贈賞理由

金徳洙氏は、韓国を代表する伝統芸能家であり、同国の伝統音楽の継承とともに現代の先端的音楽を創造し続けている。特に4種類の伝統的打楽器による演奏集団「サムルノリ」を結成し、その演奏活動は、韓国のみならず国際的にも高い評価を受けている。

金氏は、5歳の時に父親に連れられて、韓国の伝統的な旅芸人集団のナムサダン(男寺党)に入団し、芸人としての人生を歩みだした。7歳で「チャング(杖鼓)の神童」として最年少で大統領賞を受賞するなど早くから才能を発揮している。国楽芸術学校における中学・高校時代には、伝統音楽の技法や理論を学び、やがてメキシコ五輪、大阪万博などの国際的祭典での演奏を通じて、韓国の伝統的リズムの貴重さを実感したという。その経験を背景に、伝統的リズムを採集・整理し、継承するとともに、新しい時代の感性にあった音楽表現を追求していった。

1978年、「サムルノリ」を結成し、多面的な活動を展開している。日本をはじめ世界50余か国で5,500回を超える公演を行い、韓国伝統音楽の現代的な継承と同時に、時代の最先端の音楽を発表し続けている。

1993年には、NPO法人サムルノリ・ハヌルリムを発足させ、後進の育成に努力するとともに、ジャズやオーケストラ、さらには舞踊、演劇、絵画などとのコラボレーション活動にも尽力し、伝統文化の現代化に大きく貢献している。これらの活動に対して文化勲章銀冠章、韓国放送公社国楽大賞など多くの賞を受賞し、朝鮮日報からは、伝統芸術・芸能の領域から唯一人「大韓民国50年の50大人物」として選定された。また、韓国芸術総合大学伝統芸術院教授として、伝統芸能の研究とともに後進の育成にも力を注いでいる。

韓国を代表する伝統芸能家として、国際的にも高い評価を受けている金徳洙氏は、まさしく「福岡アジア文化賞―芸術・文化賞」にふさわしい。