開催日時
2019年9月10日(火)/15:00~16:30
会場等
福岡国際会議場 2F 多目的ホール(福岡市博多区石城町2−1)(外部リンク)

発展するアジアと文化の共存

~福岡アジア文化賞、そして歴代受賞者がこれまでの30年間で守り、育て、新たに生み出してきたもの~

末廣昭氏 (日本/経済学者、 地域研究者(タイ))
パースック・ ポンパイチット氏 (タイ/経済学者)
クリス・ベーカー氏 (英国/歴史学者)
ミン・ハン氏( ベトナム/ ファッションデザイナー )
キドラット・タヒミック氏( フィリピン/映画作家・ アーティスト・文化観察者 )
道傳 愛子氏 (NHK国際放送局 シニアディレクター)

 第30回福岡アジア文化賞の開催を記念して開催された歴代受賞者によるシンポジウム。秋篠宮皇嗣同妃両殿下ご臨席のもと、世界の叡智である歴代受賞者の話を聞こうと多くの市民が来場。客席からの大きな拍手に迎えられるように歴代受賞者がステージに登場し、第30回記念歴代受賞者によるシンポジウム「発展するアジアと文化の共存」の幕が開きました。

発展するアジア 1990-2019

 はじめに、「発展するアジア」という大きなテーマについて、経済学者の視点から末廣昭氏(日本)が解説。アジア、とりわけ東アジアは、50年以上も前から世界中のどの地域よりも高い経済成長を続け貧困人口の削減にも成功したことから、「東アジアの奇跡(East Asian miracle)」と呼ばれていたことを紹介。一方、90年代以降は経済格差が拡大しており、今後中国が中心となるアジアで私たちは新しい社会をどのように設計していけばいいのかと問題提起を行いました。

社会の発展によってもたらされた変化

課題は不平等

 社会が発展していく中での大きな課題は不平等にあると経済学者のパースック・ポンパイチット氏(タイ)。富の不平等という点でタイは世界で1、2位を争っており、社会が豊かになるにつれて貧富の差はどんどん広がっていると警鐘を鳴らしました。

「文化」の発展

 ファッションデザイナーのミン・ハン氏(ベトナム)は、社会の発展により「気候変動」「災害」「テロの脅威」など新たな問題が生まれた、この世界が持続可能な発展を続けるためには、経済の発展に「文化」の発展が追いつき、両者のバランスが取れていることが必要だと説明。世界は多様な文化が存在することで成り立つと述べました。

「森の精霊」「聖なる風の神」

 映画作家で文化観察者のキドラット・タヒミック氏(フィリピン)は、フィリピン・ルソン島北部の山奥で暮らすイフガオ族の生活を紹介。三千年前、イフガオ族は「森の精霊」や「聖なる風の神」を敬い、森、里山などの「自然」と調和をとって生活をしてきた。しかし、入植者の出現をきっかけとして、子どもたちはチェーンソーを手に取るようになり、森の木々を伐採するようになったと説明。我々人間は、古くからある文化に一度立ち返る必要があると客席に訴えました。

アジアの持続可能な社会の実現の ために「文化」が果たす役割

 続くテーマは「アジアの持続可能な社会の実現のために『文化』が果たす役割」。文化を守り、継承することの大切さと、アジアの持続可能な社会の実現のために「文化」がどのような役割を果たしていくことができるのか、活発な意見が交わされました。

国境を越える「文化」

 「文化」とは「美しいもの」を意味しているとクリス・ベーカー氏(英国)。美しい音楽や絵画、ファッションは国境を簡単に越えることができる。イフガオ族が暮らす美しい棚田の風景も然り。しかし「言葉」は、それがどんなに美しくても国境を簡単に越えることはできないと説明。

 自らタイの古代詩の翻訳を手掛けるクリス・ベーカー氏は、人間には元来多様な文化に対する好奇心が備わっている、翻訳は、言葉の壁を取り除く作業で、異なる文化の人間の距離を近づける一助になっていると述べました。

 共に翻訳を手掛けるパースック・ポンパイチット氏も、異なる文化とコミュニケーションをとりたいという人間の好奇心が、今、世界中で起きている文学作品の翻訳ブームへとつながっていると説明。文学作品を読むことで、その国の文化や、そこで暮らす人間の考え方が分かると述べました。

文化は「原動力」

 一方、ミン・ハン氏は、文化は深いレベルで経済に影響を与えており、文化は社会が発展し続けるための「原動力」であり必要不可欠なものであると説明。文化の発展から最も恩恵を受けるのは我々人間であると述べました。

福岡アジア文化賞が果たしてきた役割

 90分という限られた時間の中で、歴代受賞者の叡智に触れ、享受してきたシンポジウムもついに終わりの時を迎えます。

 福岡アジア文化賞は新しい交流の形であると末廣昭氏。クリス・ベーカー氏は、福岡アジア文化賞は私たちに進むべき道を照らし示してくれる灯台のような存在、この唯一無二の賞を創設した福岡市の皆さまの先見の明に敬意と感謝の意を表しますと述べました。

 歴代受賞者から市民へメッセ―ジが送られる中、「本日お越しの皆さまがアジアとの出会いを重ねられる毎に、この『福岡アジア文化賞』というストーリーは続いていきます」と、今回のシンポジウムでモデレーターを務めた道傳愛子氏が締めくくり、第30回記念歴代受賞者によるシンポジウムは幕を閉じました。