2018年(第29回)福岡アジア文化賞授賞式
開催日時
2018年9月20日(木)/18:30~20:00(開場/18:00)
会場等
アクロス福岡1階 福岡シンフォニーホール(福岡市中央区天神1-1-1)(外部リンク)

映像による歴代受賞者の紹介で幕を開けた第29回福岡アジア文化賞授賞式。秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと、各国のご来賓、各界関係者、大勢の福岡市民が一堂に会し、式はスタートしました。

満席の観客が見守る中、受賞者がステージに登場すると会場は拍手喝采が巻き起こり、受賞を祝う温かい空気に包まれました。

最初に主催者を代表して高島宗一郎福岡市長が登壇し、アジア文化賞の意義と100名を超える受賞者について紹介。文化の振興と相互理解及び平和への貢献という福岡アジア文化賞の精神が多くの人々に深く理解され、アジアへそして世界へと広がっていくことを祈念しました。

続いて秋篠宮殿下より受賞者へのお祝いのお言葉を賜りました。審査委員長の久保千春九州大学総長より選考経過が報告された後、受賞者へ贈賞。高島市長と藤永憲一福岡よかトピア国際交流財団理事長より賞状とメダルが授与されました。福岡インターナショナルスクールの子どもたちからお祝いの花束が贈られると、受賞者の顔に笑みがあふれ、観客からも盛大な拍手が送られました。

第2部は、福岡大学附属若葉高等学校の津軽三味線部による『津軽じょんがら節』の力強い演奏で幕開け。受賞者による喜びのスピーチが行われた後に、事前に市民から寄せられた質問をもとにインタビューの場が設けられました。最後に、受賞者のティージャン・バーイー氏がパンダワーニーのパフォーマンスを披露。インドの大叙事詩『マハーバーラタ』に描かれている戦争シーンのクライマックスを歌語りで披露してくださいました。生演奏をバックに迫力あふれるパフォーマンスで、観客をパンダワーニーの世界へいざない、今まで以上に楽しく華やかな授賞式となりました。

高島福岡市長による主催者代表挨拶
久保九州大学総長による選考経過の報告
福岡大学附属若葉高等学校津軽三味線部による演奏

秋篠宮殿下のお言葉

本日、第29回福岡アジア文化賞の授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞される賈樟柯氏、学術研究賞を受賞される末廣昭氏、そして芸術・文化賞を受賞されるティージャン・バーイー氏に心からお祝いを申し上げます。

世界的にグローバル化が進展する近年、私たちはその利便性をさまざまな面で享受しております。しかし、その一方では、画一化、均一化された思考方法や生活様式が広まっていることも指摘されるようになり、それぞれの国や地域が有する固有の文化やその多様性の大切さに対する認識が高まってきております。そしてその下で新たな文化の創造も盛んに行われるようになりました。

私自身、東南アジアを中心にアジア諸国を訪れる機会がたびたびあり、多様な風土や自然環境が作り出し、長い期間に渡って育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の深さや豊かさに関心を持つとともに、それらを保存し、継承していくことの大切さを強く感じております。

29回目を迎える福岡アジア文化賞は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものであり、大変意義深い賞であるといえましょう。

その意味において、本日受賞される3名の方々の優れた業績は、アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し、また社会全体でこれらを共有することによって、次の世代へと引き継ぐ人類の貴重な財産になることと考えます。

終わりに、受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好がいっそう促進されていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

大賞受賞者によるスピーチ

大賞受賞者によるスピーチ画像

尊敬するご来賓の皆様、福岡アジア文化賞大賞の受賞は、私にとって大変光栄なことです。今年は私が長編映画デビュー作『一瞬の夢』を撮ってから、ちょうど20年になります。この度の栄誉は、私の過去20年における映画制作に対する励ましであるとともに、今後の仕事に対する激励であるとも思います。

私の幼年時代から始まり、中国社会は近代に入ってから最も激烈な変化を経験してきました。私は幸いにも映画の仕事に携わり、この変革の中に生きる個人の運命と、私たちが経験した困難なときを映画で描くことができました。映画監督とは人類の情報を伝える使者であると私は考えています。

文化は私たちがお互いを理解する助けとなり、芸術は私たちが人間性を保つための助けとなるものです。今このとき、福岡において私が得たものは栄誉だけではなく、それにも増して皆様の熱い期待にほかなりません。私はこれからも映画の制作を続けていきます。どうか私の新しい作品を待っていてください。皆様ありがとうございました。

学術研究賞受賞者によるスピーチ

学術研究賞受賞者によるスピーチ画像

秋篠宮同妃両殿下、福岡市長、福岡アジア文化賞関係者の皆様、そして何より福岡市民の皆様に心から感謝を申し上げます。

過去、素晴らしい芸術家、研究者の皆様がこの賞を受賞されました。その仲間に加えていただくことは、私にとってこの上なく光栄に存じます。

同時に日本政府ではなく、福岡市の国際的な賞に選ばれたことに、私は特別な思いを持たざるを得ません。私は鳥取県に生まれ、高校まで過ごした後、東京や大阪などで過ごしてきました。受賞の対象のひとつとなった本『キャッチアップ型工業化論』のあとがきの中で、私は「地方から日本を、地方の日本からアジア諸国を、生産現場から国民経済を。この3つを私のアジア研究の基本原則にしてきた」と書きました。その結果、キャッチアップ型工業化論という新しい視点が生まれてきたわけです。

