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2016年市民フォーラムレポート

2016年大賞受賞/A.R.ラフマーン氏

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タイトル
From the Heart:A.R.ラフマーンの音楽世界
開催日時
2016年9月17日(土)/17:00~19:00
会場
アクロス福岡地下2階イベントホール
参加者
600名

アカデミー賞8部門受賞の『スラムドッグ$ミリオネア』など数多くの映画音楽を担当し、インドの音楽・映画業界を牽引するA.R.ラフマーン氏。南アジアの伝統音楽とクラシック音楽、ポップスを融合し、普遍的でありながらインドの息吹を失わない音楽は、世界中の人々を魅了し続けています。ラフマーン氏が音楽への熱い思いを語り、パフォーマンスを披露する必見の豪華イベントです。

対談者のサラーム海上氏
対談者のサラーム海上氏
対談の様子
対談の様子
コーディネーターの石坂氏
コーディネーターの石坂氏

第1部:A.R.ラフマーン氏×サラーム海上氏との対談

“アジアと西洋、伝統と現代を融合し人々の心を打つ音楽をこれからも”

forum1-middle1.jpg冒頭、石坂健治氏がラフマーン氏の功績を紹介し、「映画音楽の枠を超えた、ベートーベンやビートルズに比肩するアーティストである」と氏の音楽性 と実績を称えました。対談では、サラーム海上氏がラフマーン氏のプロとしての30年を写真や映像で振り返りながら、氏に質問を投げかけていきます。

---独自の音楽スタイルをどのように確立したのか?
ラフマーン氏:インドの伝統音楽と西洋のロック音楽を融合させて、自分たちのような若い世代の感性に合う音楽をつくろうと思った。
---映画音楽作曲へのアプローチ方法について教えてください。
ラフマーン氏:映像を観ていろいろな考えを高めていき、自らの創造力を含めてストーリーに反映させている。
---宗教歌謡カッワーリーへの思いについてお聞かせください。
ラフマーン氏:先進的で忘れてはいけない心。聴くと元気が出て非常に心が高揚する。私の音楽はヌスラット・ファテ・アリー・ハーン氏から始まった。

対談の内容は多岐にわたり、聴衆はサラーム氏の質問に丁寧に答えるラフマーン氏の一言一言に熱心に耳を傾けていました。

第2部ライブ演奏

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ラフマーン氏をはじめとするアーティストの熱演に、演奏終了後の会場は歓声とスタンディングオベーションに沸きました。

【出演】
ピアノ:A.R.ラフマーン
シタール:アサド・カーン(ASAD KHAN)
ベース:モヒーニ・デイ(MOHINI DEY)
ヴォーカル:ジョニータ・ガンディ(JONITA GANDHI)

【曲目】
「Mausam & Escape(モーサム&エスケープ)」(映画『スラムドッグ$ミリオネア』より)
「Naane Varugiraen」(映画『OKダーリン』より)
「Agar Tum Saath Ho(あなたがいてくれたら)」(映画『Tamasha(見世物)』より)
「Tu Hi Re(あなただけが)」(映画『ボンベイ』より)
「Latika's Theme(ラティカのテーマ)」(映画『スラムドッグ$ミリオネア』より)

2016年学術研究賞受賞/アンベス・R・オカンポ氏

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タイトル
歴史における記憶と忘却:日本とフィリピンの関係から考える
開催日時
2016年9月18日(日)/11:00~13:00(開場/10:30)
会場
アクロス福岡地下2階イベントホール
参加者
200名

フィリピンは、アジア太平洋戦争の激戦地となり、日本兵・軍属は約50万、フィリピン側は110万人を超える犠牲者を出しました。戦争の災禍を越えて、今、両国の関係は良好です。戦争をはさんだ長い交流を振り返り、未来に向けた歴史の語り方・伝え方を考えます。

