第17回(2006年)学術研究賞受賞者 濱下武志 講演会~アジアを海から考える
開催日時
2023年2月4日(土)/13:00~15:00
会場等
九州大学 西新プラザ 及び オンライン(アーカイブ配信)
主催
九州大学アジア・オセアニア研究教育機構、福岡市、(公財)福岡よかトピア国際交流財団
コーディネーター
鬼丸 武士氏(九州大学大学院比較社会文化研究院 教授)

海域史研究から見た交流の歴史

コーディネーター 鬼丸 武士(九州大学大学院比較社会文化研究院 教授)

 アジア海域史研究の世界的な第一人者である濱下武志氏。「ナショナルを超える視角とアジア研究」「海域・地域の自然環境と人間社会」「資料と歴史」の3点をテーマに、アジアの人々が海の世界でどのように交流してきたのか、歴史をひもといていきました。

 海流、海域、航路を表す地図をはじめとする様々な資料を用いて、九州とアジアの関係や、ヨーロッパや世界から見たアジアなどを多様な角度から解説。アジアの海の特徴として、海域が連鎖しており、その境界となる場所で各国の港湾都市が発展してきたことに言及し、「海は人のつながりを表す空間でもある」と語りました。また、「歴史研究というのは、資料を発掘し、まとめたり整理したりすることが大事」と、資料と向き合う重要性を伝え、主要な資料として、琉球王国が444年間の交流史を記録した『歴代宝案』や、港湾・航路・灯台など海洋インフラの歴史を知る貴重な資料である中国の海関資料を紹介しました。

 最後に、アジアを海から考える視点として、「アジアの海域と海流・気象循環」「黒潮がつなぐ島嶼」「朝貢から海関による海域管理」「海流循環・海域連鎖からみる琉球と沖縄」「九州をめぐる海流と海域:九州とアジア太平洋」の5つが示されました。

 質疑応答では、現在のアジアの地理的な位置づけやこれからの歴史教育についてなどの質問に真摯な回答があり、濱下氏の広い見識をもとにアジアをより深く理解し、交流の歴史を未来につなぐ道を考える機会となりました。