トークイベント/ 高良倉吉氏「蘇る首里城正殿―ノートルダム大聖堂との比較の視点から」
開催日時
2025年9月17日(水)18:30~20:30
会場等
アクロス福岡 円形ホール(中央区天神)(外部リンク)
登壇者
高良倉吉(大賞受賞者)
登壇者
河野俊行(九州大学高等研究院・特別主幹教授、国際イコモス名誉会長)

第1部 基調講演

 琉球史を長年研究し、2度にわたる首里城の復元では中心的な役割を果たしてきた高良氏。基調講演では、首里城の歴史と復元のプロセスについて語りました。

 琉球王国の王宮であった首里城は、1945年の沖縄戦で焼失し、30年以上かけて2019年2月に復元が完了しました。史料がほとんど残っていなかったため、「絶望的な状況でスタートした」と高良氏。徹底的にリサーチを重ね、さまざまな専門家が集結したことで復元が実現しました。

 しかし、同年10月に火災で再び焼失。現在は防災・防火機能を備えた首里城正殿を再建中で、2026年秋の完成を目指しています。高良氏は「琉球王国時代の上に現在の沖縄がある。沖縄を訪れる人や地元の若者に、首里城を通して琉球の歴史を感じてほしい」と訴えました。

 

第2部 クロストーク

 国際イコモス名誉会長の河野氏を迎えて、2019年の火災で甚大な被害を受けた首里城正殿とパリのノートルダム大聖堂を比較しながら、文化遺産の保護について話を展開しました。冒頭、河野氏はノートルダム大聖堂の歴史や建築を紹介。高良氏は、琉球は東南アジアと中国を結ぶ中継貿易で栄え、首里城が交流と文化発信の拠点であったと説明。島津の侵入後も外交術で独自の立場を保ったことから、大国の狭間で小国が生き抜く知恵が今にも通じると語りました。

 続いて、高良氏が首里城復元の詳しい技法や材料、河野氏がノートルダム大聖堂の火災や復元の状況などについて説明しました。復元へのプロセスについて、首里城は国営公園の中にあるため国が主導し、県と連携して復元整備に取り組んでいること、現役の宗教施設であるノートルダムはカトリック教会との関係に触れながら政府も関与して進められたことを解説。復元の技術に関しては、首里城は日本各地から宮大工に来てもらい沖縄の大工も技術を学びながら作業にあたった一方、フランスでは大工の技術が中世から脈々と受け継がれており、文化財保存の基礎にもなっていると話しました。

 また、文化財は単なる建物ではなく、儀礼や祈りを含む「生きた文化」であり、文化財復元はどの時点の姿に戻すかが重要と強調しました。

 寄付や関係者の尽力により、ノートルダムは2024年に復元され、首里城正殿は 2026年秋に再び姿を現す予定です。河野氏は「現地に足を運び、今日の話を実感してほしい」と呼びかけ、対談を締めくくりました。