コメンテーターの藤原氏
コメンテーターの藤原氏
会場の様子
会場の様子
コーディネーターの清水氏
コーディネーターの清水氏

第1部:アンベス・R・オカンポ氏による基調講演

“過去の何を記憶し、何を忘れるのか。未来に向けた歴史のとらえ方を提議する”

forum1-middle1.jpgこの受賞を機にこれまでの人生を振り返り、歴史家になった理由、過去が現在と未来にとって必要な理由を考えました。皆さん、歴史学は自分に必要ないものとお考えでしょうが、我々が未来に向かううえで歴史は非常に重要なものです。私は子どものころ、1970年の大阪万博でフィリピンのパビリオンや、他の国旗に並んではためくフィリピン国旗を見て心躍ったことを覚えています。万博は、私の目を世界の文化の多様性や国のアイデンティティーへと向けてくれました。

私は幼少期にフィリピンで『隠密剣士』を見ましたし、私の伯父は親日家でした。しかし、日本の占領下で日本軍に身内を殺されたフィリピン人もいて、世代により日本観は違います。日本人は原爆投下を被爆者として覚えているでしょう。しかし、東南アジアでの日本軍の行動は言及されず、互いの記憶にギャップがあります。

日本とフィリピンの歴史をもっと遡ると、16世紀末には既にフィリピンに1000人超の日本人が住み、交易商人、職人、ボディーガードなどをしていました。また、ルソン壺、キリシタン大名の高山右近、日本に滞在したマリアノ・ポンセやアルテミオ・リカルテといった歴史上の人物の例が示すように、様々なレベルで深いつながりがあります。

役に立たないちょっとした情報も集めることによって、私たちはもっと歴史的なつながりを理解し、洞察を生むことになると思います。歴史の何を記憶し、なぜそれを記憶するのか。私たちは過去の記憶によって現在を理解し、未来について考えをめぐらすことができます。最後にフィリピンの国 民的英雄ホセ・リサールの言葉を紹介します。「過去の記憶を持って未来へ向かっていこう」。

第2部:パネルディスカッション

“反日感情を乗り越えて交流が続く二国間に必要なものとは”

藤原氏は、マルコス政権が倒れて間もない1989年、学会でオカンポ氏が人柄や服といったトリビアの詰め合わせのような独自の視点から国民的英雄ホセ・リサールを語る姿に驚いた、と第一印象を披露。過去を空想する ことを拒み、歴史の姿を捉えることに努めてきた、と氏について語りました。 質疑応答では、戦後の反日感情を乗り越えて日比関係が友好的になっている理由、ドゥテルテ大統領の反米的な発言の背景、日本とフィリピンがよ い関係を築いていくために気をつけたらよいこと、という会場からの質問にオカンポ氏は穏やかに語りかけていきました。藤原氏は、オカンポ氏のように「なぜだろう?」「知りたい」という好奇心を持ち相手のことを知ることが我々の将来を作っていく土台になるのだろう、と締めくくりました。

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2016年芸術・文化賞受賞/ヤスミーン・ラリ氏

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タイトル
災害から創造的復興へ:素足の被災者を蘇らせたラリの草の根建築デザイン
開催日時
2016年9月18日(日)/14:00~16:00(開場/13:30)
会場
アクロス福岡地下2階イベントホール
参加者
200名

日本と同様に災害の多い国、パキスタン。ラリ氏は、2005年に7万人以上もの死者を出したパキスタン大地震を機に、人道支援活動に力を注いできました。持続可能な未来に向けた災害復興支援の方法とは!?文化遺産保護も手掛けるラリ氏が災害に強い社会づくりについて熱く語ります。

対談者の森氏
対談者の森氏
対談者の深澤氏
対談者の深澤氏
コーディネーターの藤原氏
コーディネーターの藤原氏

第1部:ヤスミーン・ラリ氏による基調講演

“現地の自然素材と土着的な手法で援助への依存から自立の文化へ”

forum1-middle1.jpg私が会長を務める パキスタン・ヘリテージ財団は、文化遺産の管理をするだけでなく人道支援活動も行っています。パキスタンには多くの古代遺産があり、それは青銅器時代、インダス文明の時代、ガンダーラの仏教文化といった時代にさかのぼります。そうした時代の建築物は強く強靭性に富むものであり、それらの遺産を保存し、さらに、遺産に関する知識を広げていく様々な活動を行っています。

