贈賞理由

末廣昭氏は、日本におけるアジア経済研究の第一人者である。氏の学問的業績は、タイを中心とする徹底した現地調査に基づいた、類を見ない重厚なアジア研究である。タイ経済研究を基盤として、アジア全体の工業化や経済実態を解明し、アジア研究に多大な貢献をなした。

末廣氏は、1951年鳥取県米子市に生まれ、1974年に東京大学経済学部を卒業、1976年に東京大学大学院経済学研究科応用経済学修士課程を修了した。その後、1976年からアジア経済研究所調査研究部、1987年から大阪市立大学経済研究所(助教授)、1992年から東京大学社会科学研究所(助教授、教授、所長)、2016年からは学習院大学国際社会科学部(教授・初代学部長)において、アジア経済論等の研究と教育を担当してきた。

初期の代表作であるCapital Accumulation in Thailand 1855-1985(1989年)は、長期におけるタイの資本蓄積を多くの文献と現地調査によって実証的に明らかにし、国際的に高く評価された。それ以後、現代タイの政治経済に関して、『タイ-開発と民主主義』(1993年)、『ファミリービジネス論-後発工業化の担い手』(2006年)、『タイ-中進国の模索』(2009年)等の数多くの著作・論文を発信してきた。

そして『キャッチアップ型工業化論-アジア経済の軌跡と展望』(2000年)が、タイだけではなくアジア全体の工業化と経済発展の研究における新たな視角を示して、多大な貢献をなした。本書は、タイの事例を導きの糸として、工業化の担い手、イデオロギー、制度・組織に焦点をあてアジアの工業化と経済発展を捉えた、日本の代表的なアジア経済論である。その後、アジア経済の変化に対応して『新興アジア経済論-キャッチアップを超えて』(2014年)等もまとめている。

近年では、中国と東南アジアの関係を含めた大メコン圏の研究、人口統計に基づくアジアの社会変動に関する斬新な研究を進めている。

末廣氏は研究者としての傑出した業績だけではなく、タイ研究、アジア研究の組織化や若手研究者の育成でも大きな貢献をなしてきた。学会ではアジア政経学会理事長、日本タイ学会会長などを歴任してアジア研究の発展に多大な役割を果たした。また東南アジアと日本の重要な懸け橋となるとともに、みずほアジア人材育成基金運営委員長、大平正芳記念財団運営・選定委員会委員長等を務め、アジアと日本の交流と相互理解に尽力してきた。そして日本とアジアにおける数多くのアジア研究の後進を育成したことも、多大な貢献である。

末廣昭氏は、このようにアジア研究の発展に大いに寄与し、その功績はまことに顕著であり、まさに「福岡アジア文化賞 学術研究賞」にふさわしい。

1969年夏、鳥取県倉吉市の自宅庭で受験勉強
1982年、バンコクにて、タイ式の結婚式を挙げる
2011年、「末廣昭スケッチ画個展」を開く

末廣 昭氏からのビデオメッセージ