- 開催日時
- 2015年9月20日(日)/14:00~16:30(開場/13:00)
- 会場等
- アクロス福岡地下2階イベントホール(外部リンク)
- パネリスト
- 河地洋子氏(香蘭女子短期大学名誉教授)
- パネリスト
- 新田栄治氏(鹿児島大学名誉教授)
- コーディネーター
- 藤原惠洋氏(九州大学大学院芸術工学研究院教授)
- 参加者
- 400人
ベトナムのアオザイや少数民族の刺繍・織物と現代的なデザインを大胆に融合しながら、ドイモイ(刷新)以降のファッション産業界をリードし、世界中のファッションショーで独創的な作品を発信してきたミン・ハン氏。ベトナム戦争の記憶を越え縫い続けた自身の生き方を振り返り、アジアの創造力の結晶とも言えるファッション作品を披露いただきました。
第1部:ミン・ハン氏による基調講演、ミニファッションショー
“少数民族や日本の伝統的な織物から生まれる新しいファッションの形”
ベトナムの人口は約8000万人、その14%を53の少数民族が占めています。
彼らは素直でシンプルで素朴な精神を持っています。毎日の生活の中で見たり感 じたことで感触や感情が刻々と変わり、織物の色や素材、模様も全く違ったものになります。昼と夜の作品が全然違ったりもします。それは私たちデザイナーにとって素晴らしく尊いものですが、私たちが彼らと同様に気持ちの変化に応じてデザインを変えることは非常に難しいことです。それでも、モン族の人と一緒に食事や仕事をして、同じ部屋で寝泊まりすると、彼らにシンパシーを感じ共感を持つことができます。共感を持ちインスピレーションを得ることが私のデザイナーとしての原動力になっています。
彼らの伝統的な仕事を守り、続けるためには?私は弟子によく言います。「これは戦いである。しかも終わりのない戦いである」と。若いデザイナーが伝統的な価値を理解するのは難しいことです。伝統素材をファッションに取り入れるのはとても大変なことだから。しかし若い彼らがその伝統的な価値を理解できたら、彼らは決してそれを捨てることはありません。これからも私たちの戦いは続いていきます。
私は古都プレイクで生まれました。少数民族も住んでいる土地で、幼い頃よく彼らについて行きました。彼らのことが大好きだったのです。私は美術学校を卒業しファッションの道を選びましたが、少数民族が織る伝統素材をファッションに使うことは、誰も認めてくれませんでした。誰も着たくないもの、文明的でないものをなぜ使うのかと。しかし私は負けませんでした。私がその伝統素材を選んだとき、私のインスピレーションが生まれたのです。私の気持ち、幼い頃感じた感触が蘇ってきたのです。その後トーカムはベトナムの本質的な文化として認められ観光客のお土産にもなり、少数民 族の人々は利益と誇りを得ることができました。
私の望みは時代や地域を超えた文化のクロスであり融合です。伝統的なものから生まれる本物の価値が今の時代には必要です。私はこの信念を次の世代に伝えていくつもりです。
第2部:パネルディスカッション
藤原惠洋氏(九州大学教授)をコーディネーターにお迎えし、河地洋子氏(香蘭女子短期大学名誉教授)、新田栄治氏(鹿児島大学名誉教授)らとともにパネルディスカッションを行いました。
“伝統を見出し、未来につなぐために必要なことは何か?”
久留米絣や博多織の発展に尽力する河地氏は、ミン・ハン氏の久留米絣とチュールという異素材のリメイクに感動したと発言。新田氏は少数民族の機織り道具が2,500年前の墓からの出土品と同じであることを紹介。伝統が現代と複雑に絡み合い未来志向しているミン・ハン氏の作品に衝撃を感じたと語りました。
「伝統を未来につなげるために我々に何ができるのか」という観客の質問に対し、ミン・ハン氏は、「若者も伝統の魅力を感じることができるはず。ただ若者には進むべき方向を示し教育することが必要。伝統を失くすことは将来を失くすこと。」と力づよく答えました。