- 開催日時
- 2019年9月13日(金)/15:00~17:00
- 会場等
- 福岡市科学館 6階 サイエンスホール(外部リンク)
- パネリスト
- 太田 淳氏(慶應義塾大学経済学部教授)
- パネリスト
- 松方 冬子氏(東京大学史料編纂所准教授)
歴史学者(東南アジア史専門家)であるブリュッセイ氏が、近世東アジア海域で活躍した角倉了以親子、フランソワ・カロン、鄭成功親子の事績を通して、その時代の東アジア各地域の状況と相互の連関、そして彼らの活動が残した歴史的遺産について語りました。
第1部 :基調講演
騒乱の時代、交錯したそれぞれの人生 グローバル化初期に残した遺産とは
グローバル化の時代に生きる私たちが、歴史から学ぶべきものとは何か。今から約400年前、政治的に大きな変動の時代を極東アジアで経験しつつも、グローバルに活躍した3人の人生を通して考えさせられる講演となりました。
「グローバル化のプロセスを見ていくにあたって、大きなタペストリーを編んでいると考えられます。何世紀にもわたる時間、優れた人が編んできたわけです。当初は緩やかなパッチワークでした。様々なパターンが地域に生まれ、それを繋いでいただけにすぎませんでした。しかし徐々に均一のパターンが登場してきます。繋がる歴史が “グローバルな歴史”というひとつのタペストリーとなっていくのです。現在、よく言われるグローバル化とは400年くらい前、お茶や砂糖、絹などが世界的に流通を始めた頃から始まっていました。そんなグローバル化の初期に活躍した角倉了以(すみのくらりょうい)親子、フランソワ・カロン、鄭成功(ていせいこう)親子は現在のグローバル化の先駆者であると言えます。日本や中国は西洋の干渉に長い間抵抗してきました。オランダ東インド会社(VOC)は東の海に乗り出し、ベースを日本と中国に築きたいと進出していきます。そんな中、3人はそれぞれの形でネットワークを広げ、同じ騒乱の時代のトラブルシューターとして名を残しました。3人はたまたま活躍したのではありません。知性・意思・個性を持つ、特出した能力の結果なのです。3人は騒乱の時期に於いて、先ほど話した“グローバルな歴史”というタペストリーの初期の織り手であったといえます。このタペストリーは現在も繋がり続け、変わり続けているのです。多くの出来事を経験した彼らは多くの出来事を起こした人物でもあります。展望と勤勉さがなければ進歩しません。彼らの意思や勇気から学べることは数多いと思います」と締めくくりました。また京都・嵐山を訪れた際には、角倉了以像にぜひ会ってほしいとも語り、深い歴史の話に会場は聞き入っていました。
第2部:対談
17世紀に国家の枠を超えて活発化した グローバリゼーションを歴史から読み解く
人生の分かれ道を上手に辿っていくことができるだけでなく、新しい分かれ道を探し出した3人の冒険商人について対談は盛り上がりました。「歴史に残るためには本人が立派なだけでなく、レガシーを残していくため後の世の人の協力が必要。そういった意味でオランダの資料は重要だったか」との松方氏からの問いに、「ヨーロッパの目線からアジア人の活動を描いているのは面白い。歴史は人間のこと。17世紀活躍した3人はみんな日本語ができたことがわかっている。だから今回のスピーチをしようと思った」とブリュッセイ氏。17世紀の歴史が今日まで続き、それぞれの「忠誠心」を持った3人の歴史が経済にまで繋がっていると締めくくり、歴史の面白さ、奥深さを知るフォーラムとなりました。