かつて日本は、アジア諸国の工業化と社会の近代化の先頭を走っていました。その後、アジア諸国は、日本が経験した高齢化社会の到来という問題を経験するようになります。つまり日本とアジア諸国は、共通の問題に直面するようになりました。そして現在、日本は電子商取引やモバイル決済など、中国や他のアジア諸国から新しい技術や生活パターンを学ぶ立場にあります。日本とアジア諸国の関係は、日々変化し、そのことを十分に認識し、同時に変化するアジアを追求することを、この受賞を機会に引き続き課題にしていきたいと思います。

本日は誠にありがとうございました。

芸術・文化賞受賞者によるスピーチ

芸術・文化賞受賞者によるスピーチ画像

私に敬意を払ってくださった皆様、福岡市の皆様、年長者の方々及び若い方々にお礼を申し上げます。福岡に来てから、毎日嬉しくてドキドキして夜は眠ることができない程なのです。

現在、私は生活に恵まれない子どもたちの面倒を見ており、彼らにパンダワーニーを教えながら日々の生活を送っています。

私自身、教育には恵まれませんでしたので、現在は貧しい子どもたちをできる限り教育や生活の面で支えるようにしています。

今回の私の受賞のことを聞いて、子どもたちも大変喜んでくれました。

今回の受賞は私にとって自信になることは間違いありません。そして、ここでいただいた賞または経験などを活かしながら、私が教育の面で支えている子どもたちも、私と同じようにこの場に立つことができるように頑張っていきたいと思います。

皆様、今回は本当にありがとうございました。

受賞者インタビュー

---まずは、賈樟柯さんへの質問です。福岡の印象を教えてください。
賈樟柯氏:福岡がいかにアジアに近くアジアとの交流に力を入れているかということを感じました。
 
---今後、中国映画はどのようになっていくと思いますか。
賈樟柯氏:中国の映画産業は非常に発展を遂げていて、マーケット的には世界第2位になっています。昨年は約800本の映画が制作されました。今後は、数量とともにレベルも発展してほしいと期待しています。
 
---映画制作で一番大事にしていることを教えてください。
賈樟柯氏:人間を見つめ、人間をどうやって撮るかということに力点を置いています。これまでの作品もそうなんですが、とにかくフォーカスを人間にあて撮影してきました。これが私のスタイルなので、今後も変化する社会の中で、人間がどのような感情を持って生きているかというところを映画にきちんと撮っていきたいと思っています。
 
---次に末廣昭さんへ質問です。子どもの頃から研究者を目指していたのですか。
末廣昭氏:中学2年生のときに、蝶の生態を調べて100枚の論文を書いたので、研究者になる道はおそらく決まっていたかと思います。
 
---研究者生活の中で最もうれしかったことは何ですか。
末廣昭氏:1976年6月に初めてタイに行きました。タイの空港に夜中2時頃着いたのですが、私がお世話をした留学生20人くらいが待っていてくれて、トラックの荷台に乗ってバンコクに向かったことは一生忘れられません。
 
---若い人へのアドバイスやメッセージをお願いします。
末廣昭氏:ただインターネットの情報だけで世界を見るのではなく、相手の国へ行き、言葉を学び、食事をし、その中でつかんだものとインターネットで得た情報とをうまく組み合わせて、相手と付き合って行っていただきたいと思います。
 
---それでは、ティージャン・バーイーさんへの質問です。これまでさまざまな問題があった中で、音楽を続けることができたモチベーションを教えてください。
ティージャン・バーイー氏:私の先生も、やはり私と同じように教育に恵まれなかった方でした。その先生が私に与えてくれた「勇気」です。それをもとに、ここまで伸びてきた、やってこれたんだと思っています。
 
---今回の受賞が今後の人生や芸術にどのような影響を与えると思いますか。
ティージャン・バーイー氏:福岡アジア文化賞を受賞したことは、私の人生の中で忘れられないことになると思います。もう本当に心の底から大変うれしく思っています。そのうれしさが今の涙に表れていると思います。
受賞者インタビューの写真

受賞者演奏 ティージャン・バーイー氏

最後は、ティージャン・バーイー氏によるパンダワーニーのパフォーマンスが行われました。

【出演】
ティージャン・バーイー:パンダワーニー奏者
ケーヴァル・プラサード:タブラー(太鼓)
マンハーラン・サルヴァ:ダフリー(タンバリン)
ラームチャンド・ニシャード:ボーカル、マンジーラー(シンバル)
チャイトラーム・サフー:ハルモニウム(オルガンの一種)
ナロッタム・ネータム:ドーラク(両面太鼓)

ティージャン・バーイー氏の演奏中の写真

2018年(第29回)福岡アジア文化賞祝賀会

授賞式のあとは、各国の来賓、各界関係者など多数の参加者による祝賀会を開催。藤永憲一福岡よかトピア国際交流財団理事長が「福岡アジア文化賞を通じて、今後もさらに交流を深めていきましょう」と挨拶。来賓の孫忠宝中華人民共和国駐福岡総領事館副総領事の祝辞、石田正明福岡市議会副議長による乾杯でスタートしました。

弦楽四重奏の美しい音色が響く中、3名の受賞者たちを囲んで、温かく和やかな祝賀会となりました。

賈樟柯氏
末廣昭氏
ティージャン・バーイー氏

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

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