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中村哲さんを囲んでの学生セミナー

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2014年8月7日(木)、アクロス福岡にて、福岡アジア文化賞25周年記念事業「中村哲氏と語る“私の国際協力”」と題して学生セミナーを開催しました。

集まった約60人の学生たちは、実際に現地で活動を行っている中村哲さんと、自身の考える国際交流について、熱い意見を交換し語り合いました。

  • 日時:/2014年8月7日(木)13:30~16:30
  • 会場/アクロス福岡1階円形ホール
  • 第一部/中村哲氏による講演、学生発表
  • 第二部/全体討論・ワークショップ、質疑応答(その後アフタートーク)

 

第一部/中村哲氏による講演

IMG_9375.JPG国際協力を志すというのは、自分だけのことを考えていていいのだろうか?という動機がみなさんの根底にあると思うのですが、実は自然と人間との関係も同じであります。自然のことを考えずに人間のことだけ、自分たちのことだけを考えていいのだろうか、という思いが私の根底にもあります。

自然は、絶対にコントロールすることはできません。人間の思い通りにはできないのです。自然は自然の理屈で動くのであって、人間側の理屈は通用しません。ただし、こちらが、そういう心構えでいれば、自然は十分な恵みを我々に与えてくれます。

現実を批判して新しい未来を構想する、といのも大事ですが、構想が構想のままで留まっている間は、何にもなりません。現実的にとりあえず動かざるを得ないものです。今こうしようという道をとらざるを得ない場合が往々にしてあります。

ただし、その“とりあえず動く”にしても、それが刹那的に自分を満足させるためだけのものなのか、あるいは、自分たちの子供、孫が安心して過ごせるようになる未来を考えた、ある一定のベクトルを持った“とりあえず動く”なのかが、大きな違いなのです。

現実は、“とりあえず動く”ことの繰り返しです。そうやって現実は動いていくのです。どうしたら、人間らしい、より良い社会を築くことができるのか?ひとつの方向を目指して“とりあえず動く”というのが最も大切なことなのです。

 

第一部/学生たちによる活動内容の発表・報告

中村哲さんの講演後には、学生3組による、自身が行っている国際協力についての発表が行われました。発表してくれたのは、九州大学のFIWC九州、西南学院大学のThink&Act、福岡教育大学のKIZUNAの3組。

それぞれが、大学で行っている国際協力についてスライドを交えながら紹介してくれました。

IMG_9406.jpgFIWC九州は、フィリピンや中国での活動を発表。実際に現地に赴き、村人たちから村の問題点を聞きだし、それを中心に自分たちがやれることを考え実行している学生サークル。橋をかけるなどの簡単なインフラ整備や現地の村人との文化交流を行っている様子を発表してくれたFIWC九州は、大学生の強みを身体性という言葉で表現。フットワークの軽さで、村人目線の問題をみつけだし、村人主体で問題を解決し自立促進を促す活動を行っているとのことでした。

IMG_9410.jpgThink&Actは、海外インターンなどを経験した現4年生を中心につくられた、創設2年の新しいサークル。ハビタットの手伝いや八女市黒木町でのワークショップなどを通して、国際協力を行っています。そのなかで、単純作業が続くことによるメンバーの固定化や、自分たちの活動が本当に何かの役に立っているのか?という疑問にぶつかっているという悩みも吐露。葛藤を抱えながらも、小さなことの積み重ねを継続していくことが何よりも大切なのだという信条の元、日々の活動を行っている様子を伝えてくれました。

IMG_9348.JPGKIZUNAは、留学生との交流や、言語学習、書初め、ひなまつり、もちつき大会、着付け教室などの文化交流活動を紹介。国際協力の前段階として重要な文化交流に力を入れている様子を報告してくれました。教育大学らしく、今後世界で活躍するであろう子供たちに、教育者として何ができるのか?国際協力とは何なのかを自分たちで考える力を身につけることに力を入れているとのことでした。

それぞれ独自の活動を行う学生たちの発表に対し、中村哲さんは「今だけ、金だけ、自分だけという風潮の中、これだけしっかりとした考えのもと活動を行っていることに、感心しました。社会人になると、どうしてもスレてしまい、今の気持ちを忘れがちになる。初心忘るべからず、という言葉を贈りたいと思います。」と評してくださいました。

 

第二部/全体討論・ワークショップ

IMG_9396.JPG第二部では、九州大学国際交流推進室の香川顕夫特任教授がファシリテーターとなり、中村哲さんと学生たちによる全体討論・ワークショップ、質疑応答が行われました。ここでは、上記の発表者以外の参加者にも加わっていただき、会場全体で、国際協力について考えていきました。

「私の国際協力」と題して、グループに分かれてのワークショップでは、1:既に何かやっている人、2:今はやっていないが具体的な予定・計画がある人、3:何かしたいけど、何をしたらいいのか分からない人に分かれて、それぞれが4人グループを形成。大学も学年も違う学生たちが、日頃考えていることなどについて話し合いました。

お互いの意見を聞いて刺激を受けたと話す学生がいるなかで、どうしたらいいのか分からないという半数以上の学生たちに対し、中村哲さんは「何をしたらいいのか分からないのが当たり前。決められないのが普通です。道徳的に何か立派な目標を掲げる必要はありません。人からされて嫌なことはしないこと、人からされて嬉しいことをすればいいだけなんですよ。」と温かいメッセージを送りました。

また、「ひとつ、ひとつ違う価値観があるのは当たり前。いろいろ挑戦するなかで、自分がやれることを見つけていければいいんです。あまり自分を高尚なルールで縛らないでくださいね。犬も歩けば棒にあたるということわざがあるでしょう?そうやっていろいろ失敗していくというのは、若い人の特権なんですよ。」とエールを送っていました。

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第二部/質疑応答

---大学時代にすべきことは何ですか?
私に、それを言う資格があるのかなあ(笑)。ちょっと変かもしれないけれど、学びすぎないというのも、ひとつの大事な要素かもしれません。頭で考えることで解決できると信じている人が多いのは問題だと思います。学びすぎて偉くなったと勘違いしないことが重要です。汗を流して体を動かすことを軽視する傾向があるので、その重要性をもっと知ってほしいと思います。
---国際協力は、やはり他人のために自分を犠牲にしてするものなのですか?
己の欲せざる所は、人に施す勿れ。この一言に尽きるのではないでしょうか。自己満足のために何かをするのではありません。人が喜んでいること、人と喜びを分かち合えることが、自分にとっては、何よりも大きな喜びなのです。若いときは、自分にも自己満足の部分があったかもしれません。それがエネルギーになることもありますから。ただ、人の喜び=自分の喜び。この基本があればそれでいいのではないでしょうか。

 

アフタートーク

質疑応答のあとは、中村哲さんを囲んでのアフタートーク。普段、なかなかこんなに近い距離で、直接お話できる機会がない憧れの大先輩を身近に感じながら、みな小さな子供のように目を輝かせて話をしていました。これがきっかけで自分自身の等身大の国際交流について考える機会になり、また若い学生さんたちにとって、今後の人生を左右するとても大きなきっかけになったのではないでしょうか。

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