贈賞理由

黒澤明氏は、日本が生んだ世界を代表する映画監督である。

同氏の業績、世界の著名な映画祭におけるその受賞は、枚挙にいとまがないほどであるが、特に1950年製作の『羅生門』で第12回ベネチア国際映画祭グランプリを受賞して世界の注目を浴びるとともに、日本映画の存在を世界に知らしめるきっかけとなったことは広く周知の通りである。たくましい劇的表現や深く内省的な主題によって人間の良心や責任感を追求していった黒澤作品は、その後、1952年作品の『生きる』によりベルリン国際映画祭銀熊賞、1965年第26回ベネチア国際映画祭出品の『赤ひげ』でベネチア市長賞、さらに、1976年、『デルス・ウザーラ』で第48回アカデミー賞最優秀外国映画賞、1979年モスクワ国際映画祭特別名誉賞、1980年の『影武者』によりカンヌ映画祭最優秀グランプリへと、確実な足跡を印している。その後も『乱』、『夢』を発表し、現在も新作の撮影に入るなど精力的に映画製作に取り組んでいる。

同氏がアジア人功績者を顕彰するマグサイサイ賞を受賞し、さらに、本年6月には、日米間の理解促進に傑出した貢献を果たした人物に贈られる、ジャパン・ソサエティー賞を受賞するに至ったことは、映画のみならず、文化の広い分野に大きな貢献を果たしていることを物語るものである。

本年3月には、アメリカ映画芸術科学アカデミーが、同氏を「日本映画だけでなく世界映画の巨人」と評価するとともに、数多くの作品を通じて、世界中の映画ファンを楽しませ、かつ、映画製作者に多大の影響を及ぼしてきた功績で、第62回アカデミー特別名誉賞を贈った。このように同氏は、世界の多くのすぐれた映画人たちから偉大な師と仰がれ、その影響力は、今や絶大なものがある。

このように、黒澤明氏の数々の業績は、まさしく、「福岡アジア文化賞創設特別賞」に相応しい業績と言える。