21世紀のミャンマーはどこに向かうか~過去・現在・未来の対話~
開催日時
2015年9月19日(土)/13:00~15:00(開場/12:00)
会場等
エルガーラ 大ホール(外部リンク)
対談者
明石 康氏(公益財団法人国際文化会館理事長)
コーディネーター
竹中千春氏(立教大学法学部教授)
参加者
250人

今日のミャンマーには、グローバリゼーションの荒波に揉まれつつ、長い孤立の歴史を乗り越えて豊かな未来をめざす、人々の熱気が溢れています。ミャンマーはどこに向かうのか。国連事務総長を務めた祖父ウ・タント氏の理想を胸に、平和創造の課題に取り組むタン・ミン・ウー氏に、ミャンマーの21世紀を熱く語っていただきました。

講演する明石氏
満員の会場
コーディネーターの竹中氏

第1部:タン・ミン・ウー氏による基調講演

“ミャンマーの民主化には国際社会の協力が不可欠”

 ミャンマーは改革の時代を迎え、この4年間、期待が高まっています。政治改革により新たな憲法が制定され、政治環境が自由化されている状況にあります。経済改革が起こり、和平のプロセスも進んでいます。ブラックホールの時代を経たミャンマーにとって、この数年間の変革はまさに奇跡だといえます。

 1885年11月28日は、ミャンマーの歴史上とても重要な日です。千年にわたって続いた王制がイギリスによって放逐され、1940年ごろまでビルマ(当時の呼称)はインドの一州として統治されたのです。比較的に豊かな場所で、その間、中国やインドから何十万、何百万という移民がビルマにやってきました。ほとんどのビルマ人は最下層に落とされてしまい、上に立つ移民や海外企業に対する敵意がしだいに芽生えていきました。

 独立後、軍が力を強め、外からの影響に対する反動を抑えるという形で62年に軍事政権が始まりました。独裁と、国際社会からの孤立が長く続き、とても貧しくなりました。しかし88年ごろから軍事政権を打倒しようという勢いが生まれてきました。

2011年に民政移管され、今まさに国際社会に復帰する努力をしているところです。国が外に開かれ、急激な変化が起こる中で、そして多くの少数民族がいる中で、国民としてのアイデンティティーをどう培っていくかが重要になってきます。

 民主化、和平、経済発展などは緊密に繋がっています。進化的で安定的なやり方で民主化に向かうためには、20の異なった武装グループとの和平プロセスを進めるとともに、電気や鉄道などのハードインフラや健康や教育などのソフトインフラに対する投資が必要です。中国、インド、タイなどに接する立地から急速に発展する可能性が高いです。

 競争だけでなく、国際社会の協力が必要です。日本とミャンマーには長い歴史があり、政府も企業も人的交流を前向きに考えている。両国の関係は、将来的に必ずや強化されるものと信じています。福岡の皆さんもぜひツーリストとしてミャンマーを訪れ、NGOや大学、そして一般の人たちとのコンタクトを持っていただきたいと願っています。

明石康氏による講演

 私は若い頃、日本人初の国連職員として、タン・ミン・ウー氏の祖父である第3代国連事務総長ウ・タント氏の下で働きました。そして私が重要な平和維持活動を指揮していた1990年代に有能な若手職員として活躍したのがタン・ミン・ウー氏です。さきほどの基調講演で彼は、その明晰な頭脳で自国の複雑な歴史を見事に解きほぐしてくれました。彼が示したのは、国際社会が懸命な援助の手を差し伸べればミャンマーの民主化は必ず成功するという見解です。われわれは民主化に向かうミャンマーの挑戦を温かく見守りつつ、その中で日本が果たすべき役割や責任を考えながら行動したいと思います。

第2部:明石康氏との対談

 タン・ミン・ウー氏と、国連時代の上司にあたる明石康氏の対談が、竹中千春氏(立教大学法学部教授)をコーディネーターとして繰り広げられました。

“国際社会に参画するための課題と可能性”

 ヤンゴンの近況としてタン・ミン・ウー氏は、スマートフォンなどのユーザーが50万人から1200万人に増えたことを紹介。「若者を中心に世界の消費者の中に組み込まれる中で、ミャンマーの何を守り残していくかが重要」と述べました。仏教の影響力に話題が及ぶ中で、明石氏は「日本がミャンマーや東南アジア諸国との理解・友好を深める上で、仏教は一つのよりどころになる」と語りました。これからのミャンマーについてタン・ミン・ウー氏は「喫緊には、公務員部門の改革、土地制度の改革、エネルギー戦略の見直しなどが必要」と述べ、民政移管後初の総選挙への期待を表しました。

 会場からの「日本はミャンマーのために何ができるか」といった質問に対し、明石氏は「企業の進出は双方の利益になる。教育や福祉の面でも貢献できる。長期的な発展のために役立つ支援など、日本らしい誠実さが大事」と答えました。

2015年 市民フォーラムレポート