贈賞理由
ウンク・A・アジズ氏は、マレーシアを代表する経済学者である。同氏が多岐にわたる領域において、マレーシアの実証的経済研究に上げた優れた業績は、余人の追随を許さない。特に、植民地時代の遺産である大農園(エステート)の独立後の細分化という、独立国の経済政策において極めて重要な経済過程を実証的に取り上げたことは特筆されるべきである。また、同氏は、単に経済の理論的な問題ではなく、マレーシアの民族構成という国の存立にも深く関わる貧困の問題に、経済学者として正面から取り組んできた。農村・農業開発、土地制度などの領域におけるその先駆的な研究は、現在もそれぞれの研究のモデルとみなされている。
アジズ氏の優れた研究業績に裏打ちされた教育や人材養成への貢献にも大きなものがある。大学などの教育・研究機関におけるマレー語化政策を推し進めるとともに、マレーシア経済学会の創設者の一人として学界を常に先導する役目を果たしてきた。マレー人として最初の教授、マレーシア人として初めてのマラヤ大学学長、ただ一人のロイヤル・プロフェッサーという栄誉に輝いているのも当然のことといえるであろう。
さらに、アジズ氏は、アセアン、東南アジア、アジア諸国との積極的な文化交流の流れを作り上げていくことに多大な努力を注いできた。東南アジア高等教育協会の会長を務め、アセアン大学設立を積極的に提唱するなど、国際的にもリーダーシップを発揮し、同地域における知的リーダーとしての評価も高い。また日本との縁も深く、日本との学術交流における尽力は、良く知られている。同氏は現在も、マレーシア協同組合連合会の会長を務め、実践的な経済学者として、今なお活発な活動を続けている。
このようにウンク・A・アジズ氏の研究軌跡と幅広い活躍は、アジア諸国の学術、教育の発展に大きく貢献するものであり、まさに「福岡アジア文化賞-学術研究賞・国際部門」に相応しい業績といえる。