ランドルフ・ダビッド/ 2019年(第30回)大賞

画像:ランドルフ・ダビッド/ 2019年(第30回)大賞

福岡の皆様へ 

過去100年の間に、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行ほどの猛威を振るった出来事は他にありません。しかし、この世界的な惨劇は各国の政府に国益という狭いプリズムを通した脅威を認識させただけでした。

グローバルな連帯と協力の代わりに「ワクチンナショナリズム(vaccine nationalism)」に代表されるような偏狭な対応が当たり前になってきています。世界共通の脅威に対し、国連とその諸機関がとる対応が今日ほど無力に思えることはありませんでした。

限られた検査キット、人工呼吸器、個人用保護具をめぐる激しい争奪戦の中で、私たちは「医療ナショナリズム(medical nationalism)」の暗い一面を目の当たりにしています。各国の政府は、新型コロナウイルスには国境がなく、民族を区別することもないことを忘れてしまったのです。

このような時代だからこそ、福岡アジア文化賞に受け継がれ続けている他国を尊重する国際主義が問われています。昨年、私は幸運にも、授賞式にあふれる国際的な連帯と協力という驚くべき力を目にすることができました。そして、世界が平和で一つになり、多様な伝統の豊かさから恵みを享受するという、新たな希望を胸に帰国したのです。

福岡市民と福岡市が毎年行ってきた福岡アジア文化賞という歴史あるプロジェクトは、永続的で普遍的なアジア文化の展望の光としてその役割を担い続けています。

福岡アジア文化賞受賞という名誉を受けた私たち受賞者は、これまで以上に、受賞者に共通する人間性に相応しい行動――受賞者コミュニティの力を結集してこの危機に共に立ち向かい、生命の問題を解決していくこと――が求められています。


 

 

 

 

 

 

 

 

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