第31回(2021年)芸術・文化賞受賞者 プラープダー・ユン氏による映像セミナー
開催日時
2022年10月29日(土)/13:00~16:30
会場等
福岡アジア美術館 あじびホール
主催
クリエイティブ福岡推進協議会、福岡市、(公財)福岡よかトピア国際交流財団
モデレーター
神保 慶政氏(映画監督)
対談者
吉田 ヂロウ氏(アニメーション作家)、荒木 聡太郎氏(映像作家)、宗 大輔氏(映像作家)

第1部 タイの映像制作の現場から

 タイを代表する作家の一人であり、評論家、脚本家、グラフィックデザイナーとしても活躍するプラープダー氏。今回は映画監督として登壇し、クリエイティブセミナーが開催されました。

 第1部では、プラープダー氏が監督・脚本を担当した短編映画『Transmissions of Unwanted Pasts(不要な過去たちの発信)』を上映。上映後は映画監督の神保慶政氏と対談し、各シーンに込めた思いや、映画制作をするうえで大事にしていることを語りました。

 映画の中で、非日常と日常、昼と夜、狭い室内と広い屋外など、対比する場面を効果的に使っている点に神保氏が触れると、「スペースの変化は実験的に行っている。人々がどういう意思決定をし、境界線を超えるかという点に興味がある」と話したプラープダー氏。

 時間や予算という制約が伴う映画制作において、一番大切にしているのは「仲間」。カメラマン、アシスタントなど友人に支えられてきた経験を語られ、時間・予算・人の3つのバランスが難しいが、映画づくりに重要であることを伝えました。

 神保氏が「東南アジアと日本の映像交流に期待している」と話すと、プラープダー氏は「映画は国境を超える素晴らしいツール。異なる文化を結びつける力になっていくと思う」と応え、映画の豊かな可能性について語られました。
 

第2部 海外の制作者の視点からみる福岡の映像作品

 第2部では、福岡で活躍する若手映像クリエーターも登壇。各クリエーターの作品上映後、プラープダー氏からのコメントを中心にトークが行われました。上映作品の1本目は、吉田ヂロウ氏のアニメーション作品『繩』。2本目は、荒木聡太郎氏の『Agent Smith』『PEN DEVESCENE』を再編集した連作。3本目は、宗大介氏の『それでもわたしは』でした。

 プラープダー氏は、個性豊かな手法やテーマについて称賛し、各作品について評価すべき点、作品を磨いていくアドバイスを伝えました。それぞれのクリエーターからは、制作で工夫した点や苦労した話も伝えられ、観客も含めて作品に対する理解が深まりました。

 講評後、3人のクリエーターがプラープダー氏に質問。わかりやすさと個性的な表現のバランス、作品中にあえて謎を残す展開、型にはまらない考え方などをテーマにトークが繰り広げられました。

 最後にプラープダー氏は福岡について「山も海もあり、都市生活と自然が近い特別な環境。ロケ地として多彩な魅力があり、世界的に見ても興味深い地域だと思う」と述べました。作品上映と対談を通して参加者が相互に刺激を受け、将来への広がりを感じる有意義なセミナーとなりました。