贈賞理由

ラヴィ・シャンカール氏は、アジアにおける音楽の巨匠であり、国際的に知られたインドの楽器シタールの演奏家である。

従来、西洋音楽にしか、その真の芸術的価値を認めなかった世界の音楽界にとって、同氏の出現は、まさに驚異であった。同氏が、アジア固有の芸術性の高さを広く世界に認識させた功績は、まさに偉大というべきものである。

同氏は、少年期に、兄ウダイ氏の主催する舞踊音楽団に同行し、欧米各地の演奏旅行に参加。インド音楽や、西洋のクラシック音楽からジャズに至るあらゆる音楽を直接耳にし、さらに、西洋の優れた音楽家に接する機会にも恵まれた。このことが、同氏の天賦の優れた才能を開花させ、その後の芸術活動に深く影響することとなった。

同氏は、1956年のカンヌ映画祭で、特別賞を受賞したサタジット・レイ氏の映画『大地のうた』の音楽を担当し、美しい映像とあいまって、世界中の人々に深い感動を与え、映画音楽に対する認識を高めたばかりでなく、インド音楽評価に新たな局面を切り開くことに成功した。その後、世界各国の様々な音楽家との共演など、国境を超えた多面的な活躍を続け、美しいシタールの響きに乗せた平和のメッセージを世界中に発信してきた。同氏の演奏を通じ、東洋の音楽が、西洋に伝わるだけでなく、西洋音楽の既成の殻を打ち破り、新たな展開のきっかけを提供することとなったのである。また、同氏作曲の協奏曲は、ロンドン交響楽団やニューヨーク交響楽団等世界的に著名なオーケストラによって演奏され、高い評価を受け、世界各地でのコンサート会場は聴衆の賛辞の声で満ち溢れた。

一方、同氏は、自ら音楽学校や研究所を設立し、アメリカの大学でも教鞭をとるなど、後進の育成に心血を注ぎ、優れた芸術の継承に大きく寄与している。

このように、ラヴィ・シャンカール氏の功績は、東西文化のかけ橋という役割を果たしただけでなく、世界中にアジアの意義を示したと評価できるものであり、まさしく「福岡アジア文化賞大賞」に相応しい業績といえる。