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2000年(第11回)大賞受賞/プラムディヤ・アナンタ・トゥール

プラムディヤ・アナンタ・トゥール顔写真
2000年(第11回)大賞
プラムディヤ・アナンタ・トゥール
Pramoedya Ananta TOER
作家
【インドネシア/文学】
1925年02月06日生(75歳)

民族と人間の問題を一貫して問い続けているアジアの代表的作家。代表作『人間の大地』に始まる4部作は、インドネシアの民族意識の覚醒期を扱った作品で、それは同時に波乱に満ちた人生を通してインドネシア民族の自立と人間の解放を願う氏の熱い思いのこもった壮大なスケールの歴史小説である。

※肩書き・年齢・経歴・贈賞理由などは受賞当時のものです
※逝去
【贈賞理由】

プラムディヤ・アナンタ・トゥール氏は、民族の自立と人間の解放を鋭く世に問う作品を多く発表し、その作品の持つ影響力は国を超えて世界に及ぶ、まさにアジアを代表する作家である。

プラムディヤ氏は1925年中部ジャワのブロラに生まれ、民族主義者で教育者の父と愛情が深く自立的な母に強い影響を受けて育つ。17歳のころ単身ジャカルタへ行き、政治、経済、後の公用語となるインドネシア語などを学ぶとともに、多くの小説を読み、このころから文学に目覚め始める。その後出版社で編集者として働くかたわら、自己の作品を発表し始める。1945年のインドネシア独立宣言に始まる戦争のさなか、オランダ軍に逮捕、投獄されるが、その獄中で書いた小説『追跡』が、インドネシア内外で高く評価され、作家としての同氏の存在を世に知らしめるきっかけとなった。この後、『ゲリラの家族』『ブロラ物語』『虐げられた者たち』『汚職』『ブカシ河の畔で』などの初期作品をたて続けに発表する。

中国のプロレタリア文学の影響を受けたプラムディヤ氏は、1950年代後半から文学者の社会参加の運動を続けるが、1959年、華僑を扱った作品により逮捕、投獄され、さらに1965年の「9月30日事件」により三たび逮捕され、1979年最後の政治犯として釈放されるまで14年間の流刑生活をおくる。その流刑中に完成させていった代表作『人間の大地』『すべての民族の子』『足跡』『ガラスの家』の4部作は、流刑地の政治犯仲間への語りきかせから始まった。これらの作品は、オランダ植民地下の1898年から1918年のインドネシアを舞台とし、オランダ式の教育を受けたジャワ人である主人公が、植民地であるがゆえの圧制と現地の因習の呪縛という内外の二重の苦悩の中、次第に民族の自立に目覚めていくという壮大なスケールの歴史小説であり、インドネシア民族の自立と人間の解放を願う同氏の熱い思いがこめられている。

また、文学言語としてのインドネシア語の成熟度を高めるとともに、ナショナリズムの問題を秀逸な物語として読ませ、なおかつ世界文学のレベルにまで文学的完成度を高めたプラムディヤ氏の力量は驚異というほかはない。釈放後完成された同4部作すべてが発禁となり、現在もまだ公式には解除されておらず、インドネシアでは作品にふれる機会が制限されているが、同氏の作品は国内外で高く評価されている。

インドネシアでもいずれ同4部作の発禁が解かれると思われるが、プラムディヤ氏の作品は今後ともインドネシアのみならず世界の文学に大きな影響を与えていくものと高く評価でき、まさしく「福岡アジア文化賞-大賞」にふさわしい優れた業績といえる。

プラムディヤ・アナンタ・トゥールによる市民フォーラムのご案内

タイトル
プラムディヤが語るインドネシア、そして日本
開催日時
9月15日(金・祝)16:00~18:30
会場
あいれふホール(あいれふ10階)
パネリスト
後藤 乾一(早稲田大学アジア太平洋研究センター教授)
コーディネーター
川村 湊(文芸評論家、法政大学教授)

民族の自立と人間の解放を鋭く世に問う作品を多く発表し、その作品の持つ影響力は国を超えて世界に及ぶ、まさにアジアを代表する作家、プラムディヤ・アナンタ・トゥール氏による市民フォーラムが9月15日、あいれふホールで行われた。