また、8万人が犠牲になり、40万の家族が家を失った、2005年パキスタン大地震をきっかけに、私は、“素足の建築家”として人道支援活動にも取り組むようになりました。2010年以降も、パキスタンでは毎年のよう に洪水や風水害、地震などが発生し、常に留意しておかなければならない状況です。さらに、パキスタンは発展途上の国であり、多くの人が貧困状態にある中で、国際社会からの援助への依存が増しており、被災者の自尊心がなくなり、自立心が欠如している状態に陥っています。これは本当に深刻かつ重大な問題です。

その対策として、私は、シェルターを被災者と協力して設計し、現地で調達可能な粘土・石灰・竹などの自然素材を使用し、土着的な手法で造 る“草の根建築”を推進しています。このシェルターは費用がほとんどかか らず、被災者自身で建てることができるため、援助への依存の体質を自立 の文化へ変えることができます。また、粘土・石灰・竹といった自然素材を用いているため、二酸化炭素排出量が非常に少なく、地球環境にも優しいものです。

私が考えた自然災害後の復興のための原則があります。まずは、文化遺産と伝統を利用し、誇りと自信を育てるということ。次に、持続可能な材 料を使用し、環境悪化を防ぐということ。さらに、現地の材料と技術を使用 し、素早く届けるということ。最後に、災害リスク軽減法を考案・具体化し、 次の災害に耐えるということです。

パキスタンでは多くの人が貧困状態にありますが、災害時には、特に子どもたちや女性が被害を受けます。私は、子どもや女性のためのエンパワーメントにも力を入れており、住宅だけでなく、衛生的に家事ができる無煙かまどのキッチンやエコトイレをわずかな費用で造る技術なども教 えています。

私はこれからも被災者に寄り添い、被災者の自立に役立つような活動を続けていきたいと思います。

第2部:パネルディスカッション

“災害への備えや復興の在り方をあらためて問い直すきっかけに”

基調講演を受けて藤原惠洋氏は、「被災者に寄り添い、主体性や自立性を奮い立たせるラリ氏のシェルターは、日本の仮設住宅の在り方とはずいぶん違う」と感想を述べました。作家の森まゆみ氏は、東日本大震災後の自身の被災地での活動内容を紹介し、日本の復興の在り方に疑問 を投げ掛ける一方で、ラリ氏が設計したシェルターを「環境問題までを見据えた私たちの行くべき未来」と高く評価しました。深澤良信氏は、国内外で数々の災害復興支援に関わってきた経験や、国連ハビタットの活動内容を紹介し、「復興に大切なのは被災者自身が元気になること。コミュニティーの力が高まれば、支援事業が終わっても次に進める」と、ラリ氏の考えに共鳴しました。それらを受けてラリ氏は、「被災者の自助や心の復興は重要な観点」「救済だけでなく、災害前の備えを世界中でやるべき」 などと力説しました。

フォーラムの前日に熊本地震の被災地に赴いた様子も紹介され、ラリ氏は「あれだけの大地震にもかかわらず躯体自体はしっかり残っていた。 竹の土台でできている建築物は本当に素晴らしい」と感想を述べました。 会場からの「パキスタンと日本が一緒になって取り組めることは?」という質問に対しては、「伝統的な建築を生かしながら、それをさらに強くする方法を考えることが重要だ」と回答。最後に藤原氏が「私たちが協同してやれることはたくさんある。今度は実際の現場でご一緒しましょう」と述べて市民フォーラムを締めくくりました。

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各種イベントレポート

2016年度の市民フォーラム以外のイベントレポートをご覧いただけます。