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2001年(第12回)芸術・文化賞受賞/マリルー・ディアス=アバヤ

マリルー・ディアス=アバヤ顔写真
2001年(第12回)芸術・文化賞
マリルー・ディアス=アバヤ
Marilou DIAZ-ABAYA
映画監督
【フィリピン/映画】
1955年03月30日生(46歳)

活力あふるる民衆の喜びや悲しみを描き出した作品を通してアジアの心を世界に伝える、今日のフィリピンを代表する映画作家。一貫してこの国の現実を厳しく見つめて告発する姿勢と、力強く生きぬく民衆に対する愛情に満ちた温かい態度とですぐれた映画をつくりつづけている。

※肩書き・年齢・経歴・贈賞理由などは受賞当時のものです
※逝去
【贈賞理由】

マリルー・ディアス=アバヤ監督は今日のフィリピンを代表する映画作家であり、アジアの重要な映画人のひとりとして国際的にも注目されている。とくに氏の近年の活動は、アジアフォーカス・福岡映画祭をつうじて福岡市民の大きな支持を受けて進展した。

1955年にケソン市に生まれたディアス=アバヤ氏は、ロサンゼルスのロヨラ・メリーマウント大学とロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールで映画を学び、1980年に第一作を発表して以来、フィリピン映画界の第一線の監督として作品を発表してきた。

初期の監督作品である『ブルータル/暴行』『カルナル/愛の不条理』『ベビー・チナ』などはマルコス政権時代の抑圧的な社会体制に対する痛烈な批判であり、巨匠リノ・ブロッカなどの作品とともにフィリピン映画の存在を広く世界に知らしめたものである。

1986年にマルコス政権が倒れ、続くアキノ政権時代、ディアス=アバヤ氏は数年、映画界を離れ、社会問題や政治問題をとりあげるテレビ番組の制作にとりくみ、映像作家として社会改革につくした。フィリピンにおける民主主義の確立に貢献することは映画監督として出発以来の同氏の一貫した立場である。

1995年『貴女のためにたたかう』の発表からディアス=アバヤ氏は再び映画監督として旺盛な活動をはじめる。『マドンナ・アンド・チャイルド』『海に抱かれて』『ホセ・リサール』『ムロアミ』などを次々と製作するが、そこにも社会の困難な諸問題を厳しく見つめて告発する姿勢が貫かれている。と同時に、苦しい状況の中で力強く生きぬく人たち、とくに下層の人びと、女性や子どもたちに対する愛情に満ちた表現は、いっそうその豊かさをまし、映画としてもさらにおおらかで人間的なぬくもりのあるものとなっている。

大作『ホセ・リサール』は、国民的英雄をひとりの人間、芸術家として、今までにない斬新な視点で描写した独創性と、格調高く描いた表現力により、芸術性に富んだ傑作として評価された。映画が娯楽として高い地位を保つフィリピンにおいて、このような作品が興行的にも大成功をおさめたことは、フィリピン映画の新しい時代の幕開けともなるものであろう。

ディアス=アバヤ氏の作品が娯楽性と社会性と、さらには民族性との深い調和を保ちつつ、芸術作品としても高い水準を達成して国内はもとより国際的な評価も得ていることは、アジアの芸術文化のあるべき理想的なかたちである。それはまさしく「福岡アジア文化賞―芸術・文化賞」にふさわしい業績である。

マリルー・ディアス=アバヤによる市民フォーラムのご案内

タイトル
わたしが伝えたいものー民衆とその社会
開催日時
9月15日(土・祝)13:00~15:00
会場
イムズホール
コメンテーター
清水 展(九州大学大学院比較社会文化研究院教授)
コーディネーター
佐藤 忠男(映画評論家)

今日のフィリピンを代表する映画作家であるマリルー・ディアス=アバヤ監督による市民フォーラムが9月15日、イムズホールで行われた。