2017年(第28回)福岡アジア文化賞授賞式
開催日時
2017年9月21日(木)/18:30~20:00(開場/17:30)
会場等
アクロス福岡1階 福岡シンフォニーホール(福岡市中央区天神)(外部リンク)

第28回福岡アジア文化賞授賞式は、歴代受賞者が映像で紹介された後、福岡市少年少女合唱団による美しいハーモニーで幕を開けました。

秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと、カンボジア、中華人民共和国、タイ、英国、ベトナム社会主義共和国のご来賓、各界関係者、多くの市民がステージに注目します。受賞者がステージに姿を現すと、拍手がひと際大きくなりました。晴れやかな中にも温もりのある雰囲気は、ホスピタリティマインドにあふれた福岡市らしい、また市民が贈る賞にふさわしいものです。

最初に主催者を代表して高島宗一郎福岡市長が登壇。賞の意義とその精神を伝え、この賞によってアジア地域の人々の交流がより一層深まり、文化振興と相互理解、平和への貢献につながっていくよう祈念して挨拶を結びました。

続いて秋篠宮殿下より先の九州北部豪雨へのお見舞いと受賞者へのお祝いのお言葉を賜りました。審査委員長の久保千春九州大学総長より選考経過が報告された後、受賞者へ贈賞。賞状とメダルが授与され、観客から大きな拍手が送られると、緊張した面持ちだった受賞者の顔に笑みがこぼれました。福岡インターナショナルスクールの子どもたちからもお祝いの花束が贈られました。

第2部は、100年以上の歴史を持つ九大フィルハーモニー・オーケストラによる『ディヴェルティメントニ長調ケッヘル136より第1楽章』(モーツァルト作曲)の演奏で幕開け。受賞者による喜びのスピーチが行われ、コン・ナイ氏はこの日のために作曲した『福岡での授賞式に向けて』という曲を披露してくださいました。最後に、筑前琵琶奏者の寺田蝶美氏による『平家物語 那須与一』が演奏され、言語やハンディキャップの壁を越えて誰もが楽しめる、またお祝いの席にふさわしい華やかな式となりました。

賞状と記念メダルを授与される受賞者
受賞者インタビュー
筑前琵琶奏者・寺田蝶美氏による祝賀演奏

秋篠宮殿下のお言葉

はじめに、ここ福岡県において7月の九州北部豪雨により甚大な被害が生じ、亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに被災された方々にお見舞いを申し上げます。本日、福岡アジア文化賞の授賞式に先立ち、朝倉市を訪ね、被災地を視察し、また被災された方々にお目にかかりました。改めて被害の深刻さを痛感するとともに、被災地の復興が進み、もとの平穏な暮らしが戻ることを切に願っております。

本日、第28回福岡アジア文化賞の授賞式に皆様とともに出席できましたことを誠にうれしく思います。そして受賞される4名の方々に心からお祝いを申し上げます。

世界的にグローバル化が進展する近年、私たちはその利便性をさまざまな面で享受しております。しかし、その一方では、画一化、均一化された思考方法や生活様式が広まっていることも指摘されるようになり、それぞれの国や地域が有する固有の文化やその多様性の重要性への認識が高まってまいりました。そしてその土台のもとに新たな文化の創造にも多くの努力が重ねられております。私自身、東南アジアを中心にアジア諸国を訪れる機会がたびたびあり、多様な風土や自然環境が作り出し、長い期間に渡って育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗など、文化の深さや豊かさに関心を持つとともに、それらを保存継承していくことの大切さを強く感じております。

28回目を迎える福岡アジア文化賞は古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものであり、大変意義深い賞であるといえましょう。その意味において本日の受賞者の優れた業績は、アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し、また社会全体でこれらを共有することによって後世へと引き継ぐ人類の貴重な財産になることと考えます。

終わりに、受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じてアジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好がいっそう促進されていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

大賞受賞者によるスピーチ

大賞受賞者によるスピーチの写真

秋篠宮同妃両殿下、ご来賓の皆様、そして友人の皆様、栄えある賞をいただいたことを大変誇りに思います。これまでの研究が認められたからというより、この賞の目指す世界観の素晴らしさから受賞を誇らしく思うのです。

日本との出会いは、私たちに多くの実りをもたらしました。1981年にタイ政府視察団と一緒に福岡を訪れた時は一村一品運動を視察し、1999年に二人で訪れた際には京都大学東南アジア研究所とのご縁ができました。以後、客員教授として京都大学や東京大学、政策研究大学院大学に籍を置かせていただきました。1992年から参加している日タイセミナーでは、2年に1度、意見交換を行っています。

夫婦での受賞は初めてだとか。それも大変誇りに思います。私たちの場合1+1=2でなく、もっと大きな数字になります。性、国、民族、学問における違いが相乗効果を生んでいるのでしょう。

世界が大きく変化し、不確実性を増す中、福岡アジア文化賞の精神はますます重要になると思います。このような素晴らしい賞を設立し、私たちを表彰してくださった偉大なる福岡市と市民の皆様に心から感謝申し上げます。

学術研究賞受賞者によるスピーチ

学術研究賞受賞者によるスピーチの写真

秋篠宮同妃両殿下、髙島市長、福岡アジア文化賞委員会、ご来賓の皆様、福岡アジア文化賞受賞という栄誉を賜り、光栄に存じます。身に余る賞をいただき、選考委員の皆様には感謝の念に堪えません。中国のNGO研究に対して本賞の授与を決断されたことは、この実践向きの学問の重要性を明確に伝えるものであると御礼申し上げます。

この十数年間、中国では改革開放に伴って数多くのNGOが誕生し、さまざまな社会問題に立ち向かっています。私は、19年前、日本留学から祖国へ戻り、日本で学んだフィールド調査やガバナンス研究の知恵を生かして中国のNGO研究を展開してきました。これまで数多くの研究者および実践者とともにさまざまな調査研究を行い、環境保護をはじめ多分野に渡って社会ガバナンスに携わり、中国の市民社会の成長に取り組んでまいりました。

九州および福岡は古くから日中交流の拠点であり、日本の環境保護をはじめとする市民運動の発祥地です。私は日本の経験から学ぶため、水俣を何度も訪れました。現在の中国において、水俣学のような環境を守る実践向けの学問が重要だと考えます。

論語に「師曰く、三人行けば必ずわが師あり」という言葉があります。本日、私は運よく、大賞、芸術・文化賞受賞の3人の先生と同じ舞台に立つことができました。先生方をわが師として、日本、中国だけでなくタイやカンボジアの文化も一層学び、アジアの文化交流と市民社会のさらなる促進に向けて微力ながら積極的に貢献していきたいと思います。本日は誠にありがとうございました。

芸術・文化賞受賞者によるスピーチ

芸術・文化賞受賞者によるスピーチの写真

秋篠宮同妃両殿下、主催者及びご来賓の皆様、そして福岡の皆様、コン・ナイと申します。

私は長年、チャパイという柄の長い楽器を使って弾き語りをし、より多くの人に聞いてもらうことだけを考えてきました。その結果、このような素晴らしい賞をいただくことができ、驚きを覚えると同時に大変喜ばしい気持ちです。この楽器や弾き語りを多くの方に知っていただくことができ、改めて感謝申し上げます。

最後になりますが、皆様の幸せとご健康を祈念し、感謝の言葉とさせていただきます。

受賞者インタビュー

---まずは、パースック・ポンパイチットさん、クリス・ベーカーさんへの質問です。夫婦で長く研究を続けることができた秘訣を教えてください。
ベーカー氏:ディナーパーティーで知り合った時、2人の話が尽きず、ホストの友人が眠ってしまったほどです。私たちは研究に関して同じような興味を抱いていました。以来、この関係が続いています。
 
ポンパイチット氏:二人で社会や世界の変化を常に見て、人々の生活をどう改善すればいいか、考えてきました。ギブ・アンド・テイクの気持ちを持ち、お互いを尊敬し続けてきたからこそ、一緒に研究を続けられたのだと思います。
 
---今年は日タイ修好130周年です。両国が良い関係を築くために必要なことは何でしょうか。
ベーカー氏:両国はともに古い歴史を持つ仏教国です。共通点があり、多くの価値観を共有しています。それにより今まで良好な外交関係を築けたのだと思います。
 
---タイの魅力とは?
ポンパイチット氏:タイ人は情熱と思いやりがあり、感謝の気持ちを常に持っています。大きな危機や混乱を乗り越えてきた力は、逆に言えば世界を見る力、将来を見据える力ともいえます。大らかな気持ちで世界を見ているところがタイの強みです。
 
---次に、王 名さんへの質問です。NGOの重要性について、どのようにお考えですか。
王 名氏:中国では、改革開放、経済発展に伴って政府及び市場では解決できない問題が出てきました。NGOには政府や市場を補完できる側面があり、国や地方、個々の利益を超えて活動できる存在として今後ますます重要かつ必要とされるでしょう。
 
---日本での研究、経験は中国で生きましたか。
王 名氏:このような前向きな研究は一人でできず、皆と協力して行うことを日本で身につけました。NGOは政府や企業などと戦うばかりでなく、協力して活動しなければ、うまくいきません。そのような協力性、社会協働というものを日本で学べたことは私にとって大きかったです。
 
---それでは、コン・ナイさんへの質問です。チャパイは、日常の出来事や人々の感情、教訓、社会風刺などを歌詞に盛り込み、人々の生活に寄り添う音楽だそうですね。最近は、ロックやジャズ、オーケストラなど他ジャンルとも共演し、活動の幅が広がっていると聞きます。今後、この伝統音楽はどのように発展すると思いますか。
コン・ナイ氏:チャパイは、2016年、ユネスコの「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表」に登録されました。また今年、この福岡アジア文化賞を受賞し、カンボジアの方々に喜んでいただくことができました。これらをきっかけに、将来、さまざまな人がチャパイに関心を持ってくれると信じています。

受賞者演奏 コン・ナイ氏

コン・ナイ氏がこの日のために作曲した『福岡での授賞式に向けて』という曲が披露されました。

『福岡での授賞式に向けて』弾き語りの歌詞 翻訳:福富友子氏(東京外国語大学非常勤講師)

  私、コン・ナイ、大変喜ばしい気持ちです この場に出席する幸運に、例えようもない喜び

  素晴らしい、この授賞式において 福岡のかたがたに賞を 授けていただいて

  良き作品のある者、懸命に思考した者 すなわち社会の中で、熟考し歩みを進めた者へ

  みなさん、福岡では 3つの部門に賞をくださると ひとつめに学術研究、ふたつめに芸術文化

  良い作品を持つ者に、福岡から賞が贈られる 年に一度、芸術文化と学術研究に

  今年の授賞式は、老若男女のみなみなさま この世でも貴重な、栄えある28回目

コン・ナイ氏のセレモニー

2017年(第28回)福岡アジア文化賞祝賀会

授賞式に引き続いて各国の来賓、各界関係者など多数の参加者による祝賀会を開催。礒山誠二福岡よかトピア国際交流財団理事長が「みなさんと受賞の喜びを分かち合い、心温まるひとときを過ごしましょう」と挨拶。続いて、来賓を代表して、チア・キムター カンボジア大使がお祝いの言葉を述べ、石田福岡市議会副議長による乾杯でスタート。

受賞者や同伴者を囲んで、和やかな祝賀会となりました。

談笑するベーカー氏と是澤国連ハビタット福岡本部長
談笑する王 名氏と天児氏(右)
コン・ナイ氏とチア・キムター カンボジア大使(後列左2人目)

福岡アジア文化賞年次報告書ダウンロード

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