来たものを再発見して、再創造すること、それが大切なのです。伝統も、時代に合わせて少しずつ変わっていけばいいと思います。
ジュディ氏:確かにそうですね。それでは、ナリニさんへの質問です。インドの将来についてどのように考えておられますか?というとても難しい質問をいただきましたが・・・
ナリニ氏:それは大きな質問ですね。インドの将来においてもっとも大切なことは、Diversity(多様性)とUnity(和)の両方を持ち続けることだと考えます。また、さきほどのご質問でもありましたが、「夢」をみることや「希望」を持つことも必要ではないでしょうか。
ジュディ氏:「多様性」は確かに昨今の世界を語るうえで重要なキーワードですね。それでは、アピチャッポンさん。自身の作品につながる「メッセージ」を一言で表現すると、どんな言葉でしょうか?
アピチャッポン氏:一言では難しいですが、「自由」でしょうか。新しいことを自由に考えること、また既成概念を取り払って自由にものごとを見ることが大切だと思っています。
ジュディ氏:それでは、最後に中村さんへ、福岡に期待することを教えてください。
中村氏:アジアに昔からある「多様性」や「伝統」を「善・悪」、「優・劣」で決めないことが大切だと思っています。多様性を尊重し、ハーモニーをつくっていくこと。そのために福岡、そして福岡アジア文化賞は大きな役割を担っていると思います。

2013年(第24回)福岡アジア文化賞祝賀会

授賞式に引き続いて各国の来賓、各界関係者、アジアフォーカス・福岡国際映画祭のゲストなど多数の参加を得て祝賀会を開催。「福岡市とアジアが文化面でも経済面でも、今後も盛んな交流を続けられることを願っています」と鎌田理事長のあいさつで開会。

厳かな式典とは違って、各受賞者も同伴者の皆様もリラックスした表情を見せ、和やかな雰囲気。会場のあちこちには受賞者を囲んでいくつもの談笑の輪が広がり、お互いの出会いや思い出を語り合いながら、受賞者を祝福する光景が見られました。

髙島市長からお祝いの言葉
髙島市長からお祝いの言葉
アフガン大使からマントを贈られる中村氏
談笑する受賞者たち

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

福岡アジア文化賞授賞式の様子や各種イベントのレポートを含めた2013年度の事業報告書を、PDF形式でダウンロードいただけます。

2013年福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

各種イベントレポート

2013年度の授賞式以外のイベントレポートをご覧いただけます。