トークイベント/白永瑞(ペク・ヨンソ)氏「実践的課題としての東アジア」
開催日時
2025年9月17日(水)15:00~17:00
会場等
アクロス福岡 円形ホール(中央区天神)(外部リンク)
登壇者
白永瑞(学術研究賞受賞者)
登壇者
木宮正史(東京大学名誉教授)
登壇者
中島隆博(東京大学東洋文化研究所 所長)

クロストーク

木宮正史氏

 国際政治学者の木宮氏をモデレーターに、中国哲学研究者の中島氏、中国現代史研究者のペク氏の3名で、東アジアをめぐる学術的かつ現実的な課題について、幅広い議論が交わされました。

 まず「実践的課題としての東アジア」というテーマについて、ペク氏は東アジアを地理的に固定された領域ではなく、歴史的・社会的文脈や具体的な実践課題によって変容する概念であると位置づけました。さらに、学問は制度ではなく運動であり、相互省察と自己変革の循環が重要であると強調しました。中島氏もこの考えに賛同し、東アジアを国ごとに分節せず、「問いを立てる」ことによって新しい地平が開けると指摘しました。韓国の民主化運動を例に挙げ、私たちが社会にどう関与するかが問われていると述べました。

 研究対象を中国にした理由について、ペク氏は、1970年代の中国は文化大革命の最中で、その姿を通して韓国社会を批判的に照らし出す「鏡」と捉えていたと明かします。その後は近代化の意味を追求する事例として、現在は隣国との相互作用に注目して研究している、と話しました。中島氏は、西洋中心主義的な考え方に対して、「マイナーな哲学」の場として中国を選び、中国を鏡として互いに変容していく必要があると説きました。

中島隆博氏

 ペク氏は自身の研究を「批判的中国研究」と称し、学際的研究を目指し、古典と現代を分離せずに捉え、相互省察の契機として、中国中心主義を解体することが要件であると述べました。また、中国への批判と共感を両立させて、新たな秩序や文明の構築に寄与することを目標としていると話しました。中島氏も、中国を客観視して分析するのではなく、相互に関与し影響を与え合いながら研究が進んでいることの意義を強調しました。

 後半は、米中関係や新冷戦の懸念、韓国の若者による「光の革命」など政治まで話題が及びました。現代の混沌とした国際情勢において、ペク氏は学者的問題意識と商人的現実感覚を両立することが重要であると指摘し、中島氏は世界を二項対立で捉えるのではなく、民主主義を深化させつつ、それぞれの国の多様な考えを持つ人々と、複数のチャネルを通じて対話を続けることが不可欠と訴えました。政治家のみならず、学者や市民が国境を超えてつながることで、東アジアや世界がより良い方向に進むと結び、示唆に富むクロストークは幕を閉